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オモシロイ!マークはあくまで私の好みです。


2005年[1]



小川洋子「ブラフマンの埋葬」

夏のはじめのある日、ブラフマンが僕の元にやってきた。朝日はまだ弱々しく、オリーブ林の向こうの空には沈みきらない月が残っているような時刻で、僕以外に目を覚ました者は誰もいなかった…。心の奥に届く忘れられない物語。泉鏡花文学賞受賞。そして本屋大賞、読売文学賞をW受賞。

この物語に出てくるブラフマンを愛犬になぞらえて読んでいました。
読んで思ったのは。自分で飼っている動物をとっても愛している人が、エッセイや日記という形式ではなく、その動物のために物語を書いたらこのような雰囲気になるのでは?ということ。
「かわいい」「美しい」「おりこう」などの直接的な表現はなくとも、日常のなにげない描写だけで、主人公がブラフマンを見つめる目がどれだけやさしいか、切ないほどにわかる。
ラスト、泣きました。
それにしても、ブラフマンはいったいどんな動物だったのでしょう?イタチ・・・とか?



ダイアナ・ウィン・ジョーンズ「魔法使いハウルと火の悪魔」オモシロイ!

荒地の魔女の呪いで90歳の老婆にされたソフィーは、家族を驚かせたくないと家出して空中の城に掃除婦として住み込む。城の主の魔法使いや弟子、火の悪魔たちと一緒に魔女と闘おうとするが…。熱気に溢れた冒険ファンタジー。

「ハウルの動く城」の原作です。そして私が読んだダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品では2作目。(←時系列ではなく、読みやすそうな本から入ってます)「九年目の魔法」でも思いましたが、ヒロインが前向きでサバサバしていてかっこいい。現状をしっかりを受け入れ、分析して自分にできる最上のことをする、しかもちょっとドライ。
一方ハウルはちょっとわかりづらい性格、姿形も描写があるようでなく、ソフィーの主観では語られているけど、客観的にはどうなのか?とちょっと謎なままでした。映画ほど美形じゃないのは確かだと思いますが。でも、そっとソフィーのリウマチを痛くなくする魔法とかかけてあげてたとことか、いい男ですね?




倉知淳「星降り山荘の殺人」

雪に閉ざされた山荘。そこは交通が遮断され、電気も電話も通じていない世界。集まるのはUFO研究家など癖のある人達。突如発生する殺人事件。あくまでもフェアに真正面から挑んだ推理小説。
倉知淳さんという作家は、ミステリがすきなんだろうなぁと、今までの作品を読んで思っていましたが、やっぱりです!
今回ついに、「読者への挑戦状」ミステリをものしました。
しかも、嵐の山荘バージョンです。マニア垂涎のシュチエーション。(ですよね?)
私はすぐにその仕掛けをみやぶってしまい、最後の「やられた!」という思いは味わえませんでしたが、逆に「見破ったぞ!」と自負心は思い切り満たされました。「やられた!」でも「見破ったぞ!」でもどちらでも、ミステリ好きには大満足な1冊です。



よしもとばなな「さようなら、ラブ子」

タイトルでもすでに暗示されていますが、ばななさんの飼っていたラブラドールレトリバーのラブ子に死が訪れます。
「ペットを看取ること」をものすごく考えさせられた。
飼い主の「生きていて欲しい」という思いで、苦しんでいるのに延命措置を施し続けるか、「苦しみが続くのはかわいそう」と安楽死させるのか。本を読むと、ばななさんはその中間(かな?)の、安楽死はさせないけれど、痛みをなるべく感じさせないため、西洋医学の治療をほどこし、たえず見守りながら死のその時までいつも通りいっしょに暮らしています。
それにしても、犬ってどうしてああけなげなのでしょう、私もこのラブ子がいよいよという時は苦しく、泣きそうになってしまいました。(というか、ほんとはじわっときてた)



村上春樹「アフターダーク」

最初の方に「デニーズで食べる価値があるのはチキンサラダくらいだよ」とか書いちゃって、村上さん!デニーズからクレームこない?と心配してしまいましたが・・・大丈夫?

と、それはともかく作中の高橋くんのモットー
「ゆっくり歩け、たくさん水を飲め」は良いですね。
モットー、マネしようかな・・・。

渋谷あたりの23:56〜6:52までの出来事を、ある一人の女の子を軸に描いています。
シーンの説明がビジュアル的で、映画をみているように風景が浮かびました。
善・悪がちらばっている都会の夜(村上風)を堪能。




C.S.ルイス「さいごの戦い」

大猿ヨコシマは愚かなロバにライオンの皮をかぶせてアスランを名のらせ、それが見破られると、今度は破滅の神タシをナルニアによびよせた。ジルとユースチスはナルニアを救うさいごの戦いへ。
きれいに終着したとも言えるけど、なんとなく今までの流れからすると物足りない感もあり。
でも、やっぱり一番の感想は「おもしろかった!」という満足感&達成感につきる。
こういう本をもっと子供の頃に読めていたら、と今更ながらくやしいです。



C.S.ルイス「魔術師のおい」

とても神話的なストーリィでした。
このナルニア国シリーズ6冊目に、
アスランがナルニアをつくる章があると知っていたが、こういう風にだったのか!と。
この場面に立ち会えたディゴリーとポリーがうらやましかった。

ディゴリーは活躍の場が多かったが、ポリーの方はいまいちふるわなかったのが残念。
しっかり者で気に入っていたのに。

アンドリュー叔父の傲慢さや女性蔑視発言は、いけいないことの見本のようにあからさまに書かれているが、そういう考え方が進歩的な時代に書かれたのだよなぁ?と思うと、興味深いです。



C.S.ルイス「銀のいす」オモシロイ!

友だちの男の子ユースチスといっしょに別世界に入った女生徒ジルは、偉大なライオン・アスランからナルニアの王子を探すことを命じられる。ユースチスや沼人の泥足にがえもんと共に旅をかさる。ナルニア国ものがたりシリーズ第4作。

ナルニア国シリーズで一番好きなお話になりました。ユースチスとジルの完璧じゃない子供らしい表情や、それに「泥足にがえもん」というキャラがとても個性的で、読んでいくうちにどんどん好きになっていた。この3人の個性で旅にいろどりが出、そのアンバランスさでスリルが発生する。冒険そして成長のある、いさましくあたたかいストーリィ。ナルニア国シリーズ中でも一番ワクワクして読んだ1冊でした。




重松清「ビタミンF」

Family、Father、Friend、Fight、Fragile、Fortune…〈F〉で始まるさまざまな言葉を、キーワードとして埋め込んだこのビタミンは心に効きます。ビタミンのようにはたらく「家族小説」。短編七編からなる直木賞受賞作。
疲れていた時、タイトルにひかれてビタミン補給のために読みました。
収録された短編はどれも良い話。いつも最後には涙ぐまされる。でも、ちょっと所帯じみていて意外性はない・・・ビタミン補給で読んでいるので、新鮮なサプライズと、もう少しほんわかした読後感が欲しかった。同じ系統で奥田英明さんの「マドンナ」という作品があるのですが、こちらのほうが読後感は好みでした。ほほえましくて。



江国 香織「泣く大人」

文章がきれいです。エッセイを読んでも、読書感想を読んでも通り一遍な視点じゃなく、ちょっと変わっていてでもその変わり方が女性らしくてやわらかくちょっとワガママでかわいらしい。
別居している夫さんとの関係や、他の男友達との関係や、私からみるとちょっとずれてるよなぁとも思うのですが。でも、最近思ったことなんですが、人をまっすぐに見つめて誉めることができる、あるいは尊敬する、そういったことをてらいなくできる人は人生が充実していくと思います。
・・・というようなことを考えました。



本多孝好「真夜中の五分前 side-A」オモシロイ!

正直に言うと、双子が出てきた時点で
「それは、まだマズイのでは?」と思った。
この人、鳴り物入りで登場したものの既成作家(村上春樹さんです)の作品に似ているとあちこちで書かれていたので、
今回双子が出てきた時点で208&209(村上作品の登場人物)を連想しちゃって、
またひきずるのかなぁ?と。
が(あたりまえなんですけど)キャラがかぶることもなく、
ストーリィも生臭くなってしまいがちな内容なのに、どこか淡泊で好印象。
既成作家に似ているとか、似ていないとかそういうことより、
読書っておもしろい本を読みたい!の一言につきると思う。
双子にこだわったりして、最初、嫌な読み方をするところでした。
ただ物語を楽しめば良いんですよね。
・・・というか、いつの間にかすっかり物語のとりこになって楽しんでました。



法月綸太郎「生首に聞いてみろ」

法月氏の数年ぶりの長編、そして「このミス」1位にかがやいた1冊でもあります。
いやがおうでも期待が高まるというもの。
もともと法月氏は本格ミステリ作家陣でもとくに本格をつきつめた人だと思っていて、新作を期待している人なんですけど、
今回もとても綺麗なミステリを読ませていただきました。個性的だけど現実離れしすぎていない登場人物たち、死体切断の謎、そして綸太郎と法月警視の関係など、読みドコロはたくさん。
ただ、とてもうまくミステリとして完成しているせいか、推理小説を読み慣れ人だと、サプライズは少なめかも?
そこが物足りなかったです。あと、綸太郎がけっこうふっきれていて(以前のように)うじうじしていないのが物足りなくもあったり。(←昔からのファンの一方的なイメージです)



よしもとばなな「赤ちゃんのいる日々」

WEBで発表されていた、2003.7〜2003.12の日記をまとめたもの。

少しスピリチュアルで、友人思いで美人大好き!なばななさんの日々。
ほんとうにいつも素直にお友達に感謝していて、良い人のことはベタ褒めで、それがまっすぐで読んでいて気持ちよい。
自分もいろんな人の良いところに目がいき、そして信頼している人にはちゃんとわかってもらえて、元気になれる気がしてきました。

赤ちゃんへの対し方にも偏った気負いが無く、バランスがとれていて「ウチの子が・・・」を連発する親ばか日記になっていなくて好感がもてます。



近藤 史恵「狼の寓話」

テンポ良く1日で読了。人の良さそうな新米刑事会川と女刑事黒岩のコンビがバランス良く、会川のおにいさん(警察官)など脇役も魅力的、失踪した女性を追ううちにDVがからんできたりと、内容は暗い部分も多いが、会川の素直さに救われる。それにしても、このカバー・・・最近こういうマンガ風イラストのカバー増えてますが、これってちょっとレディコミみたいで・・・人に勧めづらいです。こういう方が売れるのかなぁ〜???



飛鳥部勝則「冬のスフィンクス」

眠りに就く前に絵画を見ると、その中の世界に入り込める男・楯経介が、夢の中で遭遇した連続殺人の顛末は。これは夢か、現実か-。幾重もの「夢」と「探偵小説」とがせめぎ合い、幻惑する異端の長編小説。

最近、酩酊ミステリが苦手になりました。
酩酊というか、現実とフィクションの境目をふらふらするお話や、語り手や地の文が、故意に読み手を惑わすようなことを狙った文章というのがダメに。
「最近」と言ったのは、以前なら読むのが苦にならなかったはずだし、基本的には嫌いじゃないと自分でもわかるから。
でも、今は・・・ダメです。
入った絵の中で起こる殺人事件(しかも本格っぽい)なんて好物なのに、残念。
今の体調にあいませんでした。


2005 [1]

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