1999-2001年の主要戦略(案)

 ISO の運営モデル及び事業姿勢のキーワードは以下のとおりである。

価値(の向上)(VALUE)-パートナーシップ(Partnership)-合理化(Optimization)

 これらのキーワードは、ISO が追求するべき主要戦略の方向性を要約したものである。すなわち、市場ニーズを理解し、それを満たし、でき得る限り予測する能力を持つこと(価値)、ISO システムの様々な段階において、すべての関係団体の最大限の参加・協力を確保すること(パートナーシップ)、情報通信技術の利用の手を広げることにより主体事業のプロセスを再設計し、21世紀に向けて需要が高まり続ける標準化をサポートするために必要な資源をより巧みに収集し、ISO が提供するサービスの改善やトータルシステムの経費削減に向けてそれらを最も効率的に利用すること(合理化)に関するものである。(オーナーの注:「合理化」は間違った邦訳であり、「最適化」が正しい。)

 現在の長所、弱点、機会及び脅威の完全分析により、関連戦略的要素を基に五大戦略が立案された。これらは、ISO の遂行事項として以下のとおり示されている。(項目のみ紹介)

 
主要戦略
(戦略的活動)
1 ISO の市場適合性の増加3 資金の効率的な使用
● 市場ニーズのより良い理解及び企業の参加促進● 市場ニーズへの対応及びそれに応じた運営資金の確保
● 技術プログラム管理の改善● 優先事項の絞り込み及びコスト削減
● 諸国際標準化機関とのパートナーシップの促進● ITCの潜在能力の全面的な開拓
2 ISO システム及び規格の普及4 新規技術プログラムの奨励
● 産業界リーダーへの更なる働きかけ● ISO 技術サービスの範囲拡大
● コミュニケーション及び情報伝達の改善5 開発途上国における基盤整備
● ISO 規格使用を促進するためのメンバーの関与● 初期レベルの基盤概念の構築
● 援助プログラムサポートの調整

(オーナーの注:ITCとは、通信情報技術を意味する)

   以上は、「標準化と品質管理」1998 No.10からの転載であるが、1999-2000年にISO 規格が目指す戦略であり、基本概念が要約されている。規格に基づくシステムを導入する立場から考察するならば、幾つかの注目すべき点がある。すなわち、コストの削減などに見られるように事業実績(簡単に言えば、バランスシートに現れる利益や損失)の重視であり、またコミュニケーション及び情報伝達の改善である。これらは今日の規格の弱点であった。認証取得のメリットが明確でなく、経営者の導入判断を鈍らせていたことも確かである。

 一方、新規格が実現するとマネージメント・システムとしてISO 9000規格要求より優れている「マルコム・ボールドリッチ賞」との境界が不明確となるように思う。単なる憶測ではあるが、「マルコム・ボールドリッチ賞」そのものがさらに高度化されて、世界規模の企業にのみ適用できるレベルに発展し、ISO 9000規格の性格は後進国や小規模企業のシステムとして住み分けする時代が来るのかも知れない。そんなことを考えていると、オーナーの引退はまだ先のように思える。


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