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 ISO9001の改正

  By Denies Robitaille---TC176委員会、U.S. TAGメンバー



他の国際規格と同じように、ISO9001も時代の状況に対し妥当で適切なように最新のものにし、改正することが必要になった。ISO9001をQMSモデルの基準として使っていくというならば、規格そのものの品質が優秀であることの証拠としてのモニタリング、顧客志向、継続的改善の必要条件を適用させることが求められる。

ISO/TC176の技術専門委員たち、すなわち、ISO9000シリーズの文言を書き、改正してきた人たちなのだが、彼らは規格利用者コミュニティからデータを収集したり、市場からのフィードバックをレビューすることに決して注意を怠ってはいなかった。データを分析した結果は二つの重要な決定を生み出した。初めの一つは、ISO9001:2008は小さな変更だけの修正にとどめるべきである。そして、二番目としては、ISO9001:2015(大まかな予定)では、市場で起こっているグローバル化と技術的な変化を取り入れたもっと大規模な改正にすることである。このように修正を支持するフィードバックはすべて今回の改正で手際よく処理された。この単発の修正で適応させることができなかった問題は、次回の改正まで棚上げされた。

このすべてはISO9001の将来にとって良い兆候だ。修正だけなら、2000年版の改正時に経験したような大騒ぎを繰り返すことを心配しなくてすみ、自社のシステムを規格の利用者がさらに成熟させることができる。しかも、規格を継続的に使う上でなにがしかの影響を与える変化に対して十分な処理を行い対応する時間を技術専門委員たちに与えることができる。   

  二つの重要な考えが次回の改訂まで持ち越される。まずは、業界別特別規格(sector-specific standard)に関連している。二番目は、技術、サプライチェーンマネジメント、そしてグローバル化の面での発達と変化にかかわることである。これら両方の問題をどう対処するかは、ISO9001が継続的に生存できる能力に長期的な影響を与えることになる。   

  業界別特別規格

  いく年にもわたって、ISO9001を基本にした業界別特別規格が増殖してきた。過去二年では、農作物と石油業界に関する規格が追加された。医療器具、自動車、電話通信、航空機のような分野ですでに成熟した規格に参入したことになる。環境問題、健康および安全、試験機関認証に関係する規格がさらに増大している。

  業界別特別規格は、よい面もあれば欠点もある。ほとんどの部分でこれらの規格はISO9001に基づいている。よって、認証を取得した現有のISO9001QMSに組み込むことが容易くなる。個々の業界に特有の要求事項を追加することが主要なテーマとなっていることがこれら業界別特別規格の特徴である。たとえば、ISO/TS 16949の認証を受けた自動車部品の供給者は、製造部品承認プロセス(PPAP)および設計故障モード影響解析(FMEA)を取り入れた品質マネジメントシステムを実施することになる。医療機器を販売している業界(ISO13485)での企業は、移植可能かどうかに基づく要求事項を次々に積みあげていった。電話通信業界(TL9000)の御用聞きたちは、ハードウエア、ソフトウエアおよびサービスプロバイダーに対処する規格の中に多彩な要求事項を埋め込んだ。同じようなことはは半ダース以上の業界別特別規格に見られる。要求事項は適切で合理的ではあるが、挑戦と制約を使用者に突き付けていることを認識する必要がある。

複数の業界別特別規格を効果的かつ効率的に統合した一つのQMSを構築して複数の市場に参入しようとしている企業の気力をくじくことになりうる。ある時、このようなまま子はISO9001の効果を薄めるのではないかという懸念があった。顧客がこれらの業界別特別規格のひとつを選んでISO9001を無視するのではないかという恐れもあった。 複数の規格を順守することが余りにも厄介なことになれば、どのような規格であろうとも市場で一切受け入れなくこともありうることだった。ただし、この二番目のシナリオが起こりそうな気配はない。ISO9001の編集者は市場から投げかけられているチャレンジを熟考し、次回の改正が潜在的な問題を悪化させることのないようにしっかり対処することが必要だと考える。

ISO/TC176の技術専門委員たちは、これらの規格が真正面にISO9001を基礎にしている事実に対して見て見ぬふりをすることはできない。したがって、業界別特別規格と矛盾するような文言を改正版に取り入れてはならない。さらに、ある特定の要求事項が不適切であるかあるいは的はずれであるがために業界に何らかの不必要な負担を強いる要求事項あるいは文言を含めることのないようにしなければならない。ISO9001の成功に大きく貢献してきた包括的で普遍的な語調を残せば最高にうまくこの問題を取り扱うことができる。

業界別特別規格を支援しているいろいろな業界団体がISO9001と両立させることを望む場合だが、ISO9001に大きな変更がされると彼ら特有の規格を必然的に改正する必要が生じるので彼らは当然のことながら大幅な変更には懸念を持たざるを得ない。しかも、いくつかの規格、その中でももっとも有名な自動車業界のISO/TS 16949は、第2および第3階層のサプライヤーに対して承認されたQMSモデルとしているがこれとてISO9001に大きく依存している。彼らにとってISO/TS 16949のような規格に対する認証取得は適当ではないこともありうるし、あるいは不必要に大きな負担をかけることもある。だから、変更は無頓着にまたは軽薄に行われてはならない。

ISO14001とOHSAS18001は業界別特別規格とはいささか性質が違っている。これらは環境問題と健康・安全の関心事にそれぞれ個別にかかわっている。ISO/TC207は、ISO14000シリーズの規格に責任がある委員会である。ここ数年間、この委員会とISO/TC176の技術専門委員たちはこれら二つの規格に使われている用語を整合させる努力を重ねてきた。これによって無数のインプットがISO9001の次回の大規模な改正に対して行われることが期待されている。OHSAS18001は、新参者でISO9001と整合させることに対してのコミットメントはなされていないが、ISO9001の編集者は、強くなってきているこの規格の影響力を無視することはできない。

  アウトソーシングと国外製造

TC176/SC2(ISO9000、ISO9001、ISO9004についての作業に責任があるサブコミッティ)のごく最近の会議で、規格に何らかの影響をあたえる話題がいくつかある。

その中でも最も支配的だった話題は、サプライチェーンのいろいろな側面をいかに処理することだった。具体的に言うと、プロセスのアウトソース、グローバル化、環境の要因および情報技術である。

ISO9001の文章では、アウトソーシングとは、外部の企業体によって実行されるプロセスであり、組織が必要とするプロセスであると言及している。必要な経営資源あるいは効果的に実施できる能力が組織自体にあるかどうか、あるいは誰か他の組織に実施させる方が財務的により有利だということのいずれかによってアウトソースするかどうかを決めることができる。典型的な事例は、第三者機関による試験や妥当性確認、ユーザーマニュアルの作成、包装、熱処理、技術サービスヘルプラインである。

技術専門委員たちは、多くの組織でアウトソーシングの普及が進んでいることを認識はしている。 アウトソースは、製品の提供に拡大し、販売後のサービス機会を増加させ、企業の能力を増大させていることに役立っている。アウトソースは、管理費用を低減し、資本支出額のニーズを伸ばし、需要の急速な増大によるリスクを緩和させ、Lean Initiativeに貢献する。

現時点で、アウトソースを取り巻く要求事項を記述している文言はISO9001では限られている。アウトソーシングがますます広まっているので、追加的な文言を挿入することによって現状に合わせるられるという意味で適切であり、実際に起こっている流れとつり合いがとれることになる。

また、サプライチェーンの中で多数の輪ができているのでアウトソーシングはオフショア化(国外製造)され、拡大を続けるている。原材料、部品、最終製品、そして顧客サービスは今や地球のほとんどすべての片隅から届けられている。ISO9001の編集者は、このような長大な距離に阻まれた供給者に対し独特の要求事項を規格はもっと大幅に記述する必要があるだろうと予期している。グローバル化された供給者の関係を調節する制約ははっきりしている。距離、輸送、時間帯、文化の違い、コミュニケーション、そしてインフラストラクチャーの信頼性は、大陸間での協力関係に大きく影響している。ISO9001は供給者に関連した問題を取り扱ってはいるが、発展する市場の実態を反映し妥当な内容になるよう文言は改正される必要がある。

このことは他の話題を私たちに提示することになる。ISO9001が始めて発行されたときレーダーのスクリーンにわずかに現われた映像だ。インターネットである。数ある中でワールドワイドウエッブ(WWW)は、アウトソーシングとサプライチェーンのグローバル化を可能にした。しかも、これは情報処理技術の成長分野の一つにすぎない。コミュニケーション、文書管理、マーケティング、トレーニング、および電子取引の面で電子メディアに依存する度合は過去15年間で急激に高まった。内部的には、文書、通達、スケジューリング、プロジェクト計画、製品設計、トレーサビリティ、そして一般的なコミュニケーションを管理するために組織はソフトウエアにどっかりと依存している。

ISO9001はこれらのすべてを前電子時代の用語で記述する文言を取り入れている。電子メディアに関しての予備の備考を除けば、この技術の急激な増加、あるいは我々の生活への影響を規格は反映していない。このことが原因で、現代の組織ではあらゆる角度の問題が充満している。したがって、次回の大規模な改定を行う際にはdue diligence(当然行われるべき努力)としてよりうまく記述されるだろう。  

 これらの話題の多くは、次回の改正に関する決定がISO/TC176によってなされた時にやっと、しかもかろうじて気づかれるほどであった。 今回の修正は、2000年版の発刊と次回の改正との間を取り持つとりなしであり、うまく取り繕ってはいる。このとりなしの期間に、技術専門委員たちは、使用者のコミュニティからのインプットを要請し、データを集め分析し、継続的な妥当性と成功を確保するための次世代ISO9001規格を作り上げるための時間を持てるだろう。  

 ISO9001の将来は、二つのことに依存している。すなわち、長期間にわたって人気を支えた特性を残すこと。そして、変化を続ける私たちの世界で引き続き確実に適用することができるように定期的な改正を行うことである。

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