森博嗣/スズキユカ「迷宮百年の睡魔」
前回の「女王の百年の眠り」と較べると、ゴチャゴチャしていて、面白さがかなり削がれている。謎が明かされたときのインパクトも今ひとつ弱い。
さらに読者にショックを与えるべきスプラッタシーンのさっぱり空振り状態なのが、なんとももったいなかった。恐らく、森博嗣原作の問題よりも、スズキユカの、男性漫画家が描くような鬼気迫る描写ではなく、少女漫画風の流れるような描写に原因があるような気がする(単に私が荒木飛呂彦や三浦健太郎などを見慣れてしまったせいかもしれない)。
同じシリーズ、同じ作者のコンビであっても、作品のタッチがこれだけ違えば、ギクシャクしてくるのだな、と思った。
ただ、全体に流れる不安感や、精神的描写は見事。あくまで作品の力点はそこにあるのだと思う。
ミチルとロイディのコンビもキマっているし、クジ・アキラとの過去こそが物語の中心にあって、一つ一つの謎はあくまで副次的なものに過ぎない。普通のミステリならば反則技だが、それをやってのけるのが、森博嗣ミステリー。
作者サイト:
スズキユカ印
Posted at 2006/11/25(Sat) 17:01:46
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