柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)

イラスト by 名倉エリ様

万葉集の代表的歌人の一人として有名です。出生などはわかっていません。万葉集の第2巻には、石見(いわみ)国で死に臨んだときの歌があります。この歌の直後に「寧樂宮 和銅四年・・・」の題詞があるので、人麻呂が亡くなったのは、それ以前ではないかと考えられます(ただし、はっきりとはしていません)。

柿本人麻呂が詠んだ歌

人麻呂像 撮影 by きょう

万葉集には、柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)の作とされている歌と、柿本人麻呂歌集に載っていたとされる歌があります。ここでは、柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)の作とされている歌をリストしておきます。4巻までに載っているものがほとんどですね。

写真は、奈良県宇陀市大宇陀区中庄の人麻呂公園にある人麻呂像です。

年代のわかっている歌には、次のようなものがあります。

  • 持統3年(689): 日並皇子尊(ひなみしのみこのみこと:草壁皇子(くさかべのみこ))の殯宮(あらきのみや)の挽歌(ばんか)
  • 持統10年(696): 高市皇子尊(たけちのみこのみこと)の城上(きのへ)殯宮(あらきのみや)の挽歌(ばんか)
  • 文武4年(700): 明日香皇女(あすかのひめみこ)の殯宮(あらきのみや)の挽歌(ばんか)

0029: 玉たすき畝傍の山の橿原の.......(長歌)

0030: 楽浪の志賀の辛崎幸くあれど大宮人の舟待ちかねつ

0031: 楽浪の志賀の大わだ淀むとも昔の人にまたも逢はめやも

0036: やすみしし我が大君のきこしめす.......(長歌)

0037: 見れど飽かぬ吉野の川の常滑の絶ゆることなくまたかへり見む

0038: やすみしし我が大君神ながら神さびせすと.......(長歌)

0039: 山川も依りて仕ふる神ながらたぎつ河内に舟出せすかも

0040: 嗚呼見の浦に舟乗りすらむをとめらが玉裳の裾に潮満つらむか

0041: 釧着く答志の崎に今日もかも大宮人の玉藻刈るらむ

0042: 潮騒に伊良虞の島辺漕ぐ舟に妹乗るらむか荒き島廻を

0045: やすみしし我が大君高照らす日の皇子.......(長歌)

0046: 安騎の野に宿る旅人うち靡き寐も寝らめやもいにしへ思ふに

0047: ま草刈る荒野にはあれど黄葉の過ぎにし君が形見とぞ来し

0048: 東の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ

0049: 日並の皇子の命の馬並めてみ狩り立たしし時は来向ふ

0131: 石見の海角の浦廻を浦なしと.......(長歌)

0132: 石見のや高角山の木の間より我が振る袖を妹見つらむか

0133: 笹の葉はみ山もさやにさやげども我れは妹思ふ別れ来ぬれば

0134: 石見なる高角山の木の間ゆも我が袖振るを妹見けむかも

0135: つのさはふ石見の海の言さへく.......(長歌)

0136: 青駒が足掻きを速み雲居にぞ妹があたりを過ぎて来にける

0137: 秋山に落つる黄葉しましくはな散り乱ひそ妹があたり見む

0138: 石見の海津の浦をなみ浦なしと.......(長歌)

0139: 石見の海打歌の山の木の間より我が振る袖を妹見つらむか

0140: な思ひと君は言へども逢はむ時いつと知りてか我が恋ひずあらむ(依羅娘子:よさみのおとめ)

0167: 天地の初めの時ひさかたの.......(長歌)

0168: ひさかたの天見るごとく仰ぎ見し皇子の御門の荒れまく惜しも

0169: あかねさす日は照らせれどぬばたまの夜渡る月の隠らく惜しも

0170: 嶋の宮まがりの池の放ち鳥人目に恋ひて池に潜かず

0194: 飛ぶ鳥の明日香の川の上つ瀬に生ふる.......(長歌)

0195: 敷栲の袖交へし君玉垂の越智野過ぎ行くまたも逢はめやも

0196: 飛ぶ鳥の明日香の川の上つ瀬に.......(長歌)

0197: 明日香川しがらみ渡し塞かませば流るる水ものどにかあらまし

0198: 明日香川明日だに見むと思へやも我が大君の御名忘れせぬ

0199: かけまくもゆゆしきかも言はまくも.......(長歌)

0200: ひさかたの天知らしぬる君故に日月も知らず恋ひわたるかも

0201: 埴安の池の堤の隠り沼のゆくへを知らに舎人は惑ふ

0202: 哭沢の神社に三輪据ゑ祈れども我が大君は高日知らしぬ

0207: 天飛ぶや軽の道は我妹子が里にしあれば.......(長歌)

0208: 秋山の黄葉を茂み惑ひぬる妹を求めむ山道知らずも

0209: 黄葉の散りゆくなへに玉梓の使を見れば逢ひし日思ほゆ

0210: うつせみと思ひし時に取り持ちて.......(長歌)

0211: 去年見てし秋の月夜は照らせれど相見し妹はいや年離る

0212: 衾道を引手の山に妹を置きて山道を行けば生けりともなし

0213: うつそみと思ひし時にたづさはり.......(長歌)

0214: 去年見てし秋の月夜は渡れども相見し妹はいや年離る

0215: 衾道を引手の山に妹を置きて山道思ふに生けるともなし

0216: 家に来て我が屋を見れば玉床の外に向きけり妹が木枕

0217: 秋山のしたへる妹なよ竹のとをよる子らは.......(長歌)

0218: 楽浪の志賀津の子らが罷り道の川瀬の道を見れば寂しも

0219: そら数ふ大津の子が逢ひし日におほに見しかば今ぞ悔しき

0220: 玉藻よし讃岐の国は国からか.......(長歌)

0221: 妻もあらば摘みて食げまし沙弥の山野の上のうはぎ過ぎにけらずや

0222: 沖つ波来寄る荒礒を敷栲の枕とまきて寝せる君かも

0223: 鴨山の岩根しまける我れをかも知らにと妹が待ちつつあるらむ

0227: 天離る鄙の荒野に君を置きて思ひつつあれば生けるともなし

0235: 大君は神にしませば天雲の雷の上に廬りせるかも

0239: やすみしし我が大君高照らす.......(長歌)

0240: ひさかたの天行く月を網に刺し我が大君は蓋にせり

0241: 大君は神にしませば真木の立つ荒山中に海を成すかも

0249: 御津の崎波を畏み隠江の舟公宣奴嶋尓

0250: 玉藻刈る敏馬を過ぎて夏草の野島が崎に船近づきぬ

0251: 淡路の野島が崎の浜風に妹が結びし紐吹き返す

0252: 荒栲の藤江の浦に鱸釣る海人とか見らむ旅行く我れを

0253: 稲日野も行き過ぎかてに思へれば心恋しき加古の島見ゆ

0254: 燈火の明石大門に入らむ日や漕ぎ別れなむ家のあたり見ず

0255: 天離る鄙の長道ゆ恋ひ来れば明石の門より大和島見ゆ

0256: 笥飯の海の庭よくあらし刈薦の乱れて出づ見ゆ海人の釣船

0261: やすみしし我が大君高照らす日の御子.......(長歌)

0262: 矢釣山木立も見えず降りまがふ雪に騒ける朝楽しも

0264: もののふの八十宇治川の網代木にいさよふ波のゆくへ知らずも

0266: 近江の海夕波千鳥汝が鳴けば心もしのにいにしへ思ほゆ

0303: 名ぐはしき印南の海の沖つ波千重に隠りぬ大和島根は

0304: 大君の遠の朝廷とあり通ふ島門を見れば神代し思ほゆ

0423: つのさはふ磐余の道を朝さらず.......(長歌)

0426: 草枕旅の宿りに誰が嬬か国忘れたる家待たまくに

0428: こもりくの初瀬の山の山の際にいさよふ雲は妹にかもあらむ

0429: 山の際ゆ出雲の子らは霧なれや吉野の山の嶺にたなびく

0430: 八雲さす出雲の子らが黒髪は吉野の川の沖になづさふ

0496: み熊野の浦の浜木綿百重なす心は思へど直に逢はぬかも

0497: いにしへにありけむ人も我がごとか妹に恋ひつつ寐ねかてずけむ

0498: 今のみのわざにはあらずいにしへの人ぞまさりて音にさへ泣きし

0499: 百重にも来及かぬかもと思へかも君が使の見れど飽かずあらむ

0501: 娘子らが袖布留山の瑞垣の久しき時ゆ思ひき我れは

0502: 夏野行く牡鹿の角の束の間も妹が心を忘れて思へや

0503: 玉衣のさゐさゐしづみ家の妹に物言はず来にて思ひかねつも

1710: 我妹子が赤裳ひづちて植ゑし田を刈りて収めむ倉無の浜

1711: 百伝ふ八十の島廻を漕ぎ来れど粟の小島は見れど飽かぬかも

1715: 楽浪の比良山風の海吹けば釣りする海人の袖返る見ゆ

1761: 三諸の神奈備山にたち向ふ御垣の山に.......(長歌)

1762: 明日の宵逢はざらめやもあしひきの山彦響め呼びたて鳴くも

2634: 里遠み恋わびにけりまそ鏡面影去らず夢に見えこそ

3606: 玉藻刈る処女を過ぎて夏草の野島が崎に廬りす我れは

3608: 天離る鄙の長道を恋ひ来れば明石の門より家のあたり見ゆ

3609: 武庫の海の庭よくあらし漁りする海人の釣舟波の上ゆ見ゆ

3610: 安胡の浦に舟乗りすらむ娘子らが赤裳の裾に潮満つらむか

3611: 大船に真楫しじ貫き海原を漕ぎ出て渡る月人壮士

更新日: 2017年05月07日(日)