※この感想はblogからの転載になります。

AMERICAN GANGSTERアメリカン・ギャングスター

  Ridley Scott監督作品で、Denzel WashingtonにRussell Croweという2大オスカー俳優の対決が話題の『AMERICAN GANGSTER』を観て来ました。

  全米で大ヒットし、日本でも前評判がすこぶる良い作品でしたが、実際に鑑賞して………本当に見応えのある映画だった!観て良かった!と断言できます。この 作品の本編上映時間は2時間37分。始る前の予告編などの時間も合わせると2時間47分。そして、私は予告上映10分前には座席に着いていたので、3時間 強は同じ席に座っていたことになる。それなのに、そんなに長い時間同じ場所に座っていたという感覚が全く残らなかった。時計を見て「えっ?もうこんな時 間?」と驚いたほど。それぐらい「長さ」を感じなかった。こんな映画作品は久しぶり。

 舞台は1968年のアメリカ。
 ニュー ヨークのハーレムを牛耳り、人々に慕われていた黒人ギャングのボスBumpy Johnsonが心臓発作で急死し、彼に長きに渡って運転手として仕えていたFrank Lucasは誰にも仕えることなくハーレムで生きることを決意する。そんなFrankが目を付けたのは、ベトナム戦争へ出征した米兵の間で麻薬が蔓延して いるというニュースだった。

 という話で、Denzel Washingtonが演じた実在した麻薬王Frank Lucasの半生を、後に彼を追うことになるRussell Croweが演じるRichie Roberts刑事の奮闘ぶりと平行して描いた人間ドラマです。

 ハーレムのボスの運転手だったFrankがどうやって麻薬王にまで成長していったのか、テンポよく展開していくので観ていてダレる暇もない。
  そして、汚職がはびこる警察内で賄賂を一切受け取らないどころか、押収した大金をも証拠として提出したが為に同僚から反感を買い孤立していってしまう Richie Roberts刑事が、その「誘惑」に負けないところから麻薬特殊捜査班の責任者に抜擢され、Frankの存在を知っていく過程も見応えがあり、「いつお 互いが存在を知ることになるのか」という緊張感が途切れることなく続き、2時間半以上ある長い映画だということを意識させない。

  この作品はご贔屓監督のRidley Scott作品でしたが、ギャング映画は苦手だし、上映時間長そうだし、普段は一般ウケが少ないRidley Scott作品が一般ウケしているということは私の好みじゃない可能性が高いかも…と、観る前まではマイナス要素の方が多かった。
 しかし、鑑賞 後はこの作品の素晴らしさに嬉しくなってしまったほど。正直言って、今までのRidley Scott作品特有の芸術的なまでの映像美や、大胆過ぎる演出というのが極端に少ないので、そういう部分が好きな私としては若干物足りない感じもしたけ ど、その分、主演の2人の魅力をとことん引き出していて、ここまで役者というか主演の登場人物に惹き込まれていくRidley Scott作品も珍しかった。変な言い方だけど、時代背景とか人間関係とか理解しきれなくても、主要の二人…闇の麻薬王のFrank Lucasと孤独な警察官のRichie Robertsさえ認識していれば、十分に作品を堪能できるんじゃないかと思います。それだけDenzel WashingtonyとRussell Croweの存在感が物凄いです。

  Ridley Scott作品らしくないと書きましたけど、彼ならではの「男の美学」の描き方は健在でした。この作品はFrankとRichieが対面することになるま での「過程」をスリリング描いていて、二人の男の「生き様」が物凄く見応えがあり、だからこそ、その2人が初対面する場面では何とも表現のしようのないカ タルシスを得ることができました。このシーンで、「映画って凄い」て痛感しました。

 あとエンドロールの後に瞬きする間に終わっちゃいそうなくらい(笑)短いおまけ映像がありますが、あの映像をどう捉えるかは観客しだいだと思います。短いですけどインパクトあります。

 こういう作品に出会えるとね、映画館に行くのが病みつきになっちゃうんだよ。





【注意】以下、ネタバレを含んだ感想になります。



 この作品、印象に残ったシーンは幾つかありましたが、なんと言っても二人の初対面のシーンが圧倒的でした。Richieの「やっと大物を捕まえられる」 という達成感の表情と、Frankの「俺は捕まるようだが…お前は誰だ?」というゲームオーバーを理解しながらも目の前の存在を理解できない複雑な表情の 対比。台詞は一切なく、教会から流れてくる『Amazing Grace』が場面を彩り、「物語の終わり」ではなく、「終わりの始まり」を見事に演出していたと思いました。

  Denzel Washingtonのインタビューで、「監督は最初の8週間をかけてRichieのシーンを撮影して、次の8日間で二人のシーンを撮影して、最後の8週 間でFrankのシーンを撮影した」と明かしていましたが、そういうプロセスがあったからこそ、あの初対面のシーンに独特の緊張感と高揚感があったのか な〜なんて感じています。

 それにしても、あの当時のニューヨークは汚職がはびこっていたんですね。汚職警官多過ぎだよ…。そういう部分 に目を付け、ビジネスを成功させていったFrankって、ニューヨークの汚職が生んだ寵児だったのかもなぁ。Ridley Scott監督がFrankの人生が転落するというラストシーンが納得できなくて、撮り直したというのも頷けます。

 あと、エンディングでサラッとその後の2人を説明しちゃっている所が凄いです。かなりドラマチックな内容で、そこを映画化した方がもっと盛り上がるような気がしないでもないですが、敢えてそうすることで、2人の生き様というか男の美学が際立ったんでしょうね。