審査機関がコンサルタント業務を行ってはならない

 このホームページで行っている監査機関の評価でも明らかなように審査機関がコンサルタントをしている。この行為は、「利害抵触」に当たり国際規格で禁止されている。これは審査機関の自殺行為であるにもかかわらず横行している。審査を受ける企業もあるからこそこのような禁止行為がなされるとも言える。このような事態について海外の動きがあるので以下に紹介した。

カナダの規格協会のDon Wilson氏は、審査機関がコンサルタントに等しいサービスを顧客企業に提供していることに関して強く反発している。

「第三者審査機関として企業の適合性を認定する審査機関の一部がよしとされる一線に近づいているか、あるいはその一線を越えている兆しがあることをしばしば聞くようになった。審査機関が企業のシステムをいかによくするかについて企業に忠告するようになると、
審査業界全体を害することになる。」

 「監査員は、システムの基準に基づいて要求事項を充たしているだろうというフィードバックを与えることしか出来ない。」
 すなわち、「彼らは、ここが間違っていると言うことはできるが、「このように直せばよい」と言ってはならない。」

 Wilson氏は、人を引きつけるができる審査機関が企業に認証以上のことを提供し、そして弱いシステムを強くするための方向付けをしなければならない立場あることについては認識している。しかしながら、審査機関がコンサルタント業務に成り下がり始めると、マネージメント・システム分野では傷ついてしまうだろうと述べている。

 「付加価値と言うことは私も理解しているし、「監査のポイントは何なのだ?監査が私たちにどんな価値を与えるのか?」という顧客企業がいることも知っている。しかしながら、もしも顧客企業が審査機関に”利害抵触”に触れるように仕向けるようなそぶりを見せれば、品質管理に関して「まじめに取り組んでいない」ということだ。

 Wilson氏によると、このことをわかりやすく言えば「審査機関が自分の仕事を監査出来ない」ということだ。そんなことをすることは全く意に反した行為である。認証を手やすく取れるような審査機関を企業が探していることも知っている。しかし、このような行為は、近視眼的であり自らを滅ぼすことになる。「もし審査機関がそんなことをすると多くのまじめな企業が感じたら、認証に書かれている内容に値しなくなる。多分一二年はそのままうまく行くだろうが、いずれ自分の顔をぶっつぶすことになる。」

審査機関認定協会(LAB)の重役であるRandy Doughtertyは、第三者審査機関の業界が利害抵触に関わる危険に侵されているとしている。しかし、「審査機関が事実上のコンサルタントとして行動しなければならないことには用心深くなることが、業界を健全に保つ上で重要である。」と言う。

 「私は第三者認証には多くの将来があることを知っている。単に認証を取得するだけでもビジネスの改善を強化でき、弱いところを明らかにすることはシステムに価値を与える機会をもたらすからだ。」

 (以下省略)

 最近起こった米国エネルギー会社の倒産劇で明らかになってきたように会計監査とコンサルタント業務を同一の会社が行うことがいかに危険であるかを指摘された。マネージメント・システムの認証監査とて同じで、同じ機関がコンサルタントをして、システムを構築することを手伝い、出来上がったシステムを同一の審査機関が監査することは許されていない。参考のために、「品質システム審査登録機関に対する認定の基準」についての指針(ドラフト2)に記載されているコンサルタント業務の定義を以下に引用する。

 G.2.1.23. コンサルタント業務とは,審査する品質マネジメントシステムの構築に関して
積極的,独創的な手法で参画することと考えられている。例えば,
a) マニュアル,ハンドブック,又は手順を準備又は作成すること。
b) マネジメントシステムの問題に関する意志決定過程に参画すること。
c) 後日の審査登録に備えてマネジメントシステムの構築と実施について,特定の助言を与えること。

注)指針G.2.1.23.でいうマネジメントシステムとは,財政面を含むそのシステムの
すべての側面を含んでいる。

  さらに、以下のようなガイダンスがあることも承知してほしい。

 G.2.1.26. 特定のコンサルタント・サービス又は研修サービスを受ければ,審査登録が簡単に,
容易に又は費用が低額になるということを示唆するようなことを,審査
登録機関は述べることは望ましくない。 


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