イラスト by 倉橋エリさま

父母、父、母を詠んだ歌

万葉集には、90首以上に登場します。その多くは父母のやさしさ、尊さ、大切さを詠んでいます。ここでは、「親」を詠んだ歌も載せています。なお、「母父(おもちち)」と詠まれている歌もあります。母を詠んだ歌では、「たらちねの母」という語が目立ちますね。

 

0337: 憶良らは今は罷らむ子泣くらむそれその母も我を待つらむぞ

0363: みさご居る荒磯に生ふるなのりそのよし名は告らせ親は知るとも

0443: 天雲の向伏す国のますらをと言はれし人は.......(長歌)

0800: 父母を見れば貴し妻子見ればめぐし愛し.......(長歌)

0801: ひさかたの天道は遠しなほなほに家に帰りて業を為まさに

0886: うちひさす宮へ上るとたらちしや母が手離れ.......(長歌)

0887: たらちしの母が目見ずておほほしくいづち向きてか我が別るらむ

0889: 家にありて母がとり見ば慰むる心はあらまし死なば死ぬとも

0890: 出でて行きし日を数へつつ今日今日と我を待たすらむ父母らはも

0891: 一世にはふたたび見えぬ父母を置きてや長く我が別れなむ

0892: 風交り雨降る夜の雨交り雪降る夜はすべもなく.......(長歌)

0904: 世間の貴び願ふ七種の宝も我れは何せむに.......(長歌)

0988: 春草は後はうつろふ巌なす常盤にいませ貴き我が君

1022: 父君に我れは愛子ぞ母刀自に我れは愛子ぞ.......(長歌)

1209: 人ならば母が愛子ぞあさもよし紀の川の辺の妹と背の山

1357: たらちねの母がそのなる桑すらに願へば衣に着るといふものを

1740: 春の日の霞める時に住吉の岸に出で居て.......(長歌)

1744: たらちねの母の命の言にあらば年の緒長く頼め過ぎむや

1755: 鴬の卵の中に霍公鳥独り生れて己が父に.......(長歌)

1800: 小垣内の麻を引き干し妹なねが作り着せけむ.......(長歌)

1804: 父母が成しのまにまに箸向ふ弟の命は.......(長歌)

1809: 葦屋の菟原娘子の八年子の片生ひの時ゆ.......(長歌)

2367: 玉垂の小簾のすけきに入り通ひ来ねたらちねの母が問はさば風と申さむ

2368: たらちねの母が手離れかくばかりすべなきことはいまだせなくに

2407: 百積の船隠り入る八占さし母は問ふともその名は告らじ

2495: たらつねの母が養ふ蚕の繭隠り隠れる妹を見むよしもがも

2517: たらちねの母に障らばいたづらに汝も我れも事なるべしや

2527: 誰れぞこの我が宿来呼ぶたらちねの母に嘖はえ物思ふ我れを

2537: たらちねの母に知らえず我が持てる心はよしゑ君がまにまに

2557: たらちねの母に申さば君も我れも逢ふとはなしに年ぞ経ぬべき

2570: かくのみし恋ひば死ぬべみたらちねの母にも告げずやまず通はせ

2687: 桜麻の麻生の下草露しあれば明かしてい行け母は知るとも

2760: あしひきの山沢ゑぐを摘みに行かむ日だにも逢はせ母は責むとも

2925: みどり子のためこそ乳母は求むと言へ乳飲めや君が乳母求むらむ

2926: 悔しくも老いにけるかも我が背子が求むる乳母に行かましものを

2991: たらちねの母が飼ふ蚕の繭隠りいぶせくもあるか妹に逢はずして

3000: 魂合へば相寝るものを小山田の鹿猪田守るごと母し守らすも

3077: みさご居る荒礒に生ふるなのりそのよし名は告らじ親は知るとも

3102: たらちねの母が呼ぶ名を申さめど道行く人を誰れと知りてか

3239: 近江の海泊り八十あり八十島の島の崎々.......(長歌)

3258: あらたまの年は来ゆきて玉梓の使の来ねば.......(長歌)

3285: たらちねの母にも言はずつつめりし心はよしゑ君がまにまに

3289: み佩かしを剣の池の蓮葉に溜まれる水のゆくへなみ.......(長歌)

3295: うちひさつ三宅の原ゆ直土に足踏み貫き.......(長歌)

3296: 父母に知らせぬ子ゆゑ三宅道の夏野の草をなづみ来るかも

3312: 隠口の泊瀬小国によばひせす我が天皇よ.......(長歌)

3314: つぎねふ山背道を人夫の馬より行くに己夫し.......(長歌)

3336: 鳥が音の聞こゆる海に高山を隔てになして沖つ藻を.......(長歌)

3337: 母父も妻も子どもも高々に来むと待ちけむ人の悲しさ

3339: 玉桙の道に出で立ちあしひきの野行き山行き.......(長歌)

3340: 母父も妻も子どもも高々に来むと待つらむ人の悲しさ

3359: 駿河の海おし辺に生ふる浜つづら汝を頼み母に違ひぬ

3393: 筑波嶺のをてもこのもに守部据ゑ母い守れども魂ぞ会ひにける

3519: 汝が母に嘖られ我は行く青雲の出で来我妹子相見て行かむ

3529: 等夜の野に兎ねらはりをさをさも寝なへ子ゆゑに母に嘖はえ

3688: 天皇の遠の朝廷と韓国に渡る我が背は.......(長歌)

3691: 天地とともにもがもと思ひつつありけむものを.......(長歌)

3791: みどり子の若子髪にはたらちし母に抱かえ.......(長歌)

3806: 事しあらば小泊瀬山の石城にも隠らばともにな思ひそ我が背

3811: さ丹つらふ君がみ言と玉梓の使も来ねば.......(長歌)

3814: 白玉は緒絶えしにきと聞きしゆゑにその緒また貫き我が玉にせむ

3815: 白玉の緒絶えはまことしかれどもその緒また貫き人持ち去にけり

3880: 鹿島嶺の机の島のしただみをい拾ひ持ち来て.......(長歌)

3962: 大君の任けのまにまに大夫の心振り起し.......(長歌)

4106: 大汝少彦名の神代より言ひ継ぎけらく父母を.......(長歌)

4164: ちちの実の父の命ははそ葉の母の命おほろかに.......(長歌)

4211: 古にありけるわざのくすばしき事と言ひ継ぐ.......(長歌)

4214: 天地の初めの時ゆうつそみの八十伴の男は.......(長歌)

4247: 天雲のそきへの極み我が思へる君に別れむ日近くなりぬ

4323: 時々の花は咲けども何すれぞ母とふ花の咲き出来ずけむ

4325: 父母も花にもがもや草枕旅は行くとも捧ごて行かむ

4326: 父母が殿の後方のももよ草百代いでませ我が来るまで

4328: 大君の命畏み磯に触り海原渡る父母を置きて

4331: 大君の遠の朝廷としらぬひ筑紫の国は.......(長歌)

4337: 水鳥の立ちの急ぎに父母に物言はず来にて今ぞ悔しき

4338: 畳薦牟良自が礒の離磯の母を離れて行くが悲しさ

4340: 父母え斎ひて待たね筑紫なる水漬く白玉取りて来までに

4341: 橘の美袁利の里に父を置きて道の長道は行きかてのかも

4342: 真木柱ほめて造れる殿のごといませ母刀自面変はりせず

4344: 忘らむて野行き山行き我れ来れど我が父母は忘れせのかも

4346: 父母が頭掻き撫で幸くあれて言ひし言葉ぜ忘れかねつる

4348: たらちねの母を別れてまこと我れ旅の仮廬に安く寝むかも

4356: 我が母の袖もち撫でて我がからに泣きし心を忘らえのかも

4376: 旅行きに行くと知らずて母父に言申さずて今ぞ悔しけ

4377: 母刀自も玉にもがもや戴きてみづらの中に合へ巻かまくも

4378: 月日やは過ぐは行けども母父が玉の姿は忘れせなふも

4383: 津の国の海の渚に船装ひ立し出も時に母が目もがも

4386: 我が門の五本柳いつもいつも母が恋すす業りましつしも

4392: 天地のいづれの神を祈らばか愛し母にまた言とはむ

4393: 大君の命にされば父母を斎瓮と置きて参ゐ出来にしを

4398: 大君の命畏み妻別れ悲しくはあれど大夫の.......(長歌)

4401: 唐衣裾に取り付き泣く子らを置きてぞ来のや母なしにして

4402: ちはやぶる神の御坂に幣奉り斎ふ命は母父がため

4408: 大君の任けのまにまに島守に我が立ち来れば.......(長歌)

補足

更新日: 2016年12月25日(日)