HIDALGO〜オーシャン・オブ・ファイアー

 『LotR』シリーズのアラゴルン役で、一気に大ブレイクしたヴィゴ・モーテンセンの初主演作品。野生馬ヒダルゴを相棒にレースに勝ち続けるカウボーイの話ですが、幼い頃から乗馬に慣れ親しんでいるヴィゴにはハマリ役でしたというか、彼しか演じられないような気がしないでもない。過酷なレースの中で泥だらけになっていく姿は、戦いで泥まみれになっていくアラゴルンと被るかも…というか、泥まみれが似合う人だと改めて感じました(笑)。
 ちなみに、原題は『HIDALGO(ヒダルゴ)』で主人公のフランク・ホプキンスが兄弟のように強い友情で結ばれている野生馬(マスタング)の名前からきてるんですが、何故か邦題は『オーシャン・オブ・ファイヤー』という、フランクとヒダルゴが挑むことになるレースがそのままタイトルになってしまいました。このタイトルと予告のお陰で、アドベンチャーアクションだと思った人も多かったんじゃないかな?私は日本公開前に既に作品の情報は知っていたので、「な、何でこんなタイトルに?」と呆然としてしまいました。その辺は、かなり不満が残る。

 主人公のフランクは実在した人物で、雑種で気性の荒い野生馬であるマスタングは銃殺の対象になりやすく、そんなマスタングを保護する為に人生を捧げたカウボーイなんだそうです。つまり、この作品は実話を基に作られているだけに、ありがちなレース作品とはいえ(最後の展開が読める作品とはいえ)、物語に観るを者を惹き込んでいく魅力があると思います。ま、それは、本当にヴィゴ演じるフランクと、ヒダルゴを演じたTJ(馬)が本当に素晴らしいコンビネーションを見せたから…というのが大きいかもしれない。

 物語は1890年のアメリカ西部が舞台。多くのレースをヒダルゴと共に勝ち抜いていたフランクは、騎兵隊にある伝令を届ける仕事を引き受けます。しかし、それは先住民スー族を監視している騎兵隊が、彼らを惨殺するキッカケとなってしまったものだった。白人の父とスー族の母親の間に生まれたフランクは、その惨劇を目の当たりにして罪の意識にかられ、自分を責めるあまり酒に溺れる堕落した生活を送るようになる(…という展開は、某ハリウッド作のサムライ映画と似たようなパターンだが/苦笑)。しかし、フランクの乗馬センスに興味を持ったアラブ族の副官に、自分の腕試しとして「オーシャン・オブ・ファイヤー」という、この世で最も過酷なレースに参加してみないかと誘われる。もうレースに出る気などなかったフランクは断るが、各地でムスタングの銃殺が計画されていると知り、大金さえあれば阻止できると判って、仲間や残ったスー族に見送られながらヒダルゴと共にサウジアラビアに渡る。
 …という話です。そこから、サウジアラビアで過酷なレースに参加して、雑種であるヒダルゴと白人であるフランクは「異教徒め!」と他の出場者から敵視されたり、、砂嵐に襲われたり、アラブの民族同士に闘争に巻き込まれたり、レース以外にも過酷な試練がフランクとヒダルゴを待ち受けているわけです。

 先にも書いたけど、フランクとヒダルゴの息の合いっぷりはホントに感動モンです。「本当にTJはただの馬なのか?本当は人間の言葉も判って演技もできるんじゃないか?」てくらい、表情豊かというか、名演技を披露してくれちゃうんですよ。映画撮影の為に登場したムスタングは全部で5頭なんですが、その中でもTJという名前のムスタングが一番多くシーンに登場し、活躍したそうです。撮影後はヴィゴがそのTJを買い取ったというのも納得ですよ。あそこまで気が合ったら、手離したくないだろうなぁ。この一人と一頭のやり取りを観るだけでも、この作品を観る価値がある気がします。
 ちなみに、観に行った時、隣の席に座っていた外人さんがTJが出て来て活躍する度に大喜びしていた。自分と反応する箇所が同じで、ちょっと嬉しかったわ(笑)。



 …で、こっから物語無視のミーハー的な偏見感想行きますが(笑)

 主役のフランクは映画に出ずっぱりです。もう、ヴィゴ・モーテンセンのPVじゃないか?と言っても過言じゃないくらい出まくっています。これは非常に嬉しい限り。しかも、そのシーンのほとんどが乗馬シーンですからね。個人的には、大西部ショーに身を落とし、ピエロのような妙なメイクで馬に乗らなくちゃいけないフランクのダメダメぷりのシーンが好きです。ヒダルゴにすら呆れられて、襟を咥えられて引き摺られている有り様なんですが、妙に微笑ましくて。

 「オーシャン・オブ・ファイアー」に突入すると、もう馬(ヒダルゴ)のことしか考えてないフランクになります。というか、この作品、男も女も馬のことしか頭にないんじゃないか?ってくらい馬に夢中。血統の良い馬でレースに勝って名馬を手にするのが一番の名誉という感じです。だから、雑種であるヒダルゴは凄いバカにされるし、異教徒であるフランクもかなりバカにされる。確かに、血統のいいアラブの名馬の中にヒダルゴが混じると、競馬の馬の中に混じったロバのように見えてしまう。これって、人間の人種差別にも通じるような感じがしで、決して怯まないフランクやヒダルゴの姿にワクワクしてしまった。
 ついでに、アラブ教徒は男女交際の規律が厳しく、異教徒のフランクがアラブ女性に手を出すのはご法度です。ま、ヒダルゴに夢中のフランクがそんな過ちを犯すわけもないんですが、ちょっとした誤解から族長シーク・リヤドどの娘ジャジーラとの仲を疑われ、男の大事なアソコを切断されるという超絶体絶命の大ピンチに襲われます。フランクにとっては一大事なんでしょうけど、観ている側としては可笑しくてしょうがない。どういう事をされるか理解した時のフランクというかヴィゴの顔は見ものです…(鬼)。しかし、その後、種族闘争に発展して族長の娘のジャジーラが誘拐されるという騒動に発展するので、フランクはなんとか助かります。しかし、ジャジーラが誘拐された理由も、「名馬争奪作戦」ですからね。ホントに、馬至上主義です。
 一応、フランクは2人の女性とロマンスぽい雰囲気になるんですけど、フランク自身はヒダルゴ一筋だし、女性の方もなんだかんだ言って馬のことで頭いっぱいだし、この映画でロマンスを語るほうが野暮ってもんだぜ、という雰囲気を醸し出してくれちゃって、ここまでくると気持ちいいくらい(笑)。

 なんとかジャジーラを救出し、疲労が残る状態ながらも再びレースに身を投じるフランクとヒダルゴですが、ここから更なる闘争に巻き込まれていく、とにかくレースに優勝する為なら何でもしてやる!て感の強い人達も多く、どうみても理不尽が攻撃にあったりするわけです。しかし、ヒダルゴとの名コンビで何とか振り切り、ボロボロになりながらゴールを目指す。最後はフランクが幻聴まで見ちゃうくらい追い詰められていきますが(疲れ果てて苦しむヒダルゴを楽にしてやる為に、トドメを刺してやろうとまでする)、最後の意地をフランクとヒダルゴが見せて、大逆転でゴールをするというのは読めた展開であった。でも、きっと優勝するんだろうと判っていながらも、最後ゴールする瞬間とかは盛り上がっちゃうのは何故だろうな〜。やはり、血統付きの名馬に雑種が勝つという展開がいいのかも。あとは、実話の強さか。

 レースの賞金を手にしたフランクは母国に戻り、銃殺されそうになったムスタングをその金で全て買い取り、彼らを全て自然へ放ってあげます。そして、共に過酷レースを乗り切ったヒダルゴも放してやって物語は終わります。冒頭ではスー族虐殺のキッカケの伝令を届けたフランクが、最後にムスタングを解放(買い取る)伝令を届に行ったというオチは好きだな。

 しかし、終始カウボーイ姿のヴィゴはムチャクチャカッコいい。特に、カウボーイ独特の挨拶の仕草…テンガロのツバ先を指で掴んで頷くようにお辞儀する仕草があるじゃないですか!あの仕草をヴィゴがやると、ホントにサマになるんですよっ!あの仕草だけでも、グッときちゃうわっ♪て感じ。何より、スタイルが良いんで、カウボーイ姿が似合いまくりなんだな。馬に跨る動作一つ一つも、全く無駄な動きがないし、あの独特の青灰色した瞳がアップになることも多かったし、見惚れることがヤケに多い作品でもあった。
 あと、ラストはスーツ姿で登場するんだけど、ちょっと小奇麗になって別のカッコ良さがありました。個人的には薄汚れている方がセクシーに感じるんですが、やっぱ小奇麗になると男前度が格段にup。

 正に、ヴィゴの為の映画だったなと感じました。



 先に書いたけど、正直言ってありがちな作品です。ゴール間際のボロボロになっていたはずなのに、嘘みたいに元気になって激走してゴールしちゃうというのも、このテの作品ならよくあるパターンなんですが、作品そのものはレースで魅せるというよりも、フランクとヒダルゴの絆の強さ、(言葉の悪い言い方だけど)雑種の強さを表現していたので、そういうありがちな展開も普通に受け入れられた。なんか、自分の心のマニアックな部分を刺激してくれる作品です(笑)。

 あと、乗馬シーンが多かったり、汚れているシーンが多かったりで、アラゴルンとだいぶ比べれてしまっていたけど、王様とは違いますよ。特に喋り方が全然違ったからね。イギリス英語で話していたアラゴルンと違って、フランクは完全なアメリカ英語。イントネーションが全然違うし、その喋り方で性格の荒さも出ていたりして、ヴィゴの声好きには堪りませんでした♪

 …て、結局、最後の最後までミーハーで終わった。個人的にツッコミ度満載の映画は好きです、はい。
 


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