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オモシロイ!マークはあくまで私の好みです。


2009年



北村薫「野球の国のアリス」

タイトル通り、鏡をくぐって(ちょっと変な)野球の国へ行ってしまった
アリス(ヒロイン)の物語。
女の子が野球を続けるって大変なんだなー、と「クロスゲーム(あだち充)」のことなど連想しながら読みました。
でもアリスの、受け止めるところは受け止め、今の自分にできる精一杯のことをするという姿勢が、迷いがなく清々しくてよかった。
バッテリーを組む兵頭くんや、ライバル五堂くん、そして前の世界とはちがう役割で登場の安西くんなど、脇役もみんなよかった。さすがです。



恩田陸「六月の夜と昼のあわいに」

詩的な短編集。
音楽を聴いているように流れてゆくストーリィ。
印象に残ったのは「窯変・田久保順子」。
アンチ「フィッシュストーリィ(伊坂幸太郎)」みたいと思いました。



恩田陸「訪問者」

古い洋館の中での、長い一夜。
「皆を集めてさてと言い」みたいな設定は得意とするところなのでしょうか?
最初タイトルが地味に感じていたので、作中で語られている「象を撫でる」の方が良いんじゃない?と思いましたが、中盤からは、なるほどやっぱり「訪問者」だよねと納得。
ラストの老人の処理はちょっと不可解でした。
無縁仏って・・・。



宮部みゆき「英雄の書 下」

“朝(あした)に1人の子供が子供を殺す世界は夕べに万の軍勢が殺戮に走る世界と等しい”

ユーリの冒険はちょっと悲しい結末で幕を閉じました。
ちょっと厳しいなと思いましたが、やはり冒頭の句のとおり、そこはゆずれないところなんでしょうね。
どの世界にあっても命の重さは同じ!
読んでいるときは、ご都合主義っぽい展開や唐突な魔導の世界にとまどいました。
もうすこし現実世界の比重が多いとよかったなー。。。



宮部みゆき「英雄の書 上」

ブレイブストーリィのようなあっちの世界に行きっぱなしの話しになるかと思っていたらそうでもなく、現代との行き来やリンクがおもしろかった。
殺人を起こし行方不明になった兄を捜して旅に出る妹がヒロイン。この殺人事件がミステリーパートで、捜す旅がファンタジーパート。
あと、本が擬人化されているのが、本好きには興味深かったです。



天野頒子「恋する死体」

【警視庁幽霊係】シリーズ2作目です。
幽霊が見える主人公の他に、サイコメトラーや、写真を見るとその人の生死がわかるとか、犬と話せるなど、次々特殊能力を持ったメンバーが出てきて、おもしろい!
犬に事情聴取って。w
それぞれの能力をなしとしても個性的でキャラが立ってるし、ミステリ&超能力好きにはたまらないシリーズ。
次作も楽しみです。



よしもとばなな「彼女について」

今までの作品は普通の人がいきなりスピリチュアルなことをしゃべり出すので違和感があったけど、今回の【魔女の孫】という設定なら、逆に自然。
すんなりハマった。
なんというか、人間て自分の信じたいもの(こと)を無意識により分けて見聞きしてしまうんだなと。
そんなんなことを考えました。
自分の脳に自分が騙される・・・か。



浦賀和宏「生まれ来る子供たちのために」

やっと長い物語が終焉をむかえました。
前巻でうすうす感づいてはいましたが、見事なまでのバッドエンド。
こうするしかなかったんだな、とは思いましたがここまでやったか・・・。
私はこのシリーズで忍耐を学びました。



浦賀和宏「地球人類最後の事件」

冤罪事件でまたこじれる剛士の心と人間関係。
いよいよラストスパートに入ったのか、今までになくリーダビリティは良かったのですが、明るく終わる未来・・・という気配がちっともありません。
大丈夫!?



ジル・チャーチル「カオスの商人」

ジェーンシリーズ10作目。
今作ではクリスマスを迎える準備で大忙しのジェーンです。
でもこのクリスマスの様子が楽しそう!
クッキーパーティ(趣向を凝らしたクッキーを持ちより交換する)やたくさんのプレゼントをラッピングしたり、そんな色とりどり風景を想像するだけでこちらもワクワクしてきます。
そしてシェリィ戸のやりとり&メルとの関係、シリーズ読者にとってまさにクリスマスプレゼントのように、お楽しみ満載の1作でした。



ジル・チャーチル「飛ぶのがフライ」

ジェーンシリーズ9作目。
前作から5年も待たされましたが、待った甲斐ありました。
今回は家から離れた場所での事件。
こども達の出番はほとんどなく、ジェーンとシェリィのかけあいが存分に楽しめました。
事件そのものはアレですが、このかけあいいっぱいの会話文があるだけで満足なんです。



奥田英明「ウランバーナの森」

ジョンレノンをモデルに、実際に彼が軽井沢に滞在していたときのことを、フィクションとして書いています。
その後発表されたジョンのアルバムが家族愛を歌ったもので、そこにいたるまでのその癒しはどこから?ということを日本の夏のお盆をからめて。
ちょっと独特の雰囲気があります。
向き合わなければならないことが起こった時、逃げずにきちんと向き合うことによって、成長と安寧を手中のするのかもと思いました。



森絵都「架空の球を追う」

舞台が日本だったり海外だったり、登場人物も多種多様。
と、統一感のない短編集のように思えたが、読み終わると不思議な共通点があることに気づく。
それは一言では言えない複雑な感情。
喜怒哀楽なんて言葉では言い表せない「気持ち」がここにある。

タクシーの運転手とカップルのやりとりがおもしろい「あの角を過ぎたところに」と、姉妹の複雑な関係を描いた「二人姉妹」がお気に入り。
ワインを落としたイギリス人のお話「彼らが失ったものと失わなかったもの」は深かった。。。
短いストーリィに複雑な感情がつまっている。
深みのある短編集でした。



北村薫「玻璃の天」

「幻の橋」「想夫恋」「玻璃の天」の3編収録。
ベッキーさんシリーズ2作目ですが、もともとベッキーさんの出番は少なく、また100%探偵役というわけでもなく、英子お嬢様がきちんと推理しているのが見どころ。
彼女がいろんな事件を通じて成長していく姿こそがこのシリーズの柱になるのだと思います。



森博嗣「森博嗣の道具箱(TOOL BOX)」

道具(工業製品)について語ったエッセイ。
どれも視点が通り一遍じゃなく、だからこそツールオンチ(工具とかよくわかりません)が読んでもおもしろく、そして考えさせられる。
「人がものを作るときの最も大きなハードルとはそれを作る決心をすることだ。自分にそれが作れると信じることなのである。それさえ乗り越えれば、もうあとには、努力という誰にでもできる退屈なルーチンが待っているだけだ。そして、完成させることで証明されるのは、最初の決心の正しさにほかならない」
↑森先生らしいでしょ?



若竹七海「バベル島」

未収録の作品からホラー的要素を含むものを集めた文庫オリジナルの短編集。
ミステリ要素の強いものもあり、単純なホラーより、さらに深く入り込んでしまうぶん怖さが募る。
そんな奥行きのある短編集になっています。
表題にもなっている「バベル島」はイメージも構成も印象に残りました。



奥田英明「サウズバウンド 下」

沖縄編になり、お父さん大活躍。
それはもう神話的と言って良いほどの。
新たに登場する脇役もいい。調子よい外人ベニーとか、同級生の女の子とか。
家族って特に意識してわかりあおうとしなくてよい、いちばん身近なコミュニティーなのかな。
気持ちよいラストもよかったです。



奥田英明「サウズバウンド 上」

親を選べないってなんて難儀なんだろ、と。
そして子供って不便だなー、と思ったけど、後半の従兄弟達とのハンバーグのやりとりには、やっぱり子供時代って思考が凝り固まってなく修正がきいて、いろんなことが新鮮でいいな、とも思ったり。
でも本当は、子供とか大人とか関係なくて、その時その時どう判断して進んでいくかが大事なのか・・・。



草野たき「ハーフ」

ヨウコという犬を母親だと言われて育った少年・真治。
もうそんなこと信じる年じゃない、けれど・・・という葛藤を抱えつつ、そんな特殊な環境の中、必死でバランスをとろうと頑張っていて、切なくなる。
でも、もっと偉いのは三浦さん。格好良すぎてあこがれます。
この人達がしあわせに暮らしていけますように、と祈りたい気持ちになりました。
それにしても、動物が出てくるお話しは切なくなる。
人間より寿命が短いというだけで、どうしてこんなに切なくなるのだろう。



「武ログ 織田信長の天下布武日記」

信長がブログで合戦のこととかUPしてました。
もちろん現代口調で☆
ので、とっても読みやすいです。そしておもしろい。
真面目に歴史の勉強をしたい人にはお勧めできませんが、復習する分には良いかもですよ?w
いろいろ印象が強まるし。ブログ形式なのでコメント覧に、秀吉や家康それに明智光秀などの書き込みもあり、キャラの立ちぷりがみごとです。



赤川次郎「柿色のベビーベッド」

爽香36歳の事件。読むだけでも疲れてしまうくらいのもろもろの出来事をさばいていく爽香はもうスーパーウーマン。
後半いろいろうまくことが進んで気持ちよく「つづく」かな?と思いきや、いろいろな種を蒔いて続いちゃいました。
37歳も大変そうです。。。



乙一「失はれる物語」(再読)

再読ですが、文庫で読んだお話しもあったので再々読のものも。
「マリアの指」のラスト、指輪をはめるシーンが印象に残った。
ラストすっかり忘れていたけど、もう忘れない・・・と思います。



北村薫「1950年のバックトス」

言葉遊びというと品がよいけど、けっきょくは駄洒落。
さむーくなるものや心があたたまるような、いろんな駄洒落満載。
いろんなトーンの短編がつまっています。
宮部(みゆき)さんの話題がでてくる「真夜中のダッフルコート」とか、本読みなら気になる「万華鏡」、読了後しっとり明るい気持ちになった「ほたてステーキと鰻」が印象に残りました。



石田衣良「1ポンドの悲しみ」

恋愛は幸せすぎるとすこし悲しい。
・・・と思わせられるそんなお話のつまった短編集。
1編めの「ふたりの名前」でじーんときて(←猫がからむ話に弱い)
「声を探しに」が地味だけど、好きでした。



奥田英明「家日和」

家(ファミリー)をめぐる短編集。
どうなっちゃうの?と思っても、ラストにはピタッと心地よくおさまる安定感あり、ページをめくるのが楽しくなります。
特に好きなのは「家においでよ」。
ラストも含め、始終楽しそうな雰囲気が好き。
「妻と玄米御飯」ではロハスへのシニカルな感想が、そうそう!と同感して膝打つ感じ。



辻村深月「名前探しの放課後 下」

河野がいじめられつつもいつかたちを惹きつけるキャラという、その微妙な見え方(見せ方?)の天秤をうまく表現しているなと思っていたら、ラストで2重にになるほどと。
あと、ちいさなこと(看板や甥の名前)を変えていくことで未来が大きく変わっていくというところ、なにか祈りのように感じられ、良かった。
そして、エピローグのちょっとした種明かし(前作とのリンク)にはやられました。そういうことかー!



辻村深月「名前探しの放課後 上」

3ヶ月前の記憶を持ったまま精神だけ戻された依田いつか。
タイムスリップの原因をつきとめるために、そして知ってしまった未来を変えるために、友人達と名前のない誰かを探す。
という序盤。
友人達が集まってゆく様子がよかった。
旅の仲間(LotR)みたいで。



恩田陸「きのうの世界」

失踪していた男が1年後に死体で発見される。
何故殺されたのか?見つかるまでの1年間どうしていたのか?
・・・という謎の答えが、いろいろな人々の話の中から浮き上がる。
謎自体はミステリではありがちな問いかけなのですが、その着地点がちょっとズレてるのが恩田流?
ラストの男の死に様ですが、死って本来こういう感じだよな、と得心がいきました。
あと、犬が随所でいい味だしてた。
「人間は家を出て1人になる時間を確保するために、そしてまた確実に家に帰ってくることができるように犬の散歩という習慣を作り上げて来たのかもしれない。」
・・・わかる気がします。



恩田陸「ブラザー・サン・シスター・ムーン」

こういう地に足のついた、過去の回想するお話しはうまいですよね。
同調させる雰囲気を作るのがうまいというか、その時代の空気感が伝わってくる。
そして、大風呂敷を広げないぶんラストもきれいに落ちて、こういうのが恩田さんのかくれたパワーの見せ所かも・・・と思った。
私たちは別れるために出会ったのね」←ラストの台詞が気持ちよく腑に落ちました。



江國香織「ぬるい眠り」

一度途中まで読んでほっといたのを再読。
時が経つと印象かわる本があるとしたら、今の私にはこの本か。
今になってわかることがあったので、ほったらかしにしておいてよかったです。



北村薫「語り女たち」

海辺の街で「私」に語りかける17人の女性たち。
不思議な話、ほほえましい話・・・ベストをあげると「笑顔」「海の上のボサノヴァ」「ラスク様」そしてラストの「梅の木」。
それにしても女性の心理がよくわかるなー、覆面作家だっただけに?



石田衣良「アキハバラ@DEEP」

ちょっと前映画化やドラマ化しただけあっておもしろい。
この作者は前々からネット検索に重点をおいていて、そういうことを書いていた。
上手な検索が出来る人は良い人生を生む」という考えは確かにあたってると思う。
以前ドラマ版は観たので、機会があったら映画版もみてみたいです。



森見登美彦「四畳半神話大系」

大学生「私」のパラレルワールドストーリィ。
「もし〜だったら」を次々と渡り歩くわけです。
いつも悪役よばわりの友人・小津がちっとも悪い人に思えませんでした。
ラストの四畳半をわたり歩くお話しが一番おもしろかった。
あと、猫ラーメンを是非食べてみたいです!



ダン・ブラウン「ダヴィンチ・コード 下」

もりあがって一気読み。ほぼ1日で読み終えました。
ただ読み終わって、3冊に分ける必要があったかな〜と思わないでも。
とはいえ、じゅうぶん楽しみました。



ダン・ブラウン「ダヴィンチ・コード 中」

聖杯の正体が明かされたとき、感動しました。
高校がミッション系で聖書の勉強もしていたので、そこで学んだいろんなエピソードが思い出され、感慨深かかった。
新たに、リー・ティーピングが加わり物語が更に加速。
でも、やっぱりあの儀式はいただけません。



ダン・ブラウン「ダヴィンチ・コード 上」

読み出しがスムースで難なく物語の中に入っていけた。
章によって視点が変わるので飽きが来ない。
ミステリー的には犯人探しというより、被害者の残した暗号解読がメインで、暗号マニア(自分です)にはゾクゾク&ワクワクおもしろい。
上・中・下の3巻ですが、これならサクサク読み進められそうです♪



エリック・ローサー「おいしいハンバーガーのこわい話」

ファーストフードがどのように生まれ、成長して今日に至ったかを解説した本。
着色料の原材料の正体や、どんな環境で牛や鶏が飼育されてるか、それにコカコーラの大量摂取ががどんな結果を招くかなど、マイナスイメージをうえつけられるような内容ですが、食べないようにしようとは思いませんでした。
もともとそんなとこだろうと思っていた・・・からかな?
依存していなければOKだと思うのです。
ミスターマクドナルドという鶏の話が興味深かった。
(↑大きな胸を持ち、短期間で大人になるように品種改良され、胸が大きくなりすぎてまともに歩けないとか)



西尾維新「真庭語」

初代のコウモリ・クイザメ・テフテフ・シロサギは頭領に選ばれるまでのお話。語り手は狂犬。
「刀語」を読んでいても読んでいなくても楽しめる形式ですが、やっぱり「刀語」読んでおくと更に楽しめますよね・・・覚えてさえいれば!
私は真庭忍法をずいぶん忘れてしまっていて、もったいないことをしました。
好きなのはシラサギさんのお話。
あと竹さんおイラストが素晴らしいです。



J.K.ローリング「ハリーポッターと死の秘宝 下」

なんといっても33章が山場ですね。じんわりきました。
いろんな形の愛情表現がある、ということです。
まちがってるか、正しいかは、その人が決めるとですよね。
はたから見てどんなに不可解でも、本人が納得していれば正解。
上巻ではややダラダラした部分はありましたが、下巻になって怒濤の勢いで、一気に読み上げました。
大団円でよかった・・・!
けど、あまりにも多くの人が亡くなってしまったのはどうにかならなかったのなとも思いました。



J.K.ローリング「ハリーポッターと死の秘宝 上」

読み出すとおもしろくなってくる。
甘いだけの児童文学じゃないところがいいのかも。
でも、本が重くて持ち歩いて読むのに難儀しました。



辻村美月「ロードムービー」

「ロードムービー」「道の先」「雪の降る道」の道つながりの3篇収録。
やはりタイトルにもなった「ロードムービー」が秀逸!
ワタルの演説は何度も読み返しました。他の作品もそうなのですが、まだ心のやわらかい子供の心情の描写が良いんですよね。
今思うと大したことじゃないのに、当時はいろんなことがものすごく重大に感じられていたな、
とそういう気分を思い出させるのがうまい。



よしもとばなな「ひとかげ」

結果から言うと、わたしは前の方が自然に感じられて好きです。
確かに、リメイク版では仕事や出来事がよりリアルに表現されてはいましたが、やはり登場人物がスピリチュアルなことを語り出すとき違和感を感じてしまう。



よしもとばなな「人生の旅をゆく」

好きな箇所を本文から抜粋します。

「体を整えてよく見れば、一日の中には必ず宝が一個くらい眠っている。それを大事に輝かせて、いい眠りの中に入っていこう。形ではない。どんな人とも違う、自分だけのやり方がある。それを思い出そう。」



若竹七海「プラスマイナスゼロ」

乱暴者のユーリ、品行方正なのに天才的に運が悪いお嬢様テンコ、そして、なにもかも平均的なミサキの3人が葉山の高校で様々な事件に巻き込まれる、ちょっとカジュアルなミステリー。
でも、ミステリーというより、青春小説的な要素が強いかも。
ラストのミサキの台詞がすがすがしく、この小説の芯があらわれてるなと思いました。
「でも、それはどうでもいいことなんだ。
平凡な私が言いたくても言えず、やりたくてもできないことをやれる
カッコイイ女と知り合えたことにくらべれば、
とてつもなく不運なのに前向きでちゃんと他人をかばったり
思いやったりできる女と仲良くなれたことにくらべたらどうでもいい。」



西尾維新「不気味で素朴な囲われたきみとぼくの壊れた世界」

串中弔士の教師バージョンにしては、あまり剣呑じゃなかったというか
特出したところがなかったなーという感じ。
叙述トリックという程ではないけど、挿画トリックとはいえなくもない?・・みたいな。
これ、きっとイラストレータさんと打ち合わせしたんですよね?



森絵都「風に舞い上がるビニールシート」

「器をさがして」「犬の散歩」「守護神」「鐘の音」
「ジェネレーションX」「風に舞い上がるビニールシート」の6編。
この作者の作品はやわらかい女性的なものというイメージだったのですが、ここ最近変わってきたようです。
とくにこの作品では今までにはなかった骨太な手応えがありました。
内容は、ひとつのことに夢中になる人達の様々なお話。
一番よかったのは「ジェネレーションX」。
出だしはパッとしなかったのにどんどんひきこまれ、読後感がとてもよかったです。



伊坂幸太郎「モダンタイムス」

「魔王」の続編ということに読み始めてしばらくして気づきました。
そして、こういう風につながっていくのなら、「魔王」も悪くないなーと見直しました。
(この作者の作品の中では、いまいち好きじゃなかったので)
本書で、「しくみ」とか「システム」と呼ばれている大きな流れみたいなものは、「運命」に近いけれどやっぱりちがう。
そのちがいにこそ、つけいるスキがあって、積み重ねられる、ひとつのちいさな良き反抗の連鎖によってシステムの流れさえも変えられるかもしれない、と思いました。
というか、思わされました。



森博嗣「博士、質問があります」

ヘリコプタはどうやって進路変更するのか?、とか、
自転車はなぜ倒れないのか?など日常深く考えていなかった疑問を、軽妙な会話形式で説明(解説)。
会話になっているので、読みやすいのですが、内容によってはテキストだけではわかりづらいことも。
そんな時はおおいにイラストに助けられました。



近藤史恵「黄泉路の犬」

南方署強行犯係シリーズ2作目。
動物ものに弱いので、泣きながら読んだところもあります。
心が痛くなるお話でした。
動物保護活動の限界や、アニマル・ホーダーなど・・・。
と、テーマは重かったのですが、かわいらしいエピソードの数々に救われました。
圭司・宗司兄弟と仔猫のやりとりとか。
あと、宗司さんの恋、みのるといいな、いい人なんだもん。



矢口敦子「償い」

もと脳外科医だった日高はある事件から失意に陥り、現在はホームレス。
そんな時ある少年と出会い、逃げていた過去と向き合う事になる。
様々な事件や人物がからみあい、いろんな視点で物語を読むことができる。
強引でご都合主義な展開もあるが、とにかく読ませる。
「人の肉体を殺したら罰せられるけれども、心を殺しても罰せられない。」
このテーマは今後ももっとかかれてもよいと思います。



天野頌子「警視庁幽霊係」

カバー(文庫です)のイメージから想像したとおりの、軽妙で読みやすいミステリでした。
刑事になって死体を見続けているうちに、幽霊がみえるようになり、現場の幽霊へのききこみ捜査に回される刑事さんのお話。
しかも、未解決事件で出会った女子高生幽霊の助手つき。
主人公はいまいち冴えないのですが、脇役のキャラがたっていて支えられてます。
シリーズものということなので、次巻も楽しみ。



宮部みゆき「楽園 下」

人物描写がうまいんですね、だから表情や情景が読んでいるとリアルに伝わる。
上巻を読み終わった次の日に、下巻を読み上げている、ということでどれだけ面白かったかわかるというものです。



宮部みゆき「楽園 上」

「模倣犯」に出ていたライターの前畑さん再登場です。
が、模倣犯の続編と言うことではなく、まったく毛色の違う事件。
その事件がまた別の事件につながるという連鎖に、読み出したらぐいぐい引き込まれる。
予知した事を絵にした少年の話からはじまったので、エスパーもの?と思ったら違うんですね。



法月綸太郎「怪盗グリフィン、絶体絶命」

児童向けとしては、ちょっとめんどくさい表記が多いかな、と思いました。
後半は展開がスピーディになり気が利いていて楽しめましたが、前半のボコノン(舞台)の歴史はもっと完結にまとめてほしかった。
とはいえ、さすが法月さん内容のつまったストーリィで充分楽しめました。


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