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マイク・リンデル自伝「What are odds?」 第3章「沢山のコカイン 1993年」あらすじ・日本語訳

「What are the odds from crack addict to CEO」=「こんなことってある? コカイン中毒者からCEOへ」

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※【】内は訳註です。

第3章 沢山のコカイン 1993年


 1993年、シュミティーズ・バーのある夜、私の全面的な賛同を得て、常連客が文字通り垂れ幕から振り下ろされていた。バーは混雑し、隙間無く詰め込まれていた。私は、小さな仕事でもやらなければならないことを考えていたが、その一つが天井のタイルの張り替えだった。それは、18インチの白い音響用タイルで、木製の横木で支えられていた。私は天井を見上げて、天井の状態を確認した。絶え間なく立ち込めるタバコの煙と、ソフトボール大会後の水鉄砲による水の掛け合いで、タイルは何十色にも醜くなっていた。
 その頃、常連客のスキーターとカマラの2人が入ってきた。彼らの目には、トラブルを探しているような感じがあった。ここで、私は一石二鳥のチャンスを思いついた。天井を壊すことは決まっていたが、そのためにはお金が必要だ。私はスキータとカマラをバーの後ろに立つ私のところに呼んだ。
「君たち、うちの天井のタイルを壊してみないか?」
 と言ってみた。
「本当に?」
 スキータが言った。二人とも目を輝かせて、何の問題もなく物を壊せることを喜んだ。
「今すぐ?」
 私はニヤリと笑った。
「ああ、今すぐに」
 すぐに、スキーターとカマラはテーブルの上に飛び乗って、破壊を始めた。突然、その場がジャングルジムに変身した。スケリー、ピティ、トード、ポッキー、フライマンなどが、バーやテーブルに登り、垂木にしがみついて、天井を蹴り始めた。床には瓦が降ってきて、一部は丸ごと、一部はバラバラになって、全体が瓦礫の山のようになってしまった。

 そんな風な調子なので当然ながら抗議にやってくる人も出てきます。マイクは「面白い」と言って常連達の行動を全面的に支持し、相手の不興を買う。しかし、それはマイクの作戦で、シュミティーズのイカれた行動を宣伝させることだった。実際、シュミティーズは話題となり、地域で最も収益性の高いバーとなっていた。
 常連客は新しいバーテンをからかうために、侮辱するような声明を出したり、バースツール【バー試用の椅子】をバラバラにして置いたり、バーテンに直接抗議するのではなく、センスある演出を行った。バーテンはもう沢山だと言って辞めていったが、マイクは却ってそれに満足していた。
 テレビ番組「アメリカズ・モスト・ウォンテッド」のロケ地に選ばれたときも、常連客は撮影班のピザを横取りしたりと、ハチャメチャをやってのける。
 そんな常連客に囲まれている状態に、マイクは自分の居場所を感じていたのだった。
 シュミティーズが急成長したことで、私はコミュニティの構築に着手した。男性と女性のソフトボールリーグを作り、フィールドの手入れや照明の管理、試合の審判もした。シュミティーズはいくつかのチームのスポンサーとなり、ソフトボールの試合が終わると、選手や観客のほとんどがバーに足を運んでくれた。

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 【もっと先の内容の写真ですが。地域コミュニティを構築していくマイク】
 また、ビリヤードやダーツのリーグ戦を開催して、シュミティーズをいつも利用してもらえるようにした。その結果、飲み物の売り上げはもちろんのこと、私が作った食べ物の売り上げも増えた。
 厨房の費用は、ほぼ空の銀行口座から小切手を振り出し、その小切手を会計から補填していた。しかし、この年、私は常に先手を打っていたわけではなく、多額の借越金をしてしまった。
 その一方で、書いた小切手と同じくらい多くの不渡りを受け取っていた。ビクトリアは労働者階級の街であり、顧客のほとんどが私と同じように給料日までの生活をしていることを知っていたから、常連客から「給料日まで預かってくれ」と小切手を渡されても気にしなかった。
 しかし、そのような判断を従業員にしてほしくなかったので、私が町に出かけるときには、バーにサインを貼っていた。

『マイクが帰ってくるまで、不良債権は受け付けません』

 マイクは人生を謳歌し、日に20時間働いても平気だったが、それはコカインの助けを借りてのことだった。常連客はコカインをやっていない者の方が多かったし、マイクがコカイン常習者だとは知らなかった。知っている者は黙っていた。
 それでも、シュミティーズでの日々は、マイクに人生がコカインばかりでないことを教えてくれた。

Posted at 2021/06/10(Thd) 19:34:13

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