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若さとリズムのページ

東海林先生とザ・ピーナッツ


テレビ界の“カンヌ映画祭”といわれる
「ゴールデン・ローズ・オブ・モントルー Golden Rose of Montreux」に出品された
「THE FLYING BALL」の作品解説を
東海林先生からお預かりしましたのでご紹介いたします

 

ゴールデン・ローズ・オブ・モントルー
1966年度出品作品


日本放送協会制作
「THE FLYING BALL」
ザ・フライング・ボール


この番組は、「若さとリズム」という音楽バラエティ番組シリーズの 
1966年3月12日放送分をシネスコープで録画したものである。
このシリーズはNHKの制作、1965年10月から毎週土曜日に放送され、人気を博した。

特別番組「FLYING BALL 空飛ぶボール」は、日本の民謡や地方に伝わる歌、
また「琴」や「三味線」という伝統楽器に合わせた踊りと、
現代ポピュラーソングとダンスをブレンドさせたものである。

出演は、この番組レギュラーの4人組「ザ・ジャニーズ」、
ヨーロッパのテレビ番組にも出演した双子の歌手「ザ・ピーナッツ」、
アメリカでのニューポートジャズフェスティバルに出演した「弘田三枝子」、
イタリアのサンレモ音楽祭に出演した「伊東ゆかり」。
いずれも日本で大人気の若手歌手である。

 

音楽

東海林 修   川口真

制作

遠藤利男

美術

足立正己
プロデューサー 川口 幹夫

ディレクター

遠藤利男 甲田常男
   

出演

ザ・ピーナッツ
(伊藤エミ  伊藤ユミ)
  ザ・ジャニーズ
(飯野おさみ 真家ひろみ 中谷良 あおい輝彦)
  伊東 ゆかり
  弘田 三枝子
   

演奏

宮間利之とニューハードオーケストラ
  寺内タケシ&ブルージーンズ
   

 

 

<Flying ball 余談> 東海林 修 
 

音楽  東海林 修   川口真
川口真は弘田三枝子の名作「人形の家」をかいてますが
芸大出の秀才です。


制作  遠藤利男
彼は名古屋支局に転勤後NHK音楽出版の社長に就任し定年退職。
既存の制作ルールに懐疑的で私と非常に気があいまし
た。

美術  足立正己

プロデューサー 川口 幹夫
川口氏は前のNHKの会長にまで出世しました。

ディレクター 遠藤利男 甲田常男
甲田常男 北海道の出身。
いつも雪焼けでスキーの話がすきでした。

つい懐かしい名前につられ披露しました。


シーン1 イントロダクション

富士山と東海道新幹線。
サッカー競技場をバックにタイトル(字幕)

曲: ファンファーレ  

効果音:競技場の歓声
ザ・ジャニーズがサッカーの試合場面をバックにヘディングやシュートの練習している。
あまり巧くない4人。
コーチは屈強そうなオニのような男。
怒声とともに4人の方へボールを投げる。
4人は返すがボールは次々と無数に襲ってくる。
へとへとになるザ・ジャニーズ。
4人が顔を上げると、コーチはオニ(悪魔)に変わっている。
力を振り絞って一人が立ち上がりボールを捉える。
「ナイスシュート!」
ボールが遠くへ飛んでいく。
4人は目で追う。
コーチもそれを見る。
ボールは夕暮れの空から星屑の宇宙にまでに飛んでいき人工衛星にも遭遇する。
ボールは星と衝突し、しだれやなぎの花火となり、砕け散る

(オニ役:石川晶=当時ニューハードのドラマー)



シーン2 タイトル
曲: さくら (白木秀雄の太鼓と3人の女性による琴)

暗闇にくだけたボールの破片がはずむ。
はずむごとに、ぼんぼり、ちょうちん、とうろうなどが現われる。
その灯りの中で太鼓と琴が「さくら」を演奏する。
奏者にさくらの花吹雪。
タイトル、キャストのクレジット。
バックは日本伝統の形や模様。
最後の模様に入っていたボールが抜け出して飛んでいく。


シーン3 祭
神社の境内。
祭の夜。神殿。夜店。神楽と舞。
ボールがはねる。
おかめとひょっとこの面をつけた踊り。
玉を使った大道芸(海老一染之助・染太郎)
芸が楽しく終るとその玉に飛んできたサッカーボールが当たり砕け散る


シーン4 人形と二人の娘
ひな人形の段飾り。
ボールが段をころがる。
人形がふたつ動き出したように、双子の女性が歌い踊る。

曲: ウナ・セラ・ディ東京 (ザ・ピーナッツ)

突然二人の衣裳が着物から流行の洋服に変わり、背景も高速道路とネオンの街に。
バックにダンサーが登場し、ザ・ピーナッツと踊る。
ザ・ピーナッツは再び着物姿になり、踊る。
歌い終わると、人形の精だったかのように消える二人。
ボールが墨の中に転がり、紙にひらがなで「じょんがら」と書く。


シーン5  三味線とエレキギター
大きな扇の上で着物の男性が三味線を弾く。

曲: じょんがら節 (寺内タケシ&ブルージーンズ)

バックが変わり、エレキバンドが登場。
燕尾服に帽子というスタイル。
バックにはラインがギターのリズムに合わせて動く。
いつのまにかバンドは、編み笠をかぶって演奏していたが、突然消える。
編み笠とギターだけが残る。曲だけが続く。


シーン6 扇と娘
丸窓のある和室。
ボールが障子を破りガラスが壊れる。
障子の穴から歌手とダンサーが見える。

曲: おてもやん (弘田三枝子)
踊りながら扇をいろいろな形に変える(松づくし)。
歌手はダンサーの間にシルエットで現われる。


シーン7 鹿踊り
前のシーン最後に出てきた扇がひとりでに裏返しなると、そこには珍しい鬼の顔。
シーンは、深い杉の森。
雪が降っている。
雪の中での、激しい鹿踊り。

ちょうどその時、ボールが落ちてきて爆発し、皆、地面に倒れてしまう。

そして起きあがり、巨木の中に消えていく。

鹿が消えると、そのかわりにザ・ジャニーズが現われる。
ボールを探すが見つからない。

丹念に探すと、羽の生えたボールが見つかる。
しかし触れようとすると、鋭い声をあげて逃げてしまう。

一人がようやくボールをつかむと、ボールは舞い上がる。
他の三人がその一人にぶら下がり、そのままボールは空高く上がって行く。


シーン8 茶畑
ボールは茶畑に落ちる。
茶摘みの女の子たちが茶畑から現われて歌い出す。

曲: ちゃっきり節 (弘田三枝子)

ソロと男性コーラスは洋服。
着物を着た茶摘みの女性たちと交互に踊る。

カエルも登場し、歌う。
雨が降り出し、茶摘みの女性たちは傘をさす。

ザ・ジャニーズが地球の上から下を見ると、きれいな傘の踊りが見える。


シーン9 花笠踊り
曲: 花笠踊り (花柳徳兵衛社中)

ザ・ジャニーズが見たのは花笠踊り。
民芸品の色とりどりの傘が、上品に優雅に踊る。


シーン10 鶴と少女たち
鶴を折りながら女性が歌う

曲: Bella Capucinna (伊東ゆかり)

ボールが飛んできて折り鶴に当たると。折り鶴も空に舞いあがる。

2羽の折り鶴が飛んでいる
そのひとつに乗って歌手が歌う。
4羽の折り鶴が石や赤い手すりの橋と日本庭園で休んでいる。
そこに、歌手の乗った折り鶴も下りてくる。

4羽の折り鶴は、薄い布をまとった4人の少女に変わる。

少女達は歌に合わせて踊る。
歌が終ると、水の中に消えて行く


 

シーン11  マンホールとジャニーズ 
大通り。 通行人が行き交っているが、突然誰もいなくなる。
マンホールにボールが落ちてくる。
ふたが開き、ザ・ジャニーズが出てくる。
マンホールで働いていたのだ。
空を見上げ、歌う。

曲: 涙くん、さよなら (ザ・ジャニーズ)

曲が終ると4人はマンホールの中に消える。

突然、マンホールの中で何かが爆発する。煙がたちこめる。
地球が飛び出してくる。ボールが地球に変わっていた。
すすで真っ黒になりながら驚く4人。


シーン12 鏡に映る着物
双子の姉が鏡の前に立って歌っている

曲: 明日になれば (ザ・ピーナッツ)

妹が鏡に映っている
男性が妹と踊り出す。
男性が消える。
鏡に、4組の男女が現われ踊る。
双子は鏡越しに二人で歌う。
東京の夜景に現われて歌い踊る。

地球が空から降ってくる。
それをマンホールから見て笑うザ・ジャニーズ。
彼らの頭上に落ちてきたのは、たくさんのサッカーボール。


エンド・タイトル



(2006.08.26 東海林修先生のお話をもとに加筆・修正)