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新しい要求事項に対する対応策
これらの新しい要求事項に対する対応策を提示しよう。なお、この対応策は個人的な意見であって、決してTC176委員会によるモノではないことをお断りする。
対応策を立てるに当たって、30以上を数える新規要求事項を顧客関連のプロセス、継続的改善、トレーニング・意識・コミュニケーション、さらにこれらに属さない新規要求事項に区分した。
顧客関連プロセス
ここに区分される新規要求事項は、顧客との取引や組織の代表者として顧客に対応する部門を品質マネージメント・システムに含める必要性が生じる。一般的には、販売、顧客サービス、請求事務、宣伝などに関わる部門がこれに相当する。しかしながら、このような部門に携わる人々が、「クオリティ」に関わっているという認識は低く、品質マネージメント・システムに組み入れられることや自身の業務の改善に対して強い抵抗を示すことを幾度も体験している。このことを認知しつつ以下の対応策が必要と指摘したい。
- 契約内容の確認に関する手順を見直し、顧客の要求事項を特定するプロセスを文書化する。
- 顧客苦情処理を取り込んだ顧客満足および不満足を測定する手順を新規に策定する。
- 製品情報、受注、顧客苦情、並びに顧客からのフィードバックに関わる顧客とのコミュニケーションについての手続きを明確化できるような業務手順書を新規に策定する。
- 顧客の求める事柄並びにこれらの要求内容を満たすことがいかに重要であるかの認識を高めるプログラムを確立する。
- 顧客のニーズと期待が何であるかを決定し、仕様や規格に変換することが確実に行われる手段を策定する。この場合、必ずしも文書化された手順書は必要ではないが、確実にできることを示す何らかの方法が必要となる。
継続的改善
現行の規格に於いても継続的改善の概念はいくつかの要求事項として表現されている。クオリティの向上を示す成果に関する情報収集、顧客満足の測定、また内部品質監査の結果を経営者に報告に基づく継続的な改善の計画作成は、新規に求められた要求事項である。
- 要求事項の充足並びに継続的改善に対するコミットメントを追加するするために品質方針を改訂する。
- 継続的改善に対するコミットメント並びに品質方針と整合性のとれた品質目標を策定する。
- 品質目標を達成するために必要となる品質計画を作成する。
- クオリティ上の成果を示すデータを収集し、分析する新規の手順を策定する。
- 継続的改善を実践可能とするために種々の情報並びにデータを利用する新しい手順を策定する。ここでは、統計的な手法をいかに利用するかを定める必要があるかもしれない。
- 経営者の見直しの討議内容ならびに結論に関する新規要求事項を満たすために現行の手順を改訂する。
トレーニング・意識・コミュニケーション
現行規格の要求事項を満たすだけでなく、教育訓練効果の評価並びに社員の意識向上を高めることが新規に求められる。さらに、経営者の責任の下での内部伝達のプログラムとこの社員意識向上が結びつけられことになる。新規の要求事項を満たすための対策は以下のようになる。
- トレーニングの効果を評価するための手順を明確にする。
- 社員意識向上のためのプログラムを策定する。
- 内部伝達のための新しい手順を定める。
全くの新規要求事項
- 製品のクオリティに関連する法的要求事項を明らかとし、その法規ないしは規制を常にアクセス可能にするために、どのような手段で企業に適用される法規・規制を明確にし、いかにこれらを責任部署に通知するかを定めた新規の手順を策定する。
- 製品の適合性を達成するために必要となる適切な作業環境を明確化し、実施することが求められる。まず、この要求事項を一見すると健康並びに安全の領域とすることができるかのしれない。しかしながら、注意深く読むと、作業環境は製品の適合性の範疇内にのみに関連することを示している。したがって、この要求事項に対する不適合を明確にするためには、監査員は作業面での状況が製品の適合性を達成する上で阻害要因となっていることの具体的な証拠を見つけだす必要がある。健康や安全面での規制に対し軽微な違反をもって、不適合という引き金を引くには十分ではない。作業環境を規定するには、法規および規制を引用することもできるし、企業の健康・安全マニュアルや方針を使うこともできる。さらに、企業が外部規格や規制(たとえば、SA8000)を引用することもあり得る。ある場合には、法的規制があったとしても特殊な工程、作業、作業場所に対し特定の制限を設けることが適切であることもある。
- 設計全般に亘り設計変更による影響を決定し、設計の再検証ないしは再妥当性確認を行う必要があるのかどうかを決める要求事項がある。これに対処するためには、設計変更を処置する手順は修正されなければならない。手順には、部分的ないしは全面的な再検証もしくは再妥当性確認を必要とするかどうかの判断を行うためのチェックリスト、少なくとも設計・開発レビューのスコープを明確にする必要がある。
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