2005年掲載分

「師走」   カウント2.9(第六十八回)


ただ単に今月何をしていたかの記録です。たまにはこういう回があってもいいじゃないですか。手抜き工事もはやってるし。それじゃあレッツゴー! 
 
12月1日 上野広小路亭「悋気の独楽」、浅草演芸ホール「真田小僧」、両国寄席「悋気の独楽」。風邪で喉をやられている中の三席はけっこうしんどかった。 
12月2日 上野広小路亭「悋気の独楽」。この頃から喉もだいぶ楽になってくる。 
12月3日 上野広小路亭「看板のピン」、自由が丘にて青学野球部優勝祝賀会の打ち合わせの後、妻とアンナミラーズで食事。妻は全店舗制覇をめざすほどのアンミラファンなのだが、私もまあきらいではない。ていうかむしろあの制服サイコー!
12月4日 上野広小路亭「悋気の独楽」、浅草演芸ホール「看板のピン」、浅草三階の楽屋で昇輔に教えた「宮戸川」のあげ稽古の後、昇輔と日高屋でラーメンを食べる。「宮戸川」はちょっと客前でやるのはやばくね?っていうカンジ。仕草もかたまっていないので、以前自分の会でやった時のビデオを渡すことに。日高屋は初めて入ったが安くてうまかった。風邪気味だったのでネギをトッピングする。 
12月5日 上野広小路亭「小言幸兵衛」。喉もほとんど治ってシャウトしても問題なし。復活したぜ! 
12月6日 何してたか記憶なし。 
12月7日 浅草演芸ホール「転失気」、入谷で三味線の稽古。 
12月8日 新高輪プリンスホテルで青学野球部の東都大学野球秋季リーグ戦優勝祝賀会の司会。初めて頼まれた仕事だが次回もまたお願いしますと嬉しい言葉をいただく。ジャイアンツの小久保やスワローズの石川もスピーチをしてくれた。 
12月9日 この日も記憶なし。 
12月10日 上野広小路亭「小言幸兵衛」 
12月11日 池袋演芸場「看板のピン」。昼のトリが桂平治師で「二番煎じ」をやっていた。そでで聞いてもほれぼれしてしまう。 
12月12日 新宿末広亭「看板のピン」。 
12月13日 入谷で三味線の稽古。 
12月14日 芸能花伝舎落語会のトリで「小言幸兵衛」、その後兄弟子遊之介師と忠臣蔵五段目「山崎街道」のコント。今年最後の芸能花伝社落語会なので討ち入りの日にちなんで1年ぶりに上演。遊之介師が与市兵衛で私が定九郎を演じた。 
12月15日 入谷で三味線の稽古。 
12月16日 妻と広尾のアンミラで食事。誕生日なのでデザートのサービスとともにウェイトレスさんがバースデーソングを歌ってくれた。実は7月の妻の誕生日にも歌ってもらっている。何ともほほえましいバカ夫婦だ。その後松戸の森のホール21にてアマデウス室内オーケストラwith江原啓之のクリスマスコンサートを鑑賞。オーケストラの演奏で朗々と唄う江原さんに驚き感動する。 
12月17日 新宿末広亭。何やったかメモするの忘れちゃいました。 
12月18日 歌舞伎座昼の部鑑賞。ミクシィを通じてよーこ様からチケットをいただいたんですが一等のとっても良い席で感激でした。勘三郎と玉三郎が芝居のラストで三味線と琴をセッションで弾き唄いしてました。すげー。 
12月19日 ご夫婦で応援してくださる中尾様からお誘いをいただき浅草の「飯田屋」さんで妻ともども4人でお食事。ここのお味噌汁は独特でおいしい。 
12月20日 何してたんだろう? 
12月21日 後楽園ホールでみちのくプロレスを観戦。先月遮那王について書きましたが、この日から元服をして義経となってあらわれました。新技の「修羅」はシューティングスター式のセントーンレベルサで、もう凄すぎて言葉になりません。新崎人生は弁慶の衣装で入場してくれました。気仙沼二郎の「海の魂」はなにげに良い曲です。 
12月22日 入谷で三味線の稽古、浅草演芸ホールで宣材用の写真撮影。 
12月23日 三味線の稽古場の忘年会。 
12月24日 妻と広尾のアンミラで食事。 
12月25日 家で過ごしてたんだろうなあ、きっと。 
12月26日 妻と妻の友人と3人で広尾のアンミラ。行き過ぎだろう。その後妻のお父さんの入院お見舞いに。 
12月27日 浅草の豚八にて遊三一門の忘年会。師匠小遊三が酒を飲まなくなったので、ずるずると長引くこともなくサクっと終了。嬉しい。 
12月28日 東京會舘にて落語芸術協会の納めの会。 
12月29日 家でのんびりと。 
12月30日 妻のいとこ夫婦と4人でお食事。 
12月31日 師匠小遊三宅にて年越しそばをいただく。  
  
以上。手抜きのつもりがかえって長くなっちゃいました。どうぞみなさま良いお年をお迎えください。(12月29日)

「エディーゲレロ」   カウント2.9(第六十七回)


 早いもので今年も残すところあとひと月あまり、真打に昇進をしてからあっという間に半年が経ちました。噺家の世界というのはご存知の方もいらっしゃるかと思いますが真打の人数が一番多くて、その次に多いのが二ツ目、前座さんの数が最も少ないという完全な逆ピラミッド型になっています。ですから前座から二ツ目そして真打へと昇進をするごとに、人数の割合から寄席の出番が少なくなってしまうという悲しい現象が起こったりもします。そんな過酷な状況のなか、我々芸人は少しでも寄席の出番を増やせるようにとお席亭や先輩真打そして協会事務員さんに気を遣い、お客様には喜んでいただけるようにと懸命に高座を務めるのです。こういった日頃の地道な努力の成果でしょうか、今月はずいぶんたくさん寄席に出演することができました。11月1・2・3日が池袋演芸場、6・7・8・9・11・12・15日が上野広小路亭、11・12・14・15・17日が浅草演芸ホール、21・22・23・24・25・27・28・29・30日が新宿末広亭と w)ほぼ一ヶ月間毎日寄席に出演をしています。すごいぞ遊史郎!ときにはこうやって自らをほめて自己暗示をかけたりもします。実りの秋にふさわしい実に中身の濃い11月でした。自己暗示成功。 
 
 そんなハードデイズナイツな毎日を過ごしながらも今一番楽しみなのは来月21日に後楽園ホールで観戦するみちのくプロレスです。遮那王ですよ、遮那王!時空を越えて現代に現れた牛若丸こと遮那王。読み方はしゃなおう。NHK大河ドラマのタッキーにも全くひけをとらないほどの美しいレスラーなのでぜひ注目してください。佐山サトルのローリングソバットを初めて見たとき以上の衝撃と感動が味わえるはずです!まあこの文章がいったい何人の人に届いているのか全くわかりませんが、まずは遮那王を見てくださいというのが私の熱き本音です。そしてラッセと影虎とダイナマイト東北にも注目しましょう。トーホクトーホク!トーホクトーホク!(届いたかなあ、届かねえだろうなあ・・・松鶴家千とせ風に・・・これも届かず?)   
 
 カウント2・9には何回も登場している大好きなプロレスラーエディーゲレロが突然心臓発作のため天国へと旅立ってしまった。38歳、自分と同い年だった。あまりに突然でショックは大きいのだが、神を愛し神に愛されたエディーゲレロはきっとまた新たな役割のためにいったんバックステージに下がったのだろう。遊史郎写真館のページにエディーといっしょに撮った写真があります。あのときもエディーは、まるで天使のように優しくてキラキラと輝いていました。だからきっとまたいつかどこかで出逢うことがあると信じています。繰り返す生と死のうねりのどこかには、必ずそんなことがあるものです。憧れの人が遠くに引っ越してしまったような、そんな気持ちで時々彼のことを思い出すでしょう。(11月23日)

「週刊文春」  カウント2.9(第六十六回)


♪ヤッホー!とりあえず図書館か漫画喫茶か銀行の待合室に行って週刊文春10月13日号の74ページをご覧ください。ホリイのずんずん調査という連載コラムの「2005年いまおもしろい落語と演者」という表の18番目に「お見立て/遊史郎」と出ていますから。なんかチョーうれしかったっス。「お見立て」といえば池袋演芸場での真打披露の際に連日掛けたネタなのですが、楽日に師匠の小遊三から「杢兵衛大尽はお前の柄に合わないのになんでそんなネタをやってるんだ」とダメだしをされ、ちょっぴりブルーでセンチメンタルな気分にもなったものです。でもこの記事のおかげで今は元気100倍!アンパンマンな気分です。ありがとう、堀井さん。これからもがんばりまっす。 
 
♪ヤッホー!10月4日の東京芸術劇場での真打披露興行が定員300名ぴったりの満員になりました。ご来場のみなさま本当にどうもありがとうございます。大入りでごった返しているロビーでどさくさまぎれに販売をした三遊亭遊史郎Tシャツも5枚売れてありがたかったです。5月から始まった真打披露もこの日でラスト、有終の美を飾るにふさわしい盛り上がりとなりました。三本締めで祝ってくださったみなさまのご期待に添えるよう力一杯爆進いたしますのでどうぞ今後とも応援よろしくお願いいたします。 
 
♪ヤッホー!大好きな映画「真夜中の弥次さん喜多さん」のDVDが発売されたのでおもいっきり買ってきました。見るたびに笑いと涙と感動と生きる勇気を与えてくれるいとおしい作品です。全米での公開も決まったそうですが、ドラッグとゲイの本場アメリカなら本国以上に高い評価を得られるんじゃあないでしょうか。全てのシーンが見所なのですが、荒川良々さんの演技には注目してもらいたいです。まあ絶対に注目してしまうとは思いますが、テレビドラマ「菊次郎とさき」でのビートきよし師匠役も素晴しかったですし、ああみえて実に良い演技をなさります。あと井口昇監督の「恋する幼虫」でも心にぐさっと突き刺さるような芝居をされていました。アイラブ・弥次喜多・フォーエバー! 
 
♪ヤッホー!今回のカウント2.9はいかがでしたか?ほとんどmixiの日記の焼き直しだろうって?まあリミックス版ってぇことで勘弁してください。11月21日は日本橋亭で落語二席、トリも勤めます。題して「落語でGO!」。ぜひ観に来てください。11月26日は横浜の西公会堂で落語二席、みなさまのご来場をお待ちしております。ではまた次回をお楽しみに。バイビー!(10月11日) 



「サマーアクションシリーズ」  カウント2.9(第六十五回)  

 また更新が遅れてしまいましたが、こうしんと言えば最近漫画家の高信太郎を見かけませんが元気に活躍されているのでしょうか。それからはらたいらさんの更年期障害はよくなったのでしょうか。クイズダービーではほんとうに自力で回答していたのでしょうか。そんないくつもの小さな疑問を流れる汗とともに空気中に蒸発させながら毎日仕事に遊びに精を出している今日この頃、みなさまにはお変わりございませんか。 
 
 最近では愛・地球博でもテーマになっているように環境問題への関心が高まりつつあるようですが、先だっての8月10日は文化庁のイベント「打ち水大作戦」に行ってまいりました。落語協会からは春風亭小朝師匠ほか若手4名、我々落語芸術協会からは三遊亭小遊三と弟子3名&桂歌若師匠が参加をして、昼の丸の内は三菱ビルの前でみんなでいっせいに手桶で水をまくだけなのですが、クーラーよりも打ち水で涼しくなって地球温暖化を防ごうというこの日のイベントには大勢の報道カメラマンもやって来て妙に盛り上がっていました。小池百合子環境大臣もスピーチで打ち水の効果をさわやかに語り、師匠小遊三も水をまきながら「だいぶ涼しくなってきましたねえ」などと無難なコメントをまじえながら水まきが無事終了、この日の気温が29.1度、湿度が70%以上という蒸し暑い中での打ち水大作戦だった。最後に司会者が「それでは今日の打ち水の成果はいかがだったでしょうか?」と温度計を見てみると、何と気温29.3度。上がってんじゃねーか!控え室にもどった師匠が一言、「やっぱり温度計にも水をまかなきゃあだめだな」。最高の台詞でした。
 
 8月14・15・16日は高速船で大島に行ってスキューバダイビングをやってきました。そういうことやりそうにないと思う方も多いかと思いますが、多くの場合真実は思い込みの向こう側にあるものです。妻のいとこきいちゃんの旦那様のわきちゃんがダイビングのインストラクターなので、同年代の親戚6人で潜りに行くことになったのです。題して「いとこ会の大島ダイビングツアー」。初めてのダイビングは途中で妻がパニックになりかけたりとはらはらすることもありましたが、南国の魚を間近でたくさん見られて、それはそれは素晴しい体験でした。次はサイパンに潜りに行こう!いとこ会はこれから益々盛り上がっていくようです。 
 
 というわけで残り少ない夏をどうぞみなさまもお楽しみください。シアターコクーンの「キレイ」再演、最高でした。(8月21日) 




「サンキュー」  カウント2.9(第六十四回)

 40日間の真打披露興行が終わったんだよ〜ん!すいません、また軽い調子で始まっちゃいましたが、何ていうかここ数ヶ月間まるで風呂場のタイルとタイルの間に黒く染み付いてなかなか落とせないカビのように、いつのまにか身体の表面をオブラートの薄さですっぽりと包み込んでいた緊張感が消え去って、今はさわやかでおだやかな弛緩状態にあるがために、自然とこの文章にも柔らかみといい加減さがにじみ出ているような気がするようなしないような感じです。(どっちだよ!) まあ落語家の書く文章なんでそこに「重要な何か」とかは無いんだけれど、こんな風にケセラン・パセランな生き方もありって言えばありかなーみたいな感じが、ねえ?(何がねえなんだよ。何なんだよケセラン・パセランって) 

 ぶっちゃけ何が言いたいのかっていうと「落語聞きに来てよ」っていうことだけなんだけれど、いくらシンプルイズベストとは言ったってただそれだけじゃああんまりにも日本人としての情緒に欠けるってもんでしょ?でしょでしょ?(語尾がうるさいよ!) それでまあ好きなプロレスの話とか最近のニュースがどうだとか色々と書いたりもしてるんだけれど、近頃盛んにやっている若・貴兄弟のけんかはどうでもいいとして、両親を殺して草津温泉に浸かってた高校生ってのはある意味シュールだとも思うんだけれど、ネタにするにはちょっとキツいかなーというバランス感覚もあるわけで。(じゃあ最初から言うなよ)  なかんずく丸山弁護士の24時間マラソンとかYAWARAちゃんの妊娠とかそういった無難な話題でお茶を濁すのも身に付けておくべき大人の処世術の一つだと思うんですよ。そう思いません?どーよ?(聞かれても困るけど)

 そんなわけで今月のカウント2・9もいつものようにまったりとしたマッコリ酒の味わいでお届けできればなあと思う次第なんですよ。はい。(飲んだこと無いじゃねーかよ) で、まあ池袋演芸場の披露目には遊史郎の前売り券で来てくれたお客さんが144名いらっしゃいました。ローカル岡先生に良く似た支配人の進藤さんも「去年よりもだいぶ入ったよ。」とウルルン滞在記に出てくる秘境で生活する村人のような味わい深い表情で語ってくださいました。掛けたネタは初日が「片棒」2日目から9日目までが「お見立て」で千秋楽が「湯屋番」だったんだけれど楽しんでいただけましたかね?楽しく聞いたよーという方はメールとかもらえると超ウレシーのでどうぞヨロシク!お祝いやお花をくれたお客様には心から感謝をしております。どうもありがとう!山口県から歩いて北海道の実家までたどり着いた加藤大君のように、みなさまへの感謝の気持ちで涙があふれてとまりません。いや実際には泣いていませんが、心の中では泣いているのでうそじゃありません。サンキュー、お客さん!そして支えてくれた妻には特別な気持ちで御礼を言います。本当にどうもありがとう。最後にほろっとさせたところで今月はおしまい。ごきげんよう。(6月29日)



「戦士の休息」(懐かしいよ!)   カウント2.9(第六十三回)
 
 真打になっちゃいました!なんだか「甘栗むいちゃいました」みたいに軽々しい書き出しで恐縮すが、新宿末広亭と浅草演芸ホールでの20日間の披露目が終わって今ほっと一息ついているところです。 

 おかげさまで浅草は10日間満員、新宿は初日から8日まで満員という素晴しい環境の中、寄席でトリを務める醍醐味を味わうことが出来ました。浅草の5日目の真打披露口上では、たまたま前を通りかかった(もちろんアングル)三遊亭楽太郎師匠にも口上に参加して頂き、大いに客席を盛り上げて頂きました。楽太郎師匠が演芸ホールの高座に上がられたのは恐らく二十七年ぶりくらいではないでしょうか。数年前全日本プロレスの渕正信が新日本のリングに上がり「団体の壁をぶち壊しに来た!」とマイクで叫んだ時のような歴史的瞬間でした。6月1日から10日まで両国寄席での真打披露興行があります。NOAHで戦うSUWA選手のようにアウェイの地でも存在感を示すことが出来るのか否か、どうぞ見守ってください。 

 ちなみに披露目で掛けたネタは新宿の1・3・5・7・9日がトリで「七段目」、偶数日は口上後の上がりで2・4日が「悋気の独楽」、6・8日が「看板のピン」、浅草は偶数日がトリで2日が「宮戸川」、4日が「六尺棒」、6日が「悋気の独楽」、8・10日が「七段目」、奇数日が口上後上がりで1・3・5・7日が「看板のピン」、9日が「六尺棒」でした。遊史郎の前売り券で入られたお客様が新宿は58名、浅草は79名いらっしゃいました。どうもありがとうございます。6月11日から20日までの池袋演芸場もどうぞよろしくお願いいたします。 
 
 真打披露の合間を縫って、端唄の演奏会にも出演しています。5月27日、茅場町の東京証券会館ホールで開かれる「各流端唄演奏会」で「春雨」「ひょうたん」「吉三髷」「梅は咲いたか」の三味線を弾きます。一緒に弾いてくださるのが原一男先生といって琴・三味線・胡弓の教室を全国各地に持っている邦楽の世界では有名な先生なので、スタンハンセンとタッグを組んだ大森隆夫のように緊張して臨むべきなのですが、原先生のルックスがみちのくプロレスのテッドタナベレフリーに瓜二つというなんとも愛嬌にあふれたお姿であるため、余計な緊張感を持つことなくご一緒させて頂いております。原先生、どうぞ今回の演奏会でもよろしくお願いいたします。 
 
 今月観た映画は「イン・ザ・プール」。松尾さんの演技を大スクリーンで見られただけで満足。その他細々とした日常の出来事はmixiに日記を書き始めたのでそちらをどうぞ。無料の会員制サイトなので見たい方はご連絡ください。そうだ、あと遊史郎Tシャツが発売されていますので遊史郎マニアの方は(いるのかよ!)ぜひお求めを。ではまた寄席で会いましょう。ブッカーTの奥さん旦那にそっくりですね。(5月25日)

「俺の噺を聴けぇ〜」   カウント2.9(第六十二回)

 気が付けば今月もあとわずか、目まぐるしく毎日が過ぎ去っていきます。電車の脱線事故に川田利明のノアマット登場、はたまたポール牧師匠の一人ダイビングヘッドバッドなどなど、一寸先はハプニングな世の中を今日も何とか生き抜いております。5月1日には「笑点」での真打披露口上が放送されますのでぜひチャンネルを合わせてみてください。中国での反日デモや奈良の騒音おばさんの恐ろしい形相に、げんなりとした気分をリフレッシュしたい方、どうぞ寄席に足をお運びください。5月1日から10日までは新宿末広亭で、5月11日から20日までは浅草演芸ホールで、6月1日から10日まではお江戸両国亭で、6月10日から20日までは池袋演芸場で三遊亭遊史郎の真打披露興行をやっていますから。タイガー&ドラゴン効果で確実に落語人気が高まっている今こそ、寄席に行く絶好のチャンスです。「叩けよ、さらば開かれん」、必ずそこからあなたの新しい人生が始まりますから!俺の、俺の、俺の噺を聴けぇ〜♪ 御来場お待ちしております。
 
 4月24日の真打披露パーティーには500人を越えるお客様にお越し頂き、大盛況のうちに御開きとなりました。ご来場のお客様には改めて厚く御礼を申し上げます。そして「薔薇とワイン」など三曲を歌ってくださったダイヤモンド☆ユカイさん、どうもありがとうございました。ユカイさんのライブ後の楽屋にバラの花とワインを持ってご挨拶にうかがったことを思い出しました。「この曲をやってもらいたい」という私のメッセージを感じ取って頂けたのだと思うと余計に嬉しかったです。昼の上野広小路亭に落語を聞きに来てくれたこともありました。ロックスターが真っ昼間から落語ですよ。その後御徒町のうどん屋で昼食ですよ。そして落語家の真打披露パーティーで熱唱ですよ。世の中「ありえねー」ことがいっぱい起こるから面白いんだと思います。他にも青学落研OBの三遊亭楽太郎師匠や青学落研OBにして元自民党副総裁金丸信の秘書官ならびに立川流Bコースの立川談七こと生原正久先輩、北朝鮮拉致家族問題で奮闘なさっている衆議院議員の平沢勝栄先生、東京都議会議員のかば山たかし先生といったそうそうたる方々からご祝辞を頂き、素晴しい盛り上がりとなりました。自分が立派な真打になることで、このご恩をお返しするのだと肝に命じています。どうぞその時まで今しばらく見守っていて頂きたく思います。  
 
 そんななかで今月観た映画は宮藤官九郎監督の「真夜中の弥次さん喜多さん」。タイトルから察した通り「真夜中のカーボーイ」をモチーフにした作品で、観るほどに心が震え感動が深まる素晴しい名作。これから何度でも観よう、弥次喜多を。今回はここまで。じゃあ寄席でまた。 
(4月26日)

「鬼嫁だ!」   カウント2.9(第六十一回)
 
 先月射ったステロイド注射の効き目に早くもかげりがみえはじめ、目、鼻、喉に不快感を抱きつつもどうにか落語をしゃべっていたところ、ひょんなところで声が裏返ってしまい「捕まる寸前のショーケンかよ!」と自らに突っ込みを入れては苦笑いをしている今日この頃、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。かつての「傷だらけの天使」も、四度目の逮捕で今や「傷だらけの戸籍」と成り果てたわけですが、「愚か者」とあざ笑う世間の声も中身空っぽの「マカロニ刑事」の耳には届いてはいないようです。そんな中キョンキョンこと小泉今日子さんの当て逃げというニュースを耳にして、思わず私の心臓も「ずっきん・どっきん」と脈打ってしまいましたが、現場を立ち去る彼女の脳裏には、かつて自らが歌っていたヒット曲「見のがしてくれよぉ」がエンドレスで鳴り響いていたものと思われます。また奇遇にも同じ日に漫才師のオール阪神・巨人の阪神さんが車とバイクの接触事故を起こしたそうですが、近づいてくる救急車のサイレンの音を聞きながら、頭の中に浮かんだのはかつて自らがCMを務めたカーワックスの宣伝文句「車にパピィー、パピィー」。いつまでもリフレインが止まらなかったと言われています。(ホントかよ!) 
 
 まあそんなマクラはさておき、真打昇進のあいさつ回りや披露パーティーの準備の合間を縫ってこの原稿をパソコンに打ち込んでいるのですが、皆様から頂いたお祝いや温かい激励のお言葉に、改めてここに篤く御礼を申し上げる次第でございます。新聞にも真打昇進の記事がどんどん掲載されますのでどうぞご期待ください。インターネットで三遊亭遊史郎を検索すると、ニッカンスポーツ・報知新聞・スポーツニッポン・毎日新聞などの掲載記事を見ることが出来ます。スポニチの記事では「女子プロレスファン」と書いて頂きましたが、これはちょっとした誤解です。私が前座の頃はデンジャラスクィーン・北斗晶の全盛期だった為に、全女の試合を随分観に行きました。師匠小遊三がそれを知り、女子プロ好きと記者の方にお話ししたのが記事になったのですが、力道山、馬場猪木、鶴田天龍、佐山前田と並ぶ伝説のプロレスラー、北斗晶の試合を見てきたことはプロレスファンとしての誇りです。人生たとえつらいことがあったとしても、首の骨が折れてもプロレスやっている北斗に比べたら大したことではないと思えるのです。頭ガイコツを骨折してもトペコンヒーロをやり続けるグレートサスケに比べたら何でもないことでしょう。眼底骨折をして片目が良く見えないまま1年間試合を休まなかった川田利明を思えば大抵の苦労も苦ではなくなるというものです。最近ではしばらく会うことの無かった友人ともひょっこり会うことが出来たりして、真打昇進を機に、対人関係もまた新たな局面を迎えているようです。それでは親愛なる皆様、今回はこの辺で。真打披露パーティーで、そして真打披露興行でお会いしましょう。時には谷中の町人でもお会いしましょう。 
(3月24日) 


「変な声の遊史郎です!」  カウント2.9(第六十回)


 2月4・5日のさいたまスーパーアリーナ、RAW・SmackDown観戦の興奮も冷めやらぬうちに暦はもう弥生、3月となってしまいました。花粉症に苦しんだりしてませんか?私は今年ついに花粉症治療・対策としていわゆる「ステロイド注射」なるものを射っていただき、気分はもうハルクホーガン、ロードウォリアーズ、そして疑惑の黄金水こと幻のハンマー投げメダリスト・アヌシュ選手のように元気一杯です!WWEで活躍している日本人レスラーのタジリ、フナキ、ケンゾー、そしてヒロコ、彼らのがんばっている姿を見ると本当に感動で胸が熱くなります。@ぴあ/BATTLEというページで連載しているヒロコのエッセイは実に面白くためになるので皆さんもぜひご覧になってください。 
                                   *
 そんな中、新人ディーバのエイミー嬢が今回の来日により六本木のストリップバーでダンサーの仕事をしていた過去が露呈してしまい、移動中の飛行機内でさんざんみんなにからかわれ、耐え難い辱めを受けたとしてWWEをそのまま退団してしまいました。現在は告訴の準備をしているのだそうですが、普通の会社で起こった事件なら「それはお気の毒に」と同情もするところですが、何と言ってもWWEはショービジネスの会社です。ショーに出演するタレントというのは徹底的に他者から色眼鏡で見られることが仕事でもあるわけで、バックステージで仲間との付き合いが出来ないタレントがその場を去るのは致し方ないことと言えましょう。そう言えば昔グレートサスケが「プロレスラーは芸人なんだよ。芸人にプライバシーなんか無いんだよ!」という名台詞を吐いたことがありましたが、実際我々芸人の楽屋での会話というのは手加減一切無しの言いたい放題です。当人がコンプレックスを抱いていると思われることほど、格好の楽屋話のネタになります。チビ。デブ。ハゲ。貧乏。童貞。ブサイク。脇が臭い。とんでもないバカだ。短小だ。包茎だ。性病だ。巨根だ。嫁さんに逃げられた。真性の変態だ。等々。今もどこかの楽屋で誰かが話しの種にされていることでしょう。またこういった楽屋話の洗礼を浴びずして芸人になることはできません。周りの者から張られる様々なレッテルを受け入れ、それを自分のセールスポイントとして観客の前に差し出すことの出来る者こそが真のトップスターになるのだと思います。どこまで己を受け入れ、それを晒すことができるかが勝負です。笑い者にされる経験も、先へ進むための大切なステップの一つだと心得るべきでしょう。ピンチの先にはチャンスがあるものです。タジリもフナキもヒロコもケンゾーも、毎日毎日全身全霊をかけて「風変わりな日本人」を演じ続けています。だからこそ彼らはスーパースターなのです。 
                                    *
 思えば私もこれまでに様々なありがたいレッテルを頂戴しながら今日までやってまいりました。前座名の三遊亭おたくという名前からしてすでに被差別感が漂っていますが、この名前のおかげで宝島「VOW」の街で見かけた変なものコーナーに写真が載ったこともありました。他には「変な声だ」はい、そうです。変な声の遊史郎をどうぞよろしく。「金持ちのせがれでハングリー精神が無い」はい、飢えた経験とかあんまりないです。どうもすいません。「女に不自由していない」はい、妻とうまくいってますから不自由は全く感じません。あとまだ色々あると思いますが、何にせよそういったものをにっこり笑って受け入れられるオトナな自分でありたいと思います。では今回はこの辺で。真打披露パーティー、ぜひご参加ください。(3月2日。師匠小遊三の誕生日)



「マイネバーランド」  カウント2.9(第五十九回)


新年あけましておめでとうございます。地震やら津波やら凶悪犯罪やらで、なんだか落語どころではないような世の中ではございますが、お笑いは大変なブームのようで、笑えない世の中ほど人は笑いを求めるということなのかもしれません。またこのところ落語に対しても穏やかな追い風が吹いているようで、子供たちの間で「寿限無」が流行ったり、小学校の教科書に落語が採り上げられたりもしています。落語に関する書籍も数多く出版されていて、先月ぴあから発売された「落語ワンダーランド」という本には三遊亭小遊三と弟子6人の写真とインタビューが掲載されていますので、よかったらご覧になってください。1月9日には大人計画の宮藤官九郎さんの脚本による落語を題材にした二時間ドラマ「タイガー&ドラゴン」も放送されました。落語芸術協会会長の桂歌丸師匠も御宅でご覧になったそうで、翌日の楽屋で「見ていて途中から腹が立ってきた!」と率直な感想を述べられておりましたが、私、遊史郎といたしましては、10代、20代の若者にとっては全くマイナーな落語の世界にスポットライトを当てて頂いたことにまず心からの感謝をいたします。そして阿部サダヲさんのはじけっぷりを無料で見られる喜び、そのすぐ横には春風亭昇太師匠と西田敏行さんがいらっしゃるというまるでドラキュラvsフランケンシュタイン、フレディvsジェイソン、エイリアンvsプレデター、デビルマンvsマジンガーZのようなプレミアムなお得感に幸せを感じました。「寄席で前座があんな大きなネタをかけられる訳がない」という矛盾を感じた方には、あれは寄席を借りての林屋亭一門の特別興行だったと心の中で注釈を加えれば、とりあえず合点がいくかと思います。寄席で落語を初めて聴いた若いヤクザ者(長瀬智也)が噺の世界に一瞬にして惹きこまれてしまうシーンなど、とても良かったです。シリーズ化の噂もあるようですが、ぜひ見てみたいです、っていうか出演したいです!関係者の皆様、どうかよろしくお願いいたします。出させてください、この遊史郎に! 
                                        * 
 今年最初に観た映画はジョニーディップ主演の「ネバーランド」です。「タイガー&ドラゴン」もそうですが、物語りの世界に一瞬にしてバーンと飛び込んでしまうっていうのが好きなんですよ。「ネバーエンディングストーリー」とか好きなんです。だからすごく楽しみましたし、いい映画でした。泣きました。おすぎです。いや、おすぎじゃあありませんけど、おすぎさんは高校の先輩です。ホンジャマカの石塚さんも高校の先輩です。ネバーランドの人喰いワニのお腹の中に時計が入っている訳がわかりました。ほんとうのことを言うと噺家って人間じゃあないんです。落語の国からやってきた妖精なんです。お客さんが「落語なんかつまらない」と言うたびに噺家が一人死んでしまいます。この十三年、どれだけの妖精の屍を越えてきたことでしょう。後輩の三遊亭楽昇は元気にしているのでしょうか。それでもぼくは寄席のお客様に妖精の粉を振り撒いて落語の国へといざなえるように今日も元気に飛び続けます。落語を、お客様を、自分自身を、ぼくは信じているからです。ではまたどこかの寄席で会いましょう。大丈夫。あなたは飛べるのですから。(1月25日)