オモシロイ!マークはあくまで私の好みです。
■2015年
結婚にまつわる短編集と銘打たれていたけど、男女のあれこれというより、もっと別のアングルでの怖さ。
まず1話目の「崩れる」にやられました。
読み出したらぐいぐいひっぱられて、そしてあのラスト。
貫井さんてこういうストーリィを考える人だったのか。
女性目線の描写がリアルで、これを20代独身で書いたのかと思うと、すごい人なんだなと。
かなり古い作品だけど、ストーカーや公園デビューとか、今となっては普通に扱われている問題をいち早くとりあげている。
半沢直樹シリーズ4作目。前巻のラストで銀行に返り咲いたものの、やっかいな案件を押しつけられてます。
今回は航空会社の経営再建でした。
どっかできいたことありますね?
という訳で政治問題はかかわってくるわ、例の(オネエの)黒崎は出てくるわ、半沢さんたいへん!
今回は半沢視点ではなく、敵側からの視点で描かれてるので読んでいると、こんな悪人相手に大丈夫なんだろうか?
どうやって阻止するの?と期待が高まります。
これがこのシリーズの醍醐味だけどね。
今回かっこよかったのは中野渡頭取。
名字が同じ(旧姓だけど)ということをおいといても。
大人物ってかんじで、イカス!
感じとしては暗いトーンだなと、据わりの悪い気分で読んでました。
主人公が女性なんだけど、ふわっとしたところのないいろいろ疑ってかかるハードボイルドな性格。
14歳の少女も出てくるのですが、こっちもクセのある書き方で、誰にも感情移入出来ないまま読み進め、ストーリィもストーカー物?サスペンス物?と思ってたら、政治もからんできて、さらにオカルト(超能力)要素もあって、どんどんカラーが変わっていく。
そしてラスト、そうか、こうきたか、という不思議な世界観でした。
あの少女、これからどう生きていくのか・・・。
高一の主人公「僕」は自らの出生の秘密を知り、
殻に閉じこもるようになっていた、が、高校入学を期に
文芸部に入り、個性的な部員と知り合い、成長していく・・・
という物語です。
ただ、途中途中で小説の書き方がレクチャーされたり、
「僕」がいかにも中田永一さん得意な不幸力満載な少年で、
味のある作品になってます。
中村航さんは読んだこと無かったので、
どこら辺に彼の影響があるのかわからず。
機会があったら読んでみたいです。
読んでいて「あら、ネコかぶってるの?」と思うくらい
なんというか、優等生なエッセイで肩すかし。
だって、この人の小説のイメージからすると、
もっとシニカルな視線を持ってると思ったから、
あと、サービス精神も強い方なのsw、自分をオチにして
トホホな笑えるエピソードとか入れてくるのかなと思ったけど、
そういうこともなし。
取材した人達に礼儀をかかさず、なエッセイでした。(ちぇっ)
題材の選び方が「ドラえもん」とかアニメとか、
たしかにネオカルだったけど、やっぱり爪をかくした
エッセイという感は否めませんでした。
もっとこう、斬り込んで書いてくれると思ってたんだけど。
四部構成になっていて、それぞれ小さな事件が起きたりしつつ
主人公の背負った大きな流れや運命が収束に向かう。
二部のうなぎ屋さんのエピソードが良かったー。
物語の中にやさしい風が吹いたような、
風通しが良くなったエピソードだった。
それにしても、お家のためとかさ、やっぱりこの時代は大変!
森先生のエッセイを読むと、すっきりする。
感情というしがらみから離れて、
本質や根本や理論で語ってくれるから・・・だろうか?
そういう考え方してもいいんだ、と思うことがよくあります。
(以下本文抜粋)奇跡を信じるまえに、奇跡に縋らなければならない状況に陥らないことか大事だ。
当たり前の道理である。やるべきことは、状況を常に分析し、
間違いを修正し、少しでも確率を上げること。
つまり奇跡を遠ざけることが大事だ。
けっこうつらいストーリィです。
いつもの軽妙な色がうすく、人間ってこわいなぁ、という世界が描かれてるのですが、これ大げさに書かれてるけど、実際のこの世界(現代)だって、ちょっと歯車がずれたらこうなっててもおかしくないというリアルさがある。
ネット世界の監視システムの怖さは、よくこの作者書きますよね。
「ゴールデンスランバー」とか。
正しいことをする人が偽善と呼ばれて叩かれる世界なんてまちがってる。
でも、困っている人を全部助けることは不可能、それなら営業活動だ!っていうのは新しい視点。
すっと風穴が通った気分。(以下本文抜粋)
田原、という名前の人間は僕の常連客の中にはいなかった。
田原くんは助けられない。僕は言葉には出さなかったが、
内心で強く言い切っている。
全員は無理なのだ。全員を助けようとしてはいけない。
貴前者め!何者かが、僕に向かって怒ってるような気持ちになる。
これは善行ではなく、営業活動なのだ、と自らに言い聞かせる。
あいかわらずエッジの効いた作品集です。
タイトル通り5編の短編。
さりげなくぐさっと刺さる言葉立ち。
真実と思われる言葉をさらりと言わせちゃうのがすごい。
「美しい馬の地」:流産が気になってしょうがない男がその怒りや衝動とどう折り合いを付けるのか。
「アユの嫁」:姉がアユに嫁いでしまった妹目線の物語。アユが神様っぽい。
「四点リレー怪談」:舞城さんぽいなぁと思った作品。
探偵がいきなり出てきたりパラレルワールドっぽかったり。
「バーベル・ザ・バーバリアン」:人をバーベルにしちゃいけません。
「あうだうだう」:私の好きな舞城ワールド。
あうだうだうを退治する女の子のブレなさ、出てくる人達の不器用さと正直さがいとおしい、と思いました。(以下本文抜粋)
「悪はなくなる必要ないよ」
「何で?」
「ほやさけ、この世の一部やでって」
「もう・・・・」
堂々巡りだ。
「悪をなくすことが善ってことではないんやで?」
「トオリヌケキンシ」を読んでいたときに、書いた本人も大病を煩っていた事を知り、
その時のエッセイがあるというのでとりよせた、それがこの本。
病名は白血病でした。
知り合いにこの病気になった人がいたので(現在は退院し自宅療養中)そのお見舞いに行ったときのことなど思い出しながら読んだ。
「ささらさや」のイメージがあったからか、この作者、おとなしく内向的なイメージを持っていたけど、本書を読んでイメージ変わりました。
おとなしくなかったとかそういうのではなく、ああ、強い人なんだ、と。
へこたれず、前向きで努力を惜しまない人。
入院中にやっていることを読めばわかります。
心に響く言葉がいろいろありました。
そしてその言葉をこうして読むことが出来るのも、ちょっとした奇跡なんだなと思う。
これからもこの人の書く物語が読めることになってほんとによかったと思います。(以下本文抜粋)
私は幸せだ。本を読んだり、漫画を読んだり、アニメを視たり、どんなときでも物語に熱中し、別の世界に耽溺できる喜びを知っている。
小説を書くこともまた、そうだろう。
それは決して現実からの逃避などではなく、ただ無限に世界が、波紋のように拡がっていうということだ。
内に向かうばかりがオタクじゃない。世界中どこにでもつながっている無限の海に果敢に漕ぎ出していく・・・否定ではなく肯定のため、批評ではなくやだ純粋に楽しむため。
それが私のオタク道だ。
特殊な左目を手に入れた主人公幸太郎の捜査がはじまる。
そして元刑事都築の足を使った地道な捜査により、連続殺人事件が真の姿を見せ始める。
それにしても、各事件のおそろしいことよ・・。
人間て怖いことするなぁと、ゾッとする。
『領域ーリュージョンー』で幸太郎を待ち受ける出来事、「英雄の書」での禍根を昇華させたというか、もうひとつのラスト、という感じかしました。
ネットは言葉が見え、蓄積される場所だと言うこと、書き込んでスクロールされて、自分は忘れてしまってもずっと蓄積されている、消えたわけじゃないということをみんなもっと心にきざまないと、と思います。
死体の一部が失われた状態の死体の発見、それに関わることになる主人公の大学生と元刑事という序盤からなんとなく「模倣犯」のような展開をするのかと思っていたら、中盤でおどろきの展開で「英雄の書」の世界につながりました。
そんな代表作の融合のような物語。
後半でユーリも出てきてすっかり「英雄の書」寄りになりました。
幸太郎(主人公)のアルバイト先クマーは現代っぽいですね。
ネット世界の風紀委員みたいな?
あと、ガラのビジュアルがかっこいい、ゲームキャラみたい。
この人のエッセイは共感しやすいと思っていたけど、今回はあんまり・・・。
かまえすぎだよねぇ、と思ってしまいました。
こうなりたい、こうだったら、と過去に出来なかったことふり返ってもなぁ・・・、と。
しかも恋愛がらみの希望が多いし。
私は女子校だったこともあってあまりそういう願望なかったので。
女の子の友達ときゃっきゃしてるので十分楽しかったけど、共学だったらもっと男子の目を気にしていろいろ考えたのかな?
中短編集。どれも佳作。
とても心に響く、しみいるような物語。
読んでいて、以前と印象が変わった気がした。
やたらいろんな病気に詳しくて、病院の内情にも詳しい、もしやと思ったら、その通りでした。
トオリニケキンシ:
男の子と口の悪い女の子の出会いの話。
平穏で平凡で幸運な人生:
思った形を瞬時に見つける能力を持った女子高生のその後。このお話、読後感がよかった。
空蝉:
読むのがキツくなるような出来事、そして後にトラウマの真相を知る男の子。
フーアーユー:顔を認識できない高校生男子の恋のお話。
座敷童子と兎と亀と:
このお母さん、作者っぽい?読み終わると、タイトルの後ろに鶴もつけたくなりますね。
この出口のない閉ざされた部屋で:
ラストの物語ということもあり、前話に出てきた人達がちょっとづつ顔を出すサプライズあり。作者の体験がもっともいきた作品なのかも。。。(以下本文抜粋)
人は病む。人は苦しむ。人は死ぬ。
老病死はすべての人間に等しく降りかかると言うが、それは完全なる間違いだ。
(中略)
真に等しいのは、人はこの世に生を受け、そして遅かれ早かれいつか死ぬ、ただそのふたつだけ。
かくも世界とは、不平等で不合理に満ちている。
群ようこ「欲と収納」
私も物が多い生活をおくっているので、最初は自責の気持ちで
読み進んでいたのですが、途中から悲しくなってきました。
「捨てた」「処分した」とういう文字のオンパレードに。
多くの物を持つ者にとって整理や収納とはまず、物を減らすこと。
だから、仕方ないとはいえ、あまりにも捨てた表現が多くて、
その書き方に未練が感じられなくて、悲しくなった。
親に物をねだられ、買った物をぞんざいに扱われ、
そして自分も簡単に物を買い買いすぎて捨てる・
人がいきなり小金を持つと幸せじゃないのかも、とさえ思った。
買っても、いい、でもせめてもっと未練や愛情を持って
処分して欲しかった。
せいせいした、みたいに書いて欲しくなかった。(本文抜粋)
物をたくさん持っていることを、心から楽しめる人。
私のように踏ん切りが付かず、迷ってる人間が
いちばん面倒くさいのである。
読後、タイトルとは反対に
「この人、努力しかしてないじゃん」
と思いましたが、すぐに
「あ、そうか、この人にとってはあれらは努力じゃないんだ・・・
だからこのタイトルか!」
と合点がいって、その執念に言葉を無くす。
好きなことを職業にするって、これほどの覚悟が必要なんですね。
「十年後の卒業文集」「二十年後の宿題」「十五年後の補習」「一年後の連絡網」
それぞれ別の話ですが、共通しているのはすべて手紙のやり取りだけで、物語が進んでいくということ。
友人どうし、先生と元生徒、恋人どうし、いろいろな関係が手紙の中で解き明かされる。
すこしミステリっぽい「十五年後〜」がいちばん惹かれました。
あの展開の後にあのラスト、よかった。
読み終わり、25人の物語を知り、
「さて、自分はどのタイプ?」と目次を見ながら考えたら、しほりん、でした。
そして、この子好きだなぁと思ったのは陸くんと理緒、あとちょっとレイミーも・・・。
そして忘れちゃならないのが担任の藤田先生。
なにがいいって、最終的に自分が顧問やってる水泳部に問題をかかえた生徒を勧誘して解決しちゃうとこ。
強引そうだけど効果でてるのがすごいよね?
中学生とその世界をリアルに描ききってる、と思います。
2冊セットのこの本、前期後期に分かれて、24人のクラスメイト1人1人の視点から中一の1年間が語られます。
読みながら「ああ、こういう子いたいた!」とと何度か思いました。
あと「こういう気持ちになったわー」という懐かしい気持ち。
中学生の頃って、今思うとすごく狭い。
そんな中でぐるぐると四苦八苦しながら過ごしてたんだなと。
成長していく生徒がいとおしく懐かしくなる。
文庫のオビのコピーからストーカーものだということはわかっていたけど、やっぱりというか、それだけではありませんでした。
主人公が銀行から出向してきてる会社であやしい動きがあったり、と、得意分野の話もからめて、ラストいろいろな謎がわかるわけですが、犯人たちのバックグラウンドをきちんと説明してるのがさすがという感じ。
犯人がわかっておわり、じゃなくて、どういう経緯でそんなことをしたのかを知ることで世界に深みが出るんですよね。
本はずいぶん以前に買ってたのですが、映画化されてCMをみかけるようになって、うっかりネタバレみちゃったらたまらない、あせって読んだ。
純粋なスパイものでした。
子供の頃あこがれたスパイのイメージがさらにストイックになってて「スパイってなんかっこいい」というイメージが「スパイってたいへんそう」になりました。
こんなしんどくて大変そうなこと、なぜ好きこのんでやってるんだろう、この人たちは・・・と思わずにいられない。
でも、その答えは本文に何度かでてきました。自分はこの程度は当然できなくてはならない。
という命題を自分に証明するために、
文字通りどんなことでも顔色一つ変えずにやってのける。
(本文抜粋)つまり、自分のプライドため、なんですね。
短編集でいろんなタイプのスパイ活動がえがかれていて、読み出すと、虜になります。
日本人挑戦者がチャンピオンに挑んでいた夜、街では出会いがあった。
2話目はそれと関係ないようでいて大アリだったり。
3話目は1話目の話題でちょっと出てきた人が語り手になった不思議な出会いの話と記帳の謎。
4話目は「どなたの娘さん」作戦の使い方がうまかった。
5話目は復讐の話。女子のいじわるって怖いよね。
復讐しないことが復讐になるとか。
ラストの「ナハトムジーク」ではすべての流れを説明しつつ収束に向かう、時系列がいったりきたりするので、
時々ページをもどりながら読んだ。
主軸はボクサーの話だけど、他の話に登場した織田家の3人がちょいちょい顔出すのが楽しい。
ラウンドボーイのサインとか、まったくうまいところであのエピソードもってくるな、と気持ち良く腑に落ちる。
そして、ラスト、口パクの話。
そして物語は続く、というようなベストなラストでした。
自分のことアニメ好きな方だと思っていたけど、この本読んだらまだまだだなーと思った。
私はただおもしろくみてただけで、監督や声優や作画者の名前とか気にしたことないもんね。
4編からなるアニメを作ってる世界の物語。
プロデューサーと監督「王子と猛獣使い」、監督とプロデューサー「女王様と風見鶏」、動画原作と公務員(地方の広報担当者)「軍隊アリと公務員」そしてラストの「この世はサーカス」を通じて、アニメにかかわる人達のいろんな内情が伝わってきた。
おもしろかった!
キャラが個性的で魅力的。
うまいなと思ったのは「女王様と風見鶏」に出てきた声優のイメージが見方で反転したところ。うまいな。
アララギくんの本当の卒業式、なんだろうな。
これで気がかりなく次のステージに行ける・・・という。
私が最近お気に入りの斧乃木余接ちゃんがそこそこ活躍してくれたので、楽しくて読み応えありました。
鏡の概念って、考えれば考えるほど、頭がこんがらがってくる。
不思議な世界です。
┃Index┃