TC176部会による2000年版に対する要望調査
概 要 以下の論文は、ISO 規格の制定に携わるISO TC技術委員会が実施したISO 9000ユーザー調査から判明した主な内容の発表であり、「ISO 9000ニュース」9/10月号に掲載される予定である。TC176委員会の副委員会2は、世界中のユーザーからインプットを回収し、2000年に予定されているISO 9000主要シリーズの改訂に対する市場の要求を明らかにした。 現在の認証規格、ISO 9001、ISO 9002、ISO 9003、および品質マネージメント・システムの指針、ISO 9004-1は、唯一の品質保証モデルISO 9001、および品質マネージメント・システムISO 9004に集約される。 現在の規格を改善し、改訂版に取り入れるべき点の優先順位に関してユーザーの意見を求める質問が用意された。回答から得られた改善点のトップ7は、
より簡単な言語と用語 であった。
著者 Matt Seaver ISO 9000主要シリーズの現行版改訂の計画は、約3年前に発足した。品質規格策定と改正作業に従事する母体、ISO 技術委員会176(以下TC176)は、このような重要プロジェクトには、資源を効率よく利用し、時間の枠内で規格を作成するためには規律正しいアプローチが必要であると認識した。 現在の認証規格、ISO 9001、ISO 9002、ISO 9003、および品質マネージメント・システムの指針、ISO 9004-1は、唯一の品質保証モデルISO 9001、および品質マネージメント・システムISO 9004を両立した一対の規格と置き換えることが決定された。すなわち、品質保証(要求事項)を取り扱うものと、品質マネージメントの境界部分に関するものとの両立性である。 この目的を達成するために、技術委員会の副委員会2の組織改定が行われた。作業部会、10、11、12、および15は、一つの作業部会18と置き換わり、Dr Jeff Hooperをプロジェクト・マネジャーとする組織として設立された。旧作業部会で携わっていたメンバーは、新しい作業部会18内の種々の作業グループに任命された。この作業グループのそれぞれには、達成すべき非常に特殊な任務が与えられ、その任務が達成された暁には、必要に応じて解散される。 適用範囲が限定された1994年の改定とは異なり、2000年版改定は、ISO 9000シリーズの核心部を大きく変えることになった。これらの規格は、すべてのISO 規格の中では、最も周知され、普及しているので、今回の改定規格に対するユーザーの要求を正確に取り入れることが肝要となった。 「ISO 9000ニュース」の読者は承知されているように、実際の改定作業を始める前に、SC2は、改定規格案の素案を作成しました。この改定素案には、非常に一般的な言語を用いて要求事項が記載され、また規格の包括的アプローチと内容を定めるために初期の規格として適切なものである。しかしながら、プロセスそのものを記述するには、さらに詳細な要求事項の定義が必要である。この詳細な要求事項の決定作業は、タスク・グループ(TG1.2.2)に任命された。 このグループが、ユーザーが持っているであろうと思われる要求事項のリストをまず作成した。このリストは、WG18のメンバーの個人的経験と、印刷物などで発表されて知られているユーザーの意見に基づいて作成された。これは作業グループの出発点として役だった。引き続き、できるだけ広く世界中のユーザーから、正確で現時点の反応を得るために、タスク・グループは一つの詳細な質問状を作成した。 この質問状は、両立した一対の品質保証と品質マネージメントの規格に対し現在のISO9000規格に関するユーザーの観点を見いだすために設計されていた。推察できるユーザーのニーズは、この質問状の基礎として用いられた。質問は、規格の実際の文章内容に加えて品質マネージメント・システムに関連する一般的な数多くの問題に留意されていた。以下は、質問状の表題で、質問状はISO国家機関メンバーの全てに送付された。 質問状の目次
質問状作成上の一般的指針 質問状の各セクションには、多くの疑問や提案が乗せられ、各の章に重要なことは何かを 回答者に求めている。回答者は、特定の素案に対し、「非常に重要」、「重要」、「やや重要」、もしくは「重要ではない」のどれかを述べることが求められた.。また、現行のISO9001、およびISO9004規格の各セクションに関し、詳細なコメントを回答者に求めている。 配布 ISO/TC 176の副委員会2の秘書役を通じて、質問状は、以下のところに配布された。
全ての国家規格機関、および当該機関を通じて貿易協会、 利害関係を持つ団体は、コメントをFAX、もしくはE-Mailで解答を送付することが求められた。 回答者のプロフィール 質問状に対し、世界40カ国から1120の回答があった。次の表は、回答者の幅を示す単純な全体像を写している。
規模 幅広い企業が回答した。1−14人の従業員(12%)から
事業 回答者の事業活動は、一ないし四つの製品分類に
ハードウエア 30%
地域 アフリカ 4% 主たる結果調査 回答は、ISO/TC 176の副委員会2の秘書役によって回収され、IBMが特別に開発したデータベースに入力された。その上で、提案された素案に対するユーザーの主なる要求事項を特定するための分析を行った。この作業は、6ヶ月を要し、1998年4月に完成した。 ISO9000の役割 ユーザーは、規格の役割として以下の要求事項が必要であると調査結果は示した。以下その概要を示す。 マネージメント・システムの調和と統合 現行のISO9000とISO14000(環境マネージメント・システム)規格は、一つのシステムに統合することができるように変更が必要である。少なくとも、同じ要素でISO9000とISO14000を融合させる必要性は明らかである。両立した一対の品質保証と品質マネージメント規格の素案は、環境、財務、職業上の健康・衛生のマネージメント・システムとの統合に適当であると、90%の回答者は感じた。 適用の特例 特定の組織には適用できない場合には、ある要求事項を除外することをもって適用の特例とする。調査によると、81%のユーザーは、品質保証の規格にはこの指針を与えるべきとしている。ただし、このような特例は、明確に正当化できる要素と活動のみを対象とすると厳格に制限すべきであるしている。 継続的改善 82%の回答者は、継続的改善を示威することが品質保証の規格での要求事項であるべきと感じている。92%の回答者は、不適合の予防は重要であると感じている。 利益関係者の利益 93%の回答者によると、品質マネージメント規格は、すべての利益関係者(所有者、従業員、供給者、顧客など)に利益を与える助けとなるべきであるとしている。 使いやすさ 品質保証と品質マネージメント規格は、使い勝手がよく(96%)、言葉が明瞭で(99%)、理解し易く(98%)なければならないとしている。二つの規格は、同じ用語を使うべきであり、創造性と革新、またよき目的の設定を為しえるものであるべきとしている。しかしながら、不必要な制限を設けることのないこと。 88%の回答者は、品質保証規格は自己評価を可能とすべきと考えている。 プロセス志向 二つの規格は、現行のISO9001と20項目の要求事項の文言のように、要求事項の一組のセットとしないで、プロセスの観点から品質マネージメント・システムは記述されるべきである。64%の回答者はこの件は重要であるとしている。 現行ISO9001の改善 現行の規格を重要性と解釈上の困難さに関して評価することがユーザーに求められた。 重要度 現行の規格で以下の5項目が最も重要であるとした。
是正処置及び予防処置 解釈上の困難さ 現行の規格で以下の5項目が最も解釈上困難であるとした。
設計・開発 改善 回答者には、現行の規格に対して改善点についてトップ3位までの優先順位を付けるよう求めた。約1900件の助言を受けた。最も強く要求された改善点七つは、
1.簡単な言語と用語の使用 結論 この調査は、ISO9000規格を作成する人々とユーザーが直接コミュニケションをする機会を持つ初めての試みであった。回答には、非常に多くの有意義なコメントがあり、重要なインプットとして改訂版ISO9000シリーズのドラフト作成に用いられる。今までに、三つの新しい規格案が作成された。この国際規格案(Draft International Standard)は、来年に配布されることになっている。 調査結果は、規格作成作業が、規格の将来ユーザーによって明らかにされた正しい方向に向かっていることが実証された。また、この調査によって、ISO/TC176が改訂作業を進めることができ、大多数のユーザーが希望するすべての事項を重くとらえた最終規格を国際的コミュニティに対して提出するできる自信を持つことができた。 |