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スティーヴン・ソダーバーグ「カフカ 迷宮の悪夢」

 せっかくなので、カフカ原作の映画作品を可能な限り特集してみる。

スティーヴン・ソダーバーグ「カフカ 迷宮の悪夢」(リンク先にあらすじあり)

レンタル落ちですみません


カフカ裏面


 とにかくパッケージによってB級&クソの烙印を押され、邦題に付けられたヘタでベタな副題によってそれを確実とされてしまった可哀想な映画。(笑) 中身の方は評価が分かれるところだが、決して悪い作品ではない(=決して成功ではない)。音楽や映像なども、ある程度までは合格点を与えてもいい。ある程度までは……。ただ、肝心なところで薄っぺらになるのが残念。脳をいじくるとか、発狂した人間などは、正直、要らない。
 この作品はフランツ・カフカの「城」と「審判」を下敷きにした映画で、主人公はKではなく原作者のカフカをモデルとしている。現実ではカフカは保険会社にてパートタイムの仕事をし、執筆活動の時間を生み出していたようだが、映画では主に審判のヨーゼフ・Kと融合している。しかし話の大筋は“城”。この融合は実に巧い。
 カフカの未完の世界を、他の作品、そしてカフカ自身の史実と組み合わせることで、映画の筋書きとして巧く補完している。これは未完の作品を、完成された映画として再構成する上での、良い手法となるかもしれない。ただし、巧く筋を合わせすぎたために、完全にカフカ作品とは異質のものになってしまった。未完の性質というものも、カフカの作品世界そのものだと言えるのだろう。
 それに、カフカならば絶対に描かないような場面がどうにもぎごちなくて、そこがとても残念。“城”への侵入方法もちょっとありきたりか。そこがこの映画の限界、といったところ。
 カメラワークも、役者の演技もストローブ=ユイレ作品を観た直後だと、わざとらしくてかなわない。この演出の職業的な部分が、カフカの世界とはとても相容れないように感じた。ハリウッド型のカメラワークでは、雰囲気ぶちこわしである。

 ――とはいえ、城の内部構造など、部分部分の絵はとてもいいものがあるので、参考にはなる映画である。


 DVD版ではパッケージが幾分マシになったようだが、副題は相変わらず。そういえばブランドン・リーの『クロウ 〜飛翔伝説〜』(オリジナル版。リニューアル版及び続編はクソ)も名作なのに、副題のせいで全てを台無しにされている。原題はもちろんクロウのみ。一体この意味不明な副題は誰が何んの目的で付けているのやら……。
 本題から逸れるが、『クロウ 〜飛翔伝説〜』は間違いなくブランドンの魂が宿っている、アクション映画の最高峰に立つ傑作中の傑作。しかも見せ場においては美術点も高い。これだけ芸術的に高められたアクション映画は他にない。一部で扱いが酷いのは副題のせい。今回記事にした作品よりは遙かに名作。(笑) 未見の方はレンタルでもいいので、是非。

Posted at 2006/08/03(Thd) 21:45:56

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