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「久遠の絆」

なれそめ

 三回目のお題目は、またもやゲームから。PS1で発表され、最近DCに移植された「久遠の絆」です。fjでPS版が話題になった時にその存在を知り、その時は特にプレーする気は無かったのでした。その後DCに改良版が移植されることになることを知り、やってみようと思ったのでした。

解説

 物語としては、輪廻転生物になります。日本の神話や竹取物語をベースにおいて、繰り返される悲劇を断ち切ろうとする者達の姿を描いております。シナリオはトゥルーエンドと呼ばれる本筋に加え、主人公を愛する女性毎に一つづつのハッピーエンドが用意されています。それから複数のバッドエンド、おまけシナリオという構成です。
 現代日本がスタート地点。この段階では前世の記憶はほとんどわかっていません。わかるようになるのは平安編というパートに移ってからです。というか、基本的な人物関係は平安編で全て明らかにされます。この後、メインストーリーである現代編と過去の出来事である、元禄編、幕末編との間を行き来し、そして現代で全てにけりをつけるという流れになっています。このうち、元禄編と幕末編では平安編での人物関係を繰り返しているだけで、事態の解決には全くと言ってよいほど影響しません。そのどれもが、平安編も含めて、悲劇的な最後を迎えます。しかし、そのことが、現代編で登場人物の苦悩を強化する結果となり、物語に重みを与えているのです。そして最終決戦を経て、全ての運命から解放されるのですが、DC版では一部救われなかった人々を救うために、過去に戻ってやり直しをするという再臨詔というシナリオが用意されています。
 PS版での当初の評価は、fjで展開されたものを読む限りでは、ストーリーはいいが文章に難があるというのが一般的でした。シナリオに整合性が欠けていたり、誤字脱字等があったからだそうです(更に凄まじい批評が展開されたのですが、その評判は悪かったです(^^;)。DC版では見直されたそうですが、くわしくはわかりません。ゲームとして見る限りでは、グラフィックはDC版ということもあり、文句なしにトップクラスの出来です。そして音楽も作品にマッチしたすばらしいものでした。ゲームシステムも改良された結果なのか、スムーズでした。しかし……物語として見る限りは、fjでの批評が妥当であったことを認めざるを得ません。ストーリーはいいのです。素材の選び方も悪くない。日本の神話や昔話をうまく取り入れていると思います。特別破綻を来すような要素は無いのです。しかし、それを文章にしたときのまずさが目に余るのです。それは特に平安編に顕著です(現代編や元禄編・幕末編ではそれほど気にならないのですが)。一言で言えば、かったるいと言うことでしょうか。そしてより決定的なのは、物語の雰囲気を破壊しているということなのです。平安時代なのにアジトなんて言葉が出てくるなんての、もうダメダメ。現代にいる主人公が見ているという設定があったとしても、納得できるものではありません。人物のセリフにも問題があります。主人公の言動や思考がひどく現代的です。当時の人が言いそうもないことを言ったりします。現在と過去とが交錯しているとも理解できるのですが、やはり、この時代の雰囲気というものを壊しているように思えてなりません。挙げ句に、セリフ中にハートマークが出てくる当りになると、もはや違和感ばりばり。現代編ならまだ許せるんですがねえ……。
 悪いことばっかりではなんなので。クライマックスで天野先輩が突如として沸いてくるのはびっくりしましたね。「はぁい、ぱぱ」って、なんやねん(^^;。最後の方で意表を突かれたのでした。

まとめ

 大作と言って良いこの作品。シナリオに問題無しとはしませんが、全体的にはよくできていると言えるのではないでしょうか?リサーチはしっかりできているようですから、次回作に奮起を期待したいと思います……もっとよくがんばりましょう(^^)


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