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文学・芸術など創作方面を中心に、国内外の歴史・時事問題も含めた文化評論weblog

第59回日本アンデパンダン展

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 アンデパンダン展とは、フランスで起こった非審査・自由出品の展覧会のこと。フランス印象派及びアンリ・ルソーはこれが無ければ始まらない。
 ――日本でもこの精神に則った非審査の公募展たる「日本アンデパンダン展」があるというので、昨日(3/9)出掛けるついででしたが、春のうららかな日差しの中を上野公園へ。暖かいを越して熱い熱い。もうYシャツだけで充分ですね。公園内ではパンフルートの演奏の他、学習院みたいな制服を着た女学生を見掛けました。
 日本アンデパンダン展の会場である東京都美術館へ到着しましたが、閑散としていて気持ちがいいほど。普段企画展で、人の後頭部ばかり見ているので、たまにはこんな美術鑑賞も悪くないです。
 肝心の出品物に関しては、意外と皆さん真面目を通り越して保守的な気が。“いかにも”という作品が多かった。アニメ調の作品なんて2〜3枚見掛けたかどうか、という程度。主催者の影響でしょうか。そういえば、やたらと反戦モノが多かった気がします。(小泉)政治批判も二つ三つ。
 気持ちは解るのですが、底まで伝わるほどの強いメッセージ性を有したものは無かったかも。絵に詩文を書き連ねたり、新聞をコラージュしたり、言葉で表現されると解りやすくはあるのですが、あくまで表面的に過ぎないな、と。それよりも、原爆ドームだけ描いてある方がピンと来ますし。しかし、それも使い古されたモチーフ――というよりももはや符合と化していますから、見る者へもっと強く訴えたいのなら、やはりより強烈な、或いは少し違ったアプローチも必要なのかもしれません。
 一見文字に見える一つ一つが人間の姿をしている(戦争批判)力作もありましたが、やはり過去において既に用いられている手法では、どうしても度肝を抜かれるようなことは無いわけで。

気に入った作品達:
岩崎孝「もう近い」
 女性が椅子に座ってポーズを取っているだけの、一見普通の絵なのですが、極めて微妙なところにおいて心を惹かれた。見る者の危機感を煽る、というか。

酒井あきら「メッセージI」「メッセージII」
 一見岩崎ちひろかと見まごうようなタッチ。もちろん、作者自身が持っているものも出ていて、そこに不思議な魅力が宿っていたような気がする。やさしさにも訴える力はあるよなー、と。

浅野琢也「ブルーシートTOKYO」
 “時転”する地球の光学ホログラフや、塩で固めた(?)ソルティドッグなど、単純に見ていて面白かった。見る側の好奇心をそそるのも、アートの使命のうちの一つかと。

----(08/24追記)----
 画像の転載許可を戴けたので、紹介します。

ブルーシートTOKYO


 こちらがブルーシートTOKYO。この視点からだと、ちょうど下の方に“時点する地球”が見えています。これは上から覗くことでホログラフが浮かんで見えます。
 平和を祈願していながら、口うるさく平和平和とは言わない。そしてただの『ブルーシート』ではなく『TOKYO』と付いているところが、利いています。『ブルーシート』と『TOKYO』とは、妙にしっくり来る言葉のように思う。神奈川県がブルーライトなら、東京都はブルーシート。

ソルティドッグ


 左手の向こう側は、ソルティドッグの小屋になっています。まさにソルティドッグ!

 これだけ愉しい展示とは、なかなか出会えない。チープなところに、童心に返ったような懐かしさを覚えました。見る者の好奇心を刺激し、『何んだろう?』『どうなってるんだろう?』と思わせるのは、単に並べられただけではなく、その作品が強い物語性を持っているからだと思います(いつもこればかり言っててすみません)。物語には芸術へと昇華する力が必ず備わっているのだと、信じています。
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 会場内は鑑賞者の思うまま自由に観賞出来るスペースが出来ていました。犬の散歩が出来る作品や、鑑賞者が鶴を折ったり、毛糸を結ぶ作品などなど。陶器作品のように、美術的価値以上に物品的価値のあるものには“監視”が付いていましたが。そういえば、田中美香「THE USAGI」という詩画本が持ち去られたようで。舞台裏では結構ゴタゴタがあるのかもしれません。

 会場を出た後は上野公園を気持ちよく歩き回りました。しばらく袋小路に迷い込んだような状態だったので、気分もすっきりしました。人が多いのは大嫌いですが、上野の雑踏は嫌いではない。托鉢中の坊さんを尻目に帰りました。

(画像はアンリ・ルソー「アンデパンダン展へ行こう!」)

Posted at 2006/03/09(Thd) 10:27:29

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