葦河SL運転記(速報版)

2003年3月21日から24日まで中国黒龍江省葦河林業局で
森林鉄道蒸気機関車の体験運転を行って来ました。
残念ながら葦河林業局はすでに運行を休止しており、
再び蒸気機関車の雄姿を見ることはできませんが、
最後の葦河の姿をお伝えしたいと思います。
第一日目(3月21日)
第二日目(3月22日)
第三日目(3月23日)
第四日目(3月24日)
第一日目(3月21日(金))

中国黒龍江省葦河森林鉄道で最後の蒸気機関車運転を行うため、早朝に東京を出発し成田空港へと向かいました。
3連休の初日とあって、渋滞は十分予想していたのですが、それでも朝7時前から各所での事故や渋滞があり、
いつもよりかなり時間がかかってしまいました。
成田空港へ着いてまたびっくり。手荷物検査場が50メートル以上も繋がる長蛇の列です。
地球の反対側では戦争が起こっているというのに、ここでは旅行自粛などとは全く無縁の状態です。
日本に住んでいると、アジア諸国を訪れたときの現地住民の非常なバイタリティを感じさせられますが、
こと遊びに関しては日本人のバイタリティも負けていないようです(我々もその一部ですが)。
チェックイン後に時間があるので朝食でもと思っていたのですが、あわてて我々も手荷物検査の列に並びました。
今回は私とS氏の他に、もうすっかり常連になってしまったO女史、
今回初参加ですが我々と同じ市川蒸気鉄道クラブのメンバーで、模型ならいつも蒸気機関車を運転しているY氏と、
総勢4人の中国ツアーです。
なぜこんな時期に運転ツアーになったかというと、去年秋に山河屯林鉄を体験運転で訪問したさい、
山河屯は来年3月で運行休止になるから、その前にまた訪問するという話になっていたからでした。
ところが山河屯が予定より早く運行休止になってしまったため、
いつもお世話になっている長春海外旅行社の車さんの尽力で、
すでに定期列車の運転を休止している葦河林業局鉄道での体験運転が実現することになったというわけです。
この葦河林業鉄道は山河屯林業鉄道と同じ黒龍江省にある林鉄で、山河屯とは山の裏表といった位置関係にありますが、
路線が起伏に富んでいるため撮影メインの中国鉄っちゃん
(中国人の鉄っちゃんではなく日本人の中国鉄道ファンのこと)には人気の高い林鉄でした。
いままでこの葦河では撮影用の特別列車はチャーターできても、外国人の運転は許可が下りませんでした。
しかし、既に運転休止で定期列車が走っていないこと、山河屯林鉄での5年の運転実績と山河屯林業局からの紹介、
そして車さんの尽力で特別に我々に対する運転許可が下りたというわけです。
もっとも同じ黒龍江省のとなりの林業局同士ということでツーカーらしく、
我々の人物情報まですっかり葦河林鉄の幹部たちに事前に知れ渡っていました。
さて、我々を乗せた飛行機は定刻通りに成田空港を離陸、15分ほど予定時刻より早く、無事に北京空港へ到着しました。
今回の北京の案内は朴さんという車さんの友人の方です。
空港で合流した後、今回の中国訪問目的その1である、北京鉄道博物館へと向かいました。
この北京鉄道博物館は、中国国鉄に関する一大資料館で、いまはまだ正式オープン前のプレオープン期間です。
北京市郊外、ちょうど北京空港から車で20分程の、市内に入る手前にあります。
現地へ着いて、まず展示場へと入りました。この展示場は200メートルX50メートルくらいの体育館のような建物で、
今は約30輌の各種機関車や客車が屋内展示されています。
いままで写真でしか見ることが出来なかった「解放」型、「勝利」型や「人民」型などの蒸気機関車、
朱徳号や毛沢東号などの記念機関車の他にも、初期の輸入蒸機やディーゼル機関車、電気機関車などもあり、
中国国鉄機関車の歴史をここだけで辿ることが出来ます。
その他にも周恩来総理が使用した公務用客車なども展示されており、未公開の展示車両もあるようでした。
もっとも、この展示館は博物館全体の三分の一ほどのスペースなので、
正式オープン時にはさらに充実した展示物を見ることができるでしょう。
現在は一部の機関車はまだメインロッドが取り付けられていなかったりしますが、全て新車同様に補修され展示されています。
これだけの施設を作り、鉄道文化の保存を行うという中国国鉄の姿勢にはとても敬服させられます。
特に用途廃止後の長い期間、貴重な機関車や客車を文革の動乱などに遭いながらも保管しつづけた努力には頭が下がる思いです。
逆に鉄道を単なる移動の手段としかみなさない日本の文化度の低さは非常に残念でなりません。
正式オープンの際には再び訪れようと決心しながら鉄道博物館を後にしました。
さて、ハルビン行きの飛行機まで間があるので、北京市内へ行ってみることにしました。
といってもそれほど時間があるわけでもないので、天安門広場を10分ほど散策し、市内で夕食を済ませることにしました。
北京市内で宿泊する場合には、たいてい腰を据えて全衆徳(北京ダックの名店)へ行くのですが、
今回は特に予約もしていないので、朴さんにしゃぶしゃぶの店に連れて行ってもらうことにしました。
ガイドブックに載るような有名店でなくても外れがないのが、食の大陸・中国の偉大なところです。
今回はグルメツアーの気はなかったのですが、すっかり本格しゃぶしゃぶを堪能してしまいました。
食事の後は一路北京空港へ。市内の渋滞がひどく時間を気にしながらの到着となりました。
ここでハルビン行きの国内線にチェックイン。朴さんに別れを告げ一路ハルビンへとなるところだったのですが、
ここでちょっとしたトラブルに見舞われました。
実は現地へのお土産用として酒・タバコなどを日本から持参したのですが、
ついさいきん中国の法律が改正され液体類の機内持込が厳禁になっていたのです。
この法律改正は知ってはいたのですが、そこは馴染みのない習慣の悲しさ。
うっかりウィスキーを2本、手にもったままで手荷物検査を通ったところ、その場で止められてしまいました。
結局朴さんに付き添ってもらい、再梱包(壊れないように)・チェックインカウンタで再度荷物預け手続き・易損品カウンタで
実際にウィスキーを預け、やっと飛行機に乗り込むことが出来ました。
約1時間半でハルビン空港到着。長春海外旅游公司の車副社長の出迎えを受けハルビン市内へ。
今日の宿泊は香格里拉(シャングリラ)という五つ星ホテルです。
さすがに設備・内装とも申し分なく今日一日の疲れをぐっすりと休めることが出来ました。

第二日目(3月22日(土))

今日は葦河への移動だけなので、7時過ぎまで朝寝をしてホテルでのんびりと朝食を摂りました。
9時にホテルを出発、午前中は旧ロシア正教会跡の博物館、スターリン公園などを見学したあと、
中央大街のスーパーで明日の食料等を仕入れました。
そのまま歩いて華梅西餐廳へ。ハルビンに来ると必ず立ち寄るロシア料理の名店です。
茅台酒で乾杯し、これからの運転旅行の安全と成功を祈念しました。
昼食のあとはハイヤー2台に分乗して一路葦河へ。
ハルビンから葦河までは約200km。だいたい3時間弱で到着します。
黒龍江省は中国の中でも道路の舗装率が低く、山河屯へ行くときは1時間以上未舗装路を走らなければならないのですが、
葦河へは途中まで高速道路、あとは舗装済の国道ととても快適なドライブでした。
茅台酒の酔いも手伝ってうつらうつらとしている間に葦河の街に到着してしまいました。
葦河の街に着いて最初に行ったのが今夜の宿である葦林賓館。
着いた瞬間、どっかで見たような建物だなぁと感じましたが、山河屯の定宿である龍山賓館そっくりの造りです。
まず部屋に荷物を置いて機務段へと向かいます。徒歩でも10分かからない距離ですが車で移動。
門から建物の間を抜けて機務段までは、こちらもほとんど山河屯と同じような造りです。
機務段ではC2機関車(30号機)が停まっていました。
聞くと、明日の運転はこの機関車ではなく別の機関車を使用するとのこと。
沿線の倒木を葦河まで運ぶ臨時の運材列車が走る可能性があるので、数輌は有火のまま残してあるのだそうです。
機関車の周りで司機(機関士)たちに日本から持参したライブスチームの運転写真などを見せ、懇親を図りました。
あちらもプロだけに、製作途中の下回りの写真を見て非常に興味をそそられたようでした。
しばらく写真など撮っているうちに暗くなってきたので食事に向かうことにしました。
今日は(も)羊肉のしゃぶしゃぶです。
料理店に関しては山河屯ではあまり大きな店は見当たらなかったのですが、ここでは個室もあるきれいな店でした。
羊肉の他、シャコや牡蠣などの魚介類(冷凍でしたが)もあり、満腹になるまでしゃぶしゃぶを楽しむことが出来ました。
再びホテルへ戻り、翌日の運転に備えて早めに就寝しました。

第三日目(3月23日(日))

いよいよ運転当日です。朝6時にホテルを出発し街中の食堂で簡単な朝食の後、機務段へ向かいました。
ここで我々を待っていたのはC2型34号機。今回は客車を牽引しての運転です。
葦河林鉄には客車が5輌あるのですが、1輌は調子が悪いということで4輌編成になりました。
東北地方の森林鉄道では運客は基本的にレールバス化されており、客車を保有している林鉄はほとんどないとのことでした。
とりあえず2名が機関車に乗車して1駅交代で運転、残り2名は客車で待機ということにして葦河客運駅を出発しました。
客車には我々の他、葦河林業局の関係職員や本職の機関士など5〜6名が乗車しており、
いわば我々の運転する列車のお客さんということになります。
そのため特に静かな運転を心がけたのですが、運材車や緩急車と違って客車の乗り心地は格段にすばらしく、
少々ラフな運転になってしまってもあまり客車側でショックを受けるようなことはありませんでした。
葦河客運駅を過ぎてしばらくは道路と並行して走り、平坦線が続きます。
ここは山河屯林鉄と比べると線路状態がよく、客車に乗っているとほとんど揺れを感じません。
各駅で運転を交代しながら平林駅に到着しました。いよいよここからが本格的な山越えです。
ここまでも多少アップダウンもあり、ブレーキをかけないとスピードが出すぎてしまう下り坂などもあったのですがまだまだ序の口。
平林から隣の双峰駅手前までは最急30パーミル(1キロ進む間に30メートル登る)の勾配が続きます。
O女士の運転で平林駅を発車、「もっと加減弁(アクセル)を開けないと停まっちゃうよ」などと
苦闘しながら双峰駅手前のサミットまでたどり着きました。
ここで一時停車。2キロほど後退して一人ずつ最急勾配に挑むことになりました。
他のメンバーは下車して適当な場所で写真撮影。
この日は5組くらい我々の運転する列車を狙って写真撮影に来ている人たちがいたのですが、
この辺は道路から離れているせいか、我々の他に人影はありませんでした。
平林駅構内は平坦線だったので普通に発車できたのですが、
再スタート地点はすでにかなりの登り勾配で、ブレーキを弛めるとすぐにバックしてしまいます。
逆転機を前進フルギアにセットし、空転に気をつけながら加減弁を開けていきます。
目一杯に開けたところでやっと列車が動き出しました。
平坦路では聞くことの出来ない力強いドラフトを響かせ、機関車は急坂を登っていきます。
まさに蒸気機関車運転の醍醐味です。
全員この勾配を楽しんだ後再度機関車に乗り込み、さらに先に向かって出発しました。
双峰から東風駅までは下りが続きます。
ブレーキで慎重に速度を調節しながら走りますが、登りに比べると面白みは少ないものの、こちらの方が技術を要します。
東風駅からはまた登り勾配が多くなります。かと思うと平坦に見える下り勾配などもあって、
機関車の加速度を体で感じながらの運転となり、平坦線と比べると難しいながらもとても面白い運転を行うことが出来ました。
東風駅で給水のため小休止。さらに終点、柳山駅を目指します。
またこの間に交代でパンとソーセージの昼食を摂りました。
これは昨日ハルビンで買い求めたもので、実はこのソーセージはハルビンの名産品。
ボリュームたっぷりのソーセージは実に食べ応えがありました。
1時頃に終点の柳山駅着。休むまもなく折り返して葦河へ向かいます。
機関車が繋ぎ変えのため動き出すと、スェーデンから来たというビデオ撮影をしていた初老のマニアが、
車でさらに奥地へと向かおうとします(軽ワゴン車を運転手付きでチャーターしていました)。
あわてて声をかけ、ここから先には線路はないので折り返して葦河に戻る旨を伝えました。
この柳山駅は転車台もデルタ線もないので機関車の向きを変えることが出来ません。
機回し線を利用して機関車をバック牽引に繋ぎ変え次の楡林駅でデルタ線を使い、方向転換を行ないます。
楡林駅まではバック運転となるので本職の機関士の運転で移動しました。
山河屯では前向きで行ったらバックで帰るしかないという事情もあり、
バック運転の場合でも我々に運転を任せてくれていましたが、ここ葦河では全て本職の機関士が運転するということになりました。
当初は双峰からの下りも本職が運転すると言ったのを、車さんが大丈夫だからということで、
我々が運転できるよう交渉してくれました。
もっとも外国人が運転するというのは葦河では初めてのことなので、山河屯林鉄に我々のことを問い合わせていたそうです。
そのせいで、運転技術だけでなく酒席での余興の話などもすっかり伝わっていました。
さて、楡林駅のデルタ線で機関車を方向転換。前向きになって再び我々の運転で葦川への帰途に着きます。
帰りは下りが多く、もっぱらブレーキでの速度調節が主となります。
貫通ブレーキ(列車全体にブレーキがかかる仕組み)がないので、列車重量すべてを機関車で制御することになり、
しかもラフなブレーキ操作をすると客車内で人が座席から転げ落ちるという事態が発生します。
しかし、そこは皆ライブスチームでの運客運転で慣れたもの。 (我々の運転する5インチクラスのライブスチームにも貫通ブレーキは基本的にありません)
上手く釣り合い速度を見つけて下っていきます。
途中、再度給水したのち一気に葦川まで走り抜けました。
夕方6時過ぎに葦川着。
最徐行で機務段へと戻ってきたところ、最前部の客車がポイントで脱線してしまいました。
さてどうしたものかと見ていると、案の定機関車を反対側に付け替え、
強引にポイントのガードレールを利用して引っ張りあげてしまいました。
楽しかった運転もここで終了。葦河林業局の皆さんに別れを告げハルビンへの帰途に着きました。
さすがに皆早起きと運転の疲れでうとうととしてしまい、
気が付いたときにはあっという間にハルビンへ着いていたという状態でした。
夕食はハルビンに戻ってから餃子を食べに行く予定だったのですが、
当てにしていた店がすでに閉まってしまい、中央大街にある別の餃子店へ行くことになりました。
ここの店もラストオーダー時間を過ぎていて一部売り切れのメニューもあったのですが、
なんとか美味しい餃子と茅台酒で運転旅行の最後を飾ることが出来ました。
今日の泊まりは1日目と同じシャングリラホテルです。
1日振りに熱いシャワーを浴びてぐっすりと眠ることが出来ました。

第四日目(3月24日(月))

感動の葦河体験運転も終わり、いよいよ帰国の日となりました。
朝7時にホテルで朝食後、ハルビン空港へと向かいます。帰途も北京乗り換えで成田というルートです。
ハルビン空港で車さんの見送りを受けハルビンを離陸、11時頃無事に北京空港に到着しました。
ここで成田便の出発まで3時間ほど時間が空いてしまいました。
北京市内へ行くには時間が足りないので、先にチェックインして荷物を預け、空港内で食事にすることにしました。
ところが北京空港は成田空港と異なり、チェックインしてしまうとあとは手荷物検査、出国検査と連続し、
レストラン街へ出ることが出来ません。
仕方がないので空港内の手荷物預かりに荷物を預け車さんお勧めの地下食堂へ向かいました。
ここは日本でいうスナックコーナーのような飲食店が並び、各人が好きなコーナーの料理を楽しめるようになっています。
我々の目的は車さんお勧めの牛肉麺。
あちこち探してそれらしいカウンター見つけ牛肉麺を注文しました。
味はお勧めにたがわぬ美味しさで、これで10元(約150円)とは、まさにしあわせの限りです。
さて、食事で満足したあとは手荷物預かり所で一休みし(専用休憩室あり)、チェックインカウンターへと向かいました。
ここでちょっとしたハプニングが。
実はハルビン市内でO女士が怪しげなカイザーナックル(こぶしにはめる金属製の簡易武器)を購入したのですが、
手荷物検査でこれを取り上げられてしまったのです。
その上、危険人物だとみなされてしまったのか、普通なら持ち込み手荷物でもまず見逃してもらえるような、
小さなはさみまで取り上げられてしまいました。
定刻通り出発した飛行機は無事午後6時半に成田空港へ着陸しました。
4日間の短い旅行でしたが、北京のすばらしい鉄道博物館を見学できたこと、
景色も線路もすばらしい葦河林業鉄道を最後の最後に訪問・運転できたことはすばらしい収穫でした。
国家の方針とはいえ林業が衰退し林業鉄道が相次いで廃止になるのは残念でなりません。
あしかけ6年にわたって中国東北地区林鉄の終焉期に体験運転をすることが出来たのは、とても幸運なことでした。
もちろんこれは東北地区林鉄のすばらしさを紹介し、
運転の手配をしてくれた長春海外旅游公司の車副社長おかげである事は言うまでもありません。
現在、山河屯林鉄で、沙河子から先の山線を残し(山河屯から沙河子まではダムの底に沈む予定)、
観光路線として運営するという計画があるそうです。
実現すればすばらしい計画で、再び驀進するC2型蒸気機関車の雄姿を見ることが出来、
また再び加減弁を握ることも出来ます。
この計画に我々も何かお手伝いできないかと考えています。
我々にできる事があるようであれば、このページでお知らせします。
この運転記を読んで興味をもたれた方、中国林業鉄道が好きな方は、お力をお貸しくだされば幸いです。
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