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オモシロイ!マークはあくまで私の好みです。


2013年



恩田陸「夜の底は柔らかな幻 下」

ホラーなのか、ミステリーなのか、SFなのか、と思って読んでいましたが、読了して、ホラーに分類しました。
下巻はかなりホラーです。
ラストの余韻もホラーっぽかった。
しかし、ぞっとする怖さではなく、しんと考えさせられる怖さです。
幸せになった人が殆どいないラストで、葛城は幸せでしたね。
実邦もそう、かな?
ソクになった人々は・・・どうなんだろ?わかりません。
「ぼく」はさびしくないと、満足していると言っているけれど。
ところでソクって即神成仏(肉身のまま究極の悟りを開く)から来てますね?



恩田陸「夜の底は柔らかな幻 上」

列車で「途鎖」に入っていくところから始まる。
「途鎖」「闇月」「在色者」「イロ」「ヌキ」「タマゲ」など、はじめて見る単語ばかりなのに、その説明はされない。
読み進めて雰囲気で理解していく感じ、でもその単語の作り方はとてもこの作者らしい。
「在色者」なんてESPとか超能力者ですませちゃうとこですよ、普通。
そこをこういう言葉を持ってくる。
和風なところも物語全体のトーンにすごく合っている。
後半にでてくる水晶の幻想的なイメージ、映像化したら綺麗だろうなと思った。
是非見てみたい。
誰か、映像化してくれないものか。



池井戸潤「ロスジェネの逆襲」

半沢直樹シリーズ3作目。
出向先の東京セントラル証券でのお話しです。
ロスジェネ世代の森山が半沢の部下としていい働きをしてます。
ロスジェネってバブル後の就職氷河期の入社組だそうで、「バブルの奴らめ」「わりくった」みたいな世代で、そこを生き抜いて入社した生え抜きでもあるわけですが、証券会社なので、内容は株と買収。
ライブドアのM&A、思い出しました。
中野渡頭取、ラストで良いこと言ってましたよ。
本物(半沢)はどこにいっても輝く、みたいなこと。
ということで次作、銀行にもどった半沢がどうなっていくのか、楽しみです。(ちなみに今回花ちゃんは出番なしでした)



奥田英朗「噂の女」

ある女性の立身出世の物語。
本人じゃなく、その時々にかかわった他人が語るんだけど、その度に“噂の女”がグレードアップしていて、
どこまでいくのか、惹きつけられる。
ちょっと怖い(ブラックな世界)けど読んでると、だんだん天晴れ!という気分になってくる。
私からすると、けして幸せになってるとは思えないんだけど、だからって不幸でもないだろうな、とも思う。
女1人、自分の力量だけでのし上がって生きていくのは大変。
ひとつの天晴れな生き方の見本です。



大泉洋「大泉エッセイ 僕が綴った16年」

ご存じ大泉さんのエッセイ集です。
タイトル通り現在(2013年)から16年前のことが綴られています。
楽しみにしていた「水どう」のウラ話は少なめでしたが、読んでいると、若き日の大泉洋の人となりがじんわり伝わってきます。
青臭いとこもあったりして、興味深いです。
希望を言えば、ラストにあった「水どう」裏話がおもしろかったので、もっとそこんとこ増やして欲しかったなぁと。



近藤史恵「シフォン・リボン・シフォン」

小さな街のシャッター商店街にできた下着専門店にまつわるお話し。
女性にとって下着という存在がどういうものか、ちょっと考えさせられる。
下着というとエロティックなイメージを抱きがちだけど、よく思いかえしてみれば、もっと根本的なところを支えている。
あと、小さい街のお話しと言うことで、介護の話もからんでます。
読んで、風穴があきました。
ちょっとした考え方で、少し風通し良くなりました。



近藤史恵「はぶらし」

子連れの旧友を泊めることになって起こるいろいろ。
タイトルにもあったはぶらしのエピソードが不穏で、旧友の不気味な内面を示唆している。
ああ、この女性、ずれてるんだなとこれでわかる。
でも、ラストの章で息子が出てきて、その不安定さが明かされ、けれど救いのある事実を知ることになる。
すくなくとも、主人公の気持ちは伝わっていたのかな、と。
何も盗まれていなかったということで)←ネタバレ



舞城王太郎「キミトピア」

7編の短編集です。
まず、一番手の「やさしナリン」でぐっときました。
そうか、そうだなーって。
名前をつけて認識させ向き合うという手法、ありそうでなかったかも。
その名前が「やさしナリン」って、アドレナリンみたいにでてくる「やさしナリン」だって、おもしろいね。
「ンポ先輩」は女子にありがちな諍いを掘り下げてて、それがまたマイジョウっぽいなぁと思う作品でした。
「真夜中のブラブラ蜂」でも思ったけど、みんな、向き合う人達の話だ。
信じて、まっすぐ向き合うって大事!



宮部みゆき「ばんば憑き」

江戸時代って、なにげにキツイってことがじわっとわかる。
生まれの差とかで、強者弱者(身分)がきっちりできていて、それは抗いようのないことという世界で生きてる人々。
「お文の影」では「日暮らし」の政五郎とおでこちゃんが出てくるし、「討債鬼」では「あんじゅう」の青野利一朗&悪ガキ3人組が出てきたりと他の宮部作品を読んでいると楽しさ2倍かも。



小野不由美「丕緒の鳥 (十二国記 シリーズ)」

待ちに待った(12年ぶり)十二国記最新作。
-本書は、名も無き民草による、声無き声の物語である-
とのことで、王近辺の物語ではなく、民の側の物語でした。
4つの短編集ですが、切り口がそれそれでその分世界観の厚みが感じられて、さすがという感じ。
王と麒麟の先がとっても気になりますが。
世界観を再確認するという点ではとても参考になりました。



瀬尾まいこ「あと少し、もう少し」

中学生駅伝のお話しでした。
1区から6区まで、走者がそれぞれの立場や陸上部の
ことを語る・・・たすきをつなぐよう語り手もバトンタッチしていきます。
その時の語り手にはわかり得ないことを次の走者(語り手)が補ってくれたりするので、多角的に陸上部の人間関係が読めておもしろい。
なかでも2区の太田くん、よかったですね。
中学生ってこんな考え方しちゃうんだよねーってとこが。
あと、顧問の女教師がちょいちょいいいとこ見せてました。
瀬尾さんの本は読後感が良くて、ハズレがないです。



森博嗣「スカル・ブレーカ」

ゼンが都へ近づく、そしてゼンの秘密もずいぶんあらわになった。
そんな3作目です。
読んでいると、しんとした透き通った気分になって、気持ちよかったです。
とてもシンプルで素直な世界。
今回はヤナギという侍がよい感じにゼンを導いていました。
脇役ではノギ(三味線弾きの)の他に、ナナシがずいぶん活躍した回でした。



恩田陸「私と踊って」

短編集です。
いろんなお話しの詰め合わせ。
この作者の場合、人物の気持ちをよむというより、その場の空気とか雰囲気とかを読んでいく感じ、映像や匂いがただよってくるような文章です。
とくにミステリ風の「心変わり」は好みでした、他に、あとがきで一作一作にふれていて、
読んだ後さらに楽しめました。
あとがきの後にある、「東京の日記」もぞくぞくしてよかった。



綿矢りさ「憤死」

「おとな」「トイレの懺悔室」とちょっと気分悪い話が続いたあとの「憤死」は不思議なパンチ力がありました。
憤死ってヒステリーのすごいやつ?と思いました。
それを見つめる語り手の女性のシニカルな視線・・・なんとなく身に覚えがあって、私もわりと人をそういう感じで見つめているので、ドキリとしました。
ラストの「人生ゲーム」は不思議なお話し。
わかるって怖いですね。



伊坂幸太郎「ガソリン生活」

読みながら、やばいなーとおもいました。
こんなん読んだら、今後車に感情移入しちゃうよ!って。
駐車場にとまってる車を見て、隣同士でお話ししてるのかな?
とか思うメルヘンな人になっちゃうってば。
とまぁ、語り手が車のデミオくんなのですが、1人の女優さんを乗せたことからデミオくんと
その家族が事件に巻き込まれます。
家族みんな個性的ですが、とくに沈着冷静な弟くんが光ってました。
あと、ラストよかったです。
「おしまい」て。



綿矢りさ「しょうがの味は熱い」

表題作と「自然にとてもスムーズに」の2編。
「自然に〜」は「しょうが〜」の続編です。
しょうがでいったんまとまりかけた2人にまた波紋が。
女性パートと男性パートで語られるのを読んでいると、つくづく、男と女って考え方が違う生物なんだなーと思う。
こうやって相容れないままそれでも続いていくのが男女の不思議、そして機微?



西尾維新「憑物語」

阿良木くんにある異変があらわれて、いろいろあるのですが、それに気づくまでの妹とのいちゃいちゃ、そんなに必要?長すぎない?
いよいよむかえる(らしい)クライマックスに向けて、おもいきりもったいぶられた感じがしました。
会話ばかりなので。



中田永一「吉祥寺の朝日奈くん」

5編の短編集でした。
「吉祥寺の朝日奈くん」はタイトル通り吉祥寺が舞台で、知ってるお店が出てきて、メンチいいなーとか、ちょっと横道(?)の楽しみもあったり。
ストーリーも5編の中でもいちばんヒネリ効いてて、がんばればミステリータッチといえるかも?
あとは「うるさいおなか」が印象に残りました。
タイトルもまんまでおもしろいし。
「ラクガキをめぐる冒険」もラストよかったです。
素直におとさないところが。



星野源「そして生活はつづく」

最近、個人的に注目している星野源さんのエッセイ集。
今さらですが、大人計画の人だったのですね。
どおりで個性的というか、ちょっと変というか・・・。
お母さんのようこちゃんの話がかわいらしくてよかったです。
お風呂で、吸い込まれちゃう〜助けて〜、ってやつ、想像してほのぼのしました。



村上春樹「サラダ好きなライオン」村上ラジオ3

ananに連載されたものをまとめたエッセイ集。
おもいしろいです。
意見がおしつけがましくなく、むしろほほえましいエピソード満載で豆知識もちょいちょいあって、エッセイとはこうあるべき、という気持ちよい読後感でした。



銀色夏生「自分の体を好きになりたい」つれづれノート23

好きなわけではないけれど、どうしても読んでしまうシリーズ。
たぶんリアルだから。
出てくる地名も身近だし、だからか気持ちの表現もすごく伝わってくる。
そのリアルさに惹かれるんだろうな。
考え方とかは、共感できないんですけど、自分と同じ考えのエッセイばかり読んでもつまんないですもんね。



益田ミリ「最初のひとくち」

タイトル通り、食べ物や飲み物を最初に口にした時の思い出。
その時の印象や、状況をエッセイにしたもの。
ありそうでなかった分野かもしれないです。
最初のひとくちなんて、印象的なものはすこしだけ覚えているけど、本1冊分なんて、そんなに覚えていないです。
少なくとも私は。
たしかにそれは子供の頃食べたことある、と思うけどどう思ったかまでは・・・。
ということで、よく覚えているなぁ、と思いながら読みました。



益田ミリ「銀座缶詰」

すーちゃんシリーズの作者のエッセイ集です。
最近の内容で、震災のことなんかも書かれています。
女子と言うにはちょっと恥ずかしい40代の日々。
あるある、と頷いたり、あれ?と思ったり、近くに寄り添う感じで読了しました。
読んで、真面目でしっかりした人なんだなぁという印象をうけました。
あれ?と思ったことをうやむやにしない真面目さ。
私なんかだと、そんなもんかーとぼんやり見過ごしてしまうことが多いのですが、もう少し踏み込んで考えるようにしたほうがいいかも、と思いました。



森絵都「気分上々」

短編集でした。
ずいぶん昔の作品から最近の作品まで。
長編では、骨太な小説になったなという印象を持っていたので、今回入っていた、高校生を主人公した短編は懐かしかった。
「17レボリューション」が特に良くて、主人公の「イキが良いか悪いか」で付き合う相手を決めるって斬新だなーと、そしてその後の展開の微笑ましいこと!
で、骨太になった(?)最近にかかれた、表題作にもなってる「気分上々」ですが、こちらも高校生が主人公で、明るいタッチの健全さを確認。
おもしろかったー!
骨太なずっしりした作品も良いけど、こっちよりの元気が出るような作品ももっと出して欲しいと、この作品集を読んでますます切望しました。



本多孝好「ストレイヤーズ・クロニクル Act-2」

Act-2が出る頃にはAct-1の内容を忘れている、というパターンでしたが、読みながら思い出しました。
ストーリィが個性的なので、わりとすぐその世界観にもどった。
今回はなんといっても昴(スバル)くんの能力がやっとわかったというのが大きいですね。
すごいのか、すごくないのか、(たぶんものすごいんですけど)まだその真価は発揮されていないようですが。
対するアゲハチームもバックグラウンドが切なかったです。
どう決着がつくか、Act-3への期待が高まりました。



伊坂幸太郎「残り全部バケーション」

オムニバス短編集になるのでしょうか?
1作目に登場した岡田くんがキーパーソンとなって、1編1編は独立したストーリーなのに、最終的にそれぞれのピースが集まるとまた別の絵が見えてくる。
こういう構造好きです。しびれます。(ラストが特に)
「レバーをドライブに入れておけばあとは勝手に進む」んですね。
特に好きだったのは「タキオン作戦」。
今後ターミーネーターを見るたびにニヤッとしてしまいそうです。
あと、アドバルーンとかの使い方がうまいなぁ。
「飛べても8分」の「飛べるなら飛ぶ方がいいだろう」的な会話も楽しかった。



宮部みゆき「ソロモンの偽証 第3部」

ついに裁判開廷。
検事側、弁護側でのやり取りが始まる。
おもしろいと思ったのは、証人は質問に答えるだけで、自ら発言したいことを言えないと言うこと。
気持ちの上では被告に友好的でも検事の質問に答えると被告に不利な印象を与えてしまう、とか。
最後の証人があらわれてからのラストスパートはさすがの展開で、三宅さんの件もここできれいに終わることができてすっきり。
欲を言えば、後日談をもうすこし詳しく、多く書いて欲しかった。



宮部みゆき「ソロモンの偽証 第2部」

真実を知りたい!という気持ちがついに動き出し、学校裁判という形になった。
1部では大人達がぐじぐじあとまわしにしていた件を、この2部では生徒達がどんどん踏み込んで操作していく、それが小気味よかった。
裁判の新メンバーに他校の生徒も加わり、これで主要メンバーが出そろったようです。
第3部で明かされる真実が早く知りたいです。



宮部みゆき「ソロモンの偽証 第1部」

読み始めてすぐに、つかまれました。
おもしろい!
中学生がイブの翌日死体となって発見され、やがて事件になるわけだけど、そのまわりの人々の心情が細やかに描かれていて、それぞれの言い分があって、それぞれ納得できて、
作者の人物造形の深さに驚嘆!
ひとつ事件がまたひとつの事件を招き寄せる仕組みをいろんな人物に語らせることによって浮かび上がらせる、展開の巧みさとか。
3部までありますが、わたしはこの1部がいちばん好きです。



伊坂幸太郎「夜の国のクーパー」

「小説」と呼ぶより「物語」と呼びたくなる1冊。そんな世界。
猫のトム君の語るクーパーの話が不思議で、読みながら、これは「スープの石」みたいな顛末かなぁと漠然と思っていたのですが、違うところに着地したのが逆にすごくて、つじつま合っていておもしろい・・・ですけど、この作者の力量を思うと、もっとおもしろくできたんじゃないかと、
欲張りなことを思ってしまいました。
あと、カバーがいまいち。
もっと内容に沿ったわくわくするデザインにできそうなのに!
もったいないことです。



中田永一「くちびるに歌を」

綺麗で人当たりよいけど、本性は口の悪い女の子と、おとなしくて、自分の事を空気だと思っているような男の子のカップリング、この作者の得意分野ですよね。
学校の合唱部をめぐる物語。
合唱ってなつかしい、そういえば校内の合唱コンクールとかみんな熱くなっていたなぁと当時のこと思い出しました。
とにかく必死!になっちゃう生徒達がかわいらしくなつかしい。
恋や未来や家族のこと、大変だけど、清々しいラストに救われました。



森博嗣「ジグβは神ですか」

S&MシリーズとVシリーズが、そしてもしかしたらあのシリーズ(女王)にもつながっている?
と思われる、ファンにはたまらない仕掛けがいろいろでした。
ラッピングされた女性の死体というのはローラパーマーを思い出しますね?そういえばあの犯人は・・・。
ラストの睦子さんとの対談もおまけっぽくて良かったです。
楽しめましたー!


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