I teie nei e mea rahi no'ano'a

文学・芸術など創作方面を中心に、国内外の歴史・時事問題も含めた文化評論weblog

地力

星野仙一のオンラインレポート


 高校でも大学でも昔のような過酷な練習というものは滅多にないし、運動量、練習量とも格段に下。便利な生活のなかで体ができていない選手の方が断然多くなっているので、1年目か2年目に活躍して高給取りになった高校出の選手があまり練習もせず、外車を乗り回してばかりいてわき腹にぜい肉をつけ、花火のようにすぐ消えていってしまうというようなケースにしても何10回と見てきているので、くどいようだが何度も同じようなことを繰り返していうわけだ。

 一部では『所詮元スポーツ選手のクセに色々言い過ぎ』などと星野批判もなされているが、なかなかどうしてこのおっちゃんはいいことを言うのである。現阪神の岡田監督が全く気の利いたことを言えないのを思えば、スポーツ選手云々ではなく、個々人の資質の問題であろう。

 ――で、引用箇所だが、これは文化系の世界でも同じ事。文化系は軟弱だと思われがちだが、『心技体』三つが揃っていなければ一流とは呼べない。ただし、作品における『心技体』であり、実際の体力とは異なる。言い換えれば、作品の中に物事にぶち当たっていける力があるかどうか――これが『体』と見ていいだろう。『心技』はそのままの意味。
 文学、美術、アニメ、漫画、どこを見渡してみても、作品を作ることよりも商品を作ることを優先している。特に現代美術界はそういう意味において絶望的なのではなかろうか? 無名で活動するならともかく、爆発的ヒットを生みだした場合、本人が作品作りに専念したくても、周囲はそれを許さない。死後でさえ面白がって、商品として扱われる運命にある。
 ただし“作品”として完成されていないものは、どこをどうひっくり返してみても“商品”となるはずはない。それでも売れるのだから、商品として売り出す→花火のように消えていく、というわけである。
 言い換えれば売れる“テクニック”ばかり偏重しているということになる。作品を読んでみると、体裁ばかりで“地力”というものが伝わってこないことが多い。これはまさに『心技体』のうち『体』に当たるものだろう。作品にぶち当たる力というものが無い。村上春樹は優れた作家であるが、同時に『体』の欠けた作家の典型である。最も春樹文学はその軟弱さが“売り”なのであるから、仕方がない。しかし、もし『体』も充実していたなら、反対する選者を押さえつけて芥川賞をぶん獲ることもできただろう。反対する者をも力でもって無理矢理納得させる――それが“地力”である。
 どうしても、抽象的で難しい話なので、敢えてゲームに置き換えてみる。

RPGにおいて、こんなキャラクターを想像してみる。

A:体力100 マナ0 攻撃100 防御100 魔力0 スタミナ100
B:体力50 マナ50 攻撃50 防御50 魔力50 スタミナ50
C:体力10 マナ100 攻撃100 防御10 魔力100 スタミナ10

 Aは敵にぶち当たりながら、敵からも殴られるガチンコキャラ。パーティでは壁と呼ばれ損な役回りではあるが、接敵さえすれば文句なしの攻撃力により、主力ともなる。見た目はむさ苦しく、美しくない。しかしこれこそが『体』であり“地力”の塊である。独力でも充分戦い続けることができる。
 文化系で言い換えれば、周囲から猛烈な批判を浴びせられながらも、それを力ではね飛ばす人物である。孤独でも、力つきない限りは自分の力でどうにかできる。

 Cは強力な火力により、全く無傷で敵に勝つことができる。しかし、万が一敵から殴られると即戦闘不能である。ミスさえしなければ良いわけで、そういう意味で『技』そのものである。軟弱だけれども強力、華麗で見た目に美しい、極一部の女子が大喜びをするキャラクターである。しかし“地力”に関しては皆無と言っていい。回復・蘇生役がいれば無敵とも言える。
 文化系で言えば、颯爽と現れてヒット作品をバンバン打ち出す人。仮に正統の画壇や文壇から認められなくとも、ファンが味方する。このファンこそ、回復・蘇生役そのものである。(笑)

 Bは一見便利なキャラクターだが、全てにおいて中途半端。【何んでも出来る=何も出来ない=ただの人】である。
 ただの人であるからには、世の中のほとんどの人がここに属すると考えていいだろう。

 恐らく典型的現代人が憧れるのは、Cである。Aに憧れるのは、やや古いタイプの人が多い。村上春樹はCに属するだろう――まさに現代の申し子。
 ところで『心技体』のうち『心』を極めた人の場合、C、Aよりも一見中途半端なBの方が強力である。この場合は全能の人となる。レベルMAXの勇者とでも言ったところだろうか。ただし、『心』は極めることが最も難しい。

 さあ、これを読んでいるあなたは、A、B、Cのうちどれに憧れる?
(私はCです(笑))

Posted at 2006/07/11(Tue) 16:48:49

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