撮影 佐藤弘隆さま

万葉集には130首を越える七夕(たなばた)に関連する歌があります。そのほとんどは、男女の恋の物語をイメージして詠まれています。

牽牛(けんぎゅう)と織女(しょくじょ)の二つの星が年に一度しか逢うことを許されない、というお話は中国から伝わってきたものです。これに、日本にあった、棚機女(たなばたつめ)と男性の神(~彦)のお話がミックスされて、彦星(ひこぼし)と織姫星(おりひめぼし)とのお話として定着したようです。

彦星(ひこぼし)は、わし座のアルタイルという一等星、織姫星(おりひめぼし)は、こと座のベガという一等星です。7月7日の真夜中には、ほぼ頭上に天の川をはさんで二つの星を見る事ができます。

七夕を詠んだ歌に掲載してる一部の写真は栗田直幸さまのStellar Scenes Home Page にある天の川の写真集を使わせていただいています。この場を借りてお礼申し上げます。

第八巻

1518: 天の川相向き立ちて我が恋ひし君来ますなり紐解き設けな

1519: 久方の天の川瀬に舟浮けて今夜か君が我がり来まさむ

1520: 彦星は織女と天地の別れし時ゆ.......(長歌)

1521: 風雲は二つの岸に通へども我が遠妻の言ぞ通はぬ

1522: たぶてにも投げ越しつべき天の川隔てればかもあまたすべなき

1523: 秋風の吹きにし日よりいつしかと我が待ち恋ひし君ぞ来ませる

1524: 天の川いと川波は立たねどもさもらひかたし近きこの瀬を

1525: 袖振らば見も交しつべく近けども渡るすべなし秋にしあらねば

1526: 玉かぎるほのかに見えて別れなばもとなや恋ひむ逢ふ時までは

1527: 彦星の妻迎へ舟漕ぎ出らし天の川原に霧の立てるは

1528: 霞立つ天の川原に君待つとい行き帰るに裳の裾濡れぬ

1529: 天の川浮津の波音騒くなり我が待つ君し舟出すらしも

1544: 彦星の思ひますらむ心より見る我れ苦し夜の更けゆけば

1545: 織女の袖継ぐ宵の暁は川瀬の鶴は鳴かずともよし

1546: 妹がりと我が行く道の川しあればつくめ結ぶと夜ぞ更けにける

第九巻

1686: 彦星のかざしの玉は妻恋ひに乱れにけらしこの川の瀬に

1764: 久方の天の川原に上つ瀬に玉橋渡し........(長歌)

1765: 天の川霧立ちわたる今日今日と我が待つ君し舟出すらしも

第十巻

1996: 天の川水さへに照る舟泊てて舟なる人は妹と見えきや

1997: 久方の天の川原にぬえ鳥のうら歎げましつすべなきまでに

1998: 我が恋を嬬は知れるを行く舟の過ぎて来べしや言も告げなむ

1999: 赤らひく色ぐはし子をしば見れば人妻ゆゑに我れ恋ひぬべし

2000: 天の川安の渡りに舟浮けて秋立つ待つと妹に告げこそ

2001: 大空ゆ通ふ我れすら汝がゆゑに天の川道をなづみてぞ来し

2002: 八千桙の神の御代よりともし妻人知りにけり継ぎてし思へば

2003: 我が恋ふる丹のほの面わこよひもか天の川原に石枕まかむ

2004: 己夫にともしき子らは泊てむ津の荒礒巻きて寝む君待ちかてに

2005: 天地と別れし時ゆ己が妻しかぞ年にある秋待つ我れは

2006: 彦星は嘆かす妻に言だにも告げにぞ来つる見れば苦しみ

2007: ひさかたの天つしるしと水無し川隔てて置きし神代し恨めし

2008: ぬばたまの夜霧に隠り遠くとも妹が伝へは早く告げこそ

2009: 汝が恋ふる妹の命は飽き足らに袖振る見えつ雲隠るまで

2010: 夕星も通ふ天道をいつまでか仰ぎて待たむ月人壮士

2011: 天の川い向ひ立ちて恋しらに言だに告げむ妻と言ふまでは

2012: 白玉の五百つ集ひを解きもみず我は干しかてぬ逢はむ日待つに

2013: 天の川水蔭草の秋風に靡かふ見れば時は来にけり

2014: 我が待ちし秋萩咲きぬ今だにもにほひに行かな彼方人に

2015: 我が背子にうら恋ひ居れば天の川夜舟漕ぐなる楫の音聞こゆ

2016: ま日長く恋ふる心ゆ秋風に妹が音聞こゆ紐解き行かな

2017: 恋ひしくは日長きものを今だにもともしむべしや逢ふべき夜だに

2018: 天の川去年の渡りで移ろへば川瀬を踏むに夜ぞ更けにける

2019: いにしへゆあげてし服も顧みず天の川津に年ぞ経にける

2020: 天の川夜船を漕ぎて明けぬとも逢はむと思ふ夜袖交へずあらむ

2021: 遠妻と手枕交へて寝たる夜は鶏がねな鳴き明けば明けぬとも

2022: 相見らく飽き足らねどもいなのめの明けさりにけり舟出せむ妻

2023: さ寝そめていくだもあらねば白栲の帯乞ふべしや恋も過ぎねば

2024: 万代にたづさはり居て相見とも思ひ過ぐべき恋にあらなくに

2025: 万代に照るべき月も雲隠り苦しきものぞ逢はむと思へど

2026: 白雲の五百重に隠り遠くとも宵さらず見む妹があたりは

2027: 我がためと織女のそのやどに織る白栲は織りてけむかも

2028: 君に逢はず久しき時ゆ織る服の白栲衣垢付くまでに

2029: 天の川楫の音聞こゆ彦星と織女と今夜逢ふらしも

2030: 秋されば川霧立てる天の川川に向き居て恋ふる夜ぞ多き

2031: よしゑやし直ならずともぬえ鳥のうら嘆げ居りと告げむ子もがも

2032: 一年に七日の夜のみ逢ふ人の恋も過ぎねば夜は更けゆくも

2033: 天の川安の川原定而神競者磨待無

2034: 織女の五百機立てて織る布の秋さり衣誰れか取り見む

2035: 年にありて今か巻くらむぬばたまの夜霧隠れる遠妻の手を

2036: 我が待ちし秋は来りぬ妹と我れと何事あれぞ紐解かずあらむ

2037: 年の恋今夜尽して明日よりは常のごとくや我が恋ひ居らむ

2038: 逢はなくは日長きものを天の川隔ててまたや我が恋ひ居らむ

2039: 恋しけく日長きものを逢ふべくある宵だに君が来まさずあるらむ

2040: 彦星と織女と今夜逢ふ天の川門に波立つなゆめ

2041: 秋風の吹きただよはす白雲は織女の天つ領巾かも

2042: しばしばも相見ぬ君を天の川舟出早せよ夜の更けぬ間に

2043: 秋風の清き夕に天の川舟漕ぎ渡る月人壮士

2044: 天の川霧立ちわたり彦星の楫の音聞こゆ夜の更けゆけば

2045: 君が舟今漕ぎ来らし天の川霧立ちわたるこの川の瀬に

2046: 秋風に川波立ちぬしましくは八十の舟津にみ舟留めよ

2047: 天の川川の音清し彦星の秋漕ぐ舟の波のさわきか

2048: 天の川川門に立ちて我が恋ひし君来ますなり紐解き待たむ

2049: 天の川川門に居りて年月を恋ひ来し君に今夜逢へるかも

2050: 明日よりは我が玉床をうち掃ひ君と寐ねずてひとりかも寝む

2051: 天の原行きて射てむと白真弓引きて隠れる月人壮士

2052: この夕降りくる雨は彦星の早漕ぐ舟の櫂の散りかも

2053: 天の川八十瀬霧らへり彦星の時待つ舟は今し漕ぐらし

2054: 風吹きて川波立ちぬ引き船に渡りも来ませ夜の更けぬ間に

2055: 天の川遠き渡りはなけれども君が舟出は年にこそ待て

2056: 天の川打橋渡せ妹が家道やまず通はむ時待たずとも

2057: 月重ね我が思ふ妹に逢へる夜は今し七夜を継ぎこせぬかも

2058: 年に装る我が舟漕がむ天の川風は吹くとも波立つなゆめ

2059: 天の川波は立つとも我が舟はいざ漕ぎ出でむ夜の更けぬ間に

2060: ただ今夜逢ひたる子らに言どひもいまだせずしてさ夜ぞ明けにける

2061: 天の川白波高し我が恋ふる君が舟出は今しすらしも

2062: 機物のまね木持ち行きて天の川打橋渡す君が来むため

2063: 天の川霧立ち上る織女の雲の衣のかへる袖かも

2064: いにしへゆ織りてし服をこの夕衣に縫ひて君待つ我れを

2065: 足玉も手玉もゆらに織る服を君が御衣に縫ひもあへむかも

2066: 月日おき逢ひてしあれば別れまく惜しくある君は明日さへもがも

2067: 天の川渡り瀬深み舟浮けて漕ぎ来る君が楫の音聞こゆ

2068: 天の原降り放け見れば天の川霧立ちわたる君は来ぬらし

2069: 天の川瀬ごとに幣をたてまつる心は君を幸く来ませと

2070: 久方の天の川津に舟浮けて君待つ夜らは明けずもあらぬか

2071: 天の川なづさひ渡る君が手もいまだまかねば夜の更けぬらく

2072: 渡り守舟渡せをと呼ぶ声の至らねばかも楫の音のせぬ

2073: ま日長く川に向き立ちありし袖今夜巻かむと思はくがよさ

2074: 天の川渡り瀬ごとに思ひつつ来しくもしるし逢へらく思へば

2075: 人さへや見継がずあらむ彦星の妻呼ぶ舟の近づき行くを

2076: 天の川瀬を早みかもぬばたまの夜は更けにつつ逢はぬ彦星

2077: 渡り守舟早渡せ一年にふたたび通ふ君にあらなくに

2078: 玉葛絶えぬものからさ寝らくは年の渡りにただ一夜のみ

2079: 恋ふる日は日長きものを今夜だにともしむべしや逢ふべきものを

2080: 織女の今夜逢ひなば常のごと明日を隔てて年は長けむ

2081: 天の川棚橋渡せ織女のい渡らさむに棚橋渡せ

2082: 天の川川門八十ありいづくにか君がみ舟を我が待ち居らむ

2083: 秋風の吹きにし日より天の川瀬に出で立ちて待つと告げこそ

2084: 天の川去年の渡り瀬荒れにけり君が来まさむ道の知らなく

2085: 天の川瀬々に白波高けども直渡り来ぬ待たば苦しみ

2086: 彦星の妻呼ぶ舟の引き綱の絶えむと君を我が思はなくに

2087: 渡り守舟出し出でむ今夜のみ相見て後は逢はじものかも

2088: 我が隠せる楫棹なくて渡り守舟貸さめやもしましはあり待て

2089: 天地の初めの時ゆ天の川い向ひ居りて.......(長歌)

2090: 高麗錦紐解きかはし天人の妻問ふ宵ぞ我れも偲はむ

2091: 彦星の川瀬を渡るさ小舟のい行きて泊てむ川津し思ほゆ

2092: 天地と別れし時ゆ久方の天つしるしと.......(長歌)

2093: 妹に逢ふ時片待つとひさかたの天の川原に月ぞ経にける

第十三巻

3264: 年渡るまでにも人はありといふをいつの間にぞも我が恋ひにける

3299: 見わたしに妹らは立たしこの方に.......(長歌)

第十五巻

3611: 大船に真楫しじ貫き海原を漕ぎ出て渡る月人壮士

3656: 秋萩ににほへる我が裳濡れぬとも君が御船の綱し取りてば

3657: 年にありて一夜妹に逢ふ彦星も我れにまさりて思ふらめやも

3658: 夕月夜影立ち寄り合ひ天の川漕ぐ船人を見るが羨しさ

第十七巻

3900: 織女し舟乗りすらしまそ鏡清き月夜に雲立ちわたる

第十八巻

4125: 天照らす神の御代より安の川中に隔てて.......(長歌)

4126: 天の川橋渡せらばその上ゆもい渡らさむを秋にあらずとも

4127: 安の川こ向ひ立ちて年の恋日長き子らが妻どひの夜ぞ

第十九巻

4163: 妹が袖我れ枕かむ川の瀬に霧立ちわたれさ夜更けぬとに

第二十巻

4306: 初秋風涼しき夕解かむとぞ紐は結びし妹に逢はむため

4307: 秋と言へば心ぞ痛きうたて異に花になそへて見まく欲りかも

4308: 初尾花花に見むとし天の川へなりにけらし年の緒長く

4309: 秋風に靡く川辺のにこ草のにこよかにしも思ほゆるかも

4310: 秋されば霧立ちわたる天の川石並置かば継ぎて見むかも

4311: 秋風に今か今かと紐解きてうら待ち居るに月かたぶきぬ

4312: 秋草に置く白露の飽かずのみ相見るものを月をし待たむ

4313: 青波に袖さへ濡れて漕ぐ舟のかし振るほとにさ夜更けなむか

更新日: 2017年07月09日(日)