
黄葉(もみち)
現在では、落葉樹の葉の色が変わることをいいますが、万葉集には草木の葉が黄色や赤色に変化することをいうようです。
黄葉(もみち)を詠んだ歌
万葉集の歌に詠まれる「もみじ」は、「黄葉」と書かれているものが圧倒的で、「紅葉」はごくわずかです。その理由として、「奈良時代には黄色く色づくものが注目されたためだ」、という説がありますが、否定的な説もあります。
黄葉(もみち)を詠んだ歌は100首を越えますが、その多くは、巻8と巻10に集中しています。なお、黄葉を春の花と対照している歌もいくつか見られます。
0016: 冬ごもり春さり来れば鳴かざりし鳥も来鳴きぬ.......(長歌)
0038: やすみしし我が大君神ながら神さびせすとて.......(長歌)
0047: ま草刈る荒野にはあれど黄葉の過ぎにし君が形見とぞ来し
0135: つのさはふ石見の海の言さへく唐の崎なる.......(長歌)
0137: 秋山に落つる黄葉しましくはな散り乱ひそ妹があたり見む
0159: やすみしし我が大君の夕されば見したまふらし.......(長歌)
0196: 飛ぶ鳥の明日香の川の上つ瀬に.......(長歌)
0207: 天飛ぶや軽の道は我妹子が里にしあれば.......(長歌)
0208: 秋山の黄葉を茂み惑ひぬる妹を求めむ山道知らずも
0209: 黄葉の散りゆくなへに玉梓の使を見れば逢ひし日思ほゆ
0423: つのさはふ磐余の道を朝さらず行きけむ人の.......(長歌)
0459: 見れど飽かずいましし君が黄葉のうつりい行けば悲しくもあるか
0543: 大君の行幸のまにまもののふの八十伴の.......(長歌)
0623: 松の葉に月はゆつりぬ黄葉の過ぐれや君が逢はぬ夜ぞ多き
1053: 吾が大君神の命の高知らす布当の宮は.......(長歌)
1094: 我が衣色取り染めむ味酒三室の山は黄葉しにけり
1306: この山の黄葉が下の花を我れはつはつに見てなほ恋ひにけり
1409: 秋山の黄葉あはれとうらぶれて入りにし妹は待てど来まさず
1512: 経もなく緯も定めず娘子らが織る黄葉に霜な降りそね
1513: 今朝の朝明雁が音聞きつ春日山もみちにけらし我が心痛し
1516: 秋山にもみつ木の葉のうつりなばさらにや秋を見まく欲りせむ
1517: 味酒三輪のはふりの山照らす秋の黄葉の散らまく惜しも
1536: 宵に逢ひて朝面なみ名張野の萩は散りにき黄葉早継げ
1554: 大君の御笠の山の黄葉は今日の時雨に散りか過ぎなむ
1571: 春日野に時雨降る見ゆ明日よりは黄葉かざさむ高円の山
1575: 雲の上に鳴きつる雁の寒きなへ萩の下葉はもみちぬるかも
1581: 手折らずて散りなば惜しと我が思ひし秋の黄葉をかざしつるかも
1582: めづらしき人に見せむと黄葉を手折りぞ我が来し雨の降らくに
1583: 黄葉を散らす時雨に濡れて来て君が黄葉をかざしつるかも
1584: めづらしと我が思ふ君は秋山の初黄葉に似てこそありけれ
1585: 奈良山の嶺の黄葉取れば散る時雨の雨し間なく降るらし
1586: 黄葉を散らまく惜しみ手折り来て今夜かざしつ何か思はむ
1587: あしひきの山の黄葉今夜もか浮かび行くらむ山川の瀬に
1588: 奈良山をにほはす黄葉手折り来て今夜かざしつ散らば散るとも
1589: 露霜にあへる黄葉を手折り来て妹とかざしつ後は散るとも
1590: 十月時雨にあへる黄葉の吹かば散りなむ風のまにまに
1591: 黄葉の過ぎまく惜しみ思ふどち遊ぶ今夜は明けずもあらぬか
1604: 秋されば春日の山の黄葉見る奈良の都の荒るらく惜しも
1623: 我が宿にもみつ蝦手見るごとに妹を懸けつつ恋ひぬ日はなし
1676: 背の山に黄葉常敷く神岳の山の黄葉は今日か散るらむ
1703: 雲隠り雁鳴く時は秋山の黄葉片待つ時は過ぐれど
1758: 筑波嶺の裾廻の田居に秋田刈る妹がり遣らむ黄葉手折らな
1796: 黄葉の過ぎにし子らと携はり遊びし礒を見れば悲しも
2183: 雁がねは今は来鳴きぬ我が待ちし黄葉早継げ待たば苦しも
2184: 秋山をゆめ人懸くな忘れにしその黄葉の思ほゆらくに
2185: 大坂を我が越え来れば二上に黄葉流るしぐれ降りつつ
2187: 妹が袖巻来の山の朝露ににほふ黄葉の散らまく惜しも
2188: 黄葉のにほひは繁ししかれども妻梨の木を手折りかざさむ
2189: 露霜の寒き夕の秋風にもみちにけらし妻梨の木は
2190: 我が門の浅茅色づく吉隠の浪柴の野の黄葉散るらし
2194: 雁がねの来鳴きしなへに韓衣龍田の山はもみちそめたり
2195: 雁がねの声聞くなへに明日よりは春日の山はもみちそめなむ
2196: しぐれの雨間なくし降れば真木の葉も争ひかねて色づきにけり
2197: いちしろくしぐれの雨は降らなくに大城の山は色づきにけり
2198: 風吹けば黄葉散りつつすくなくも吾の松原清くあらなくに
2199: 物思ふと隠らひ居りて今日見れば春日の山は色づきにけり
2200: 九月の白露負ひてあしひきの山のもみたむ見まくしもよし
2201: 妹がりと馬に鞍置きて生駒山うち越え来れば黄葉散りつつ
2202: 黄葉する時になるらし月人の桂の枝の色づく見れば
2203: 里ゆ異に霜は置くらし高松の野山づかさの色づく見れば
2204: 秋風の日に異に吹けば露を重み萩の下葉は色づきにけり
2205: 秋萩の下葉もみちぬあらたまの月の経ぬれば風をいたみかも
2206: まそ鏡南淵山は今日もかも白露置きて黄葉散るらむ
2207: 我がやどの浅茅色づく吉隠の夏身の上にしぐれ降るらし
2208: 雁がねの寒く鳴きしゆ水茎の岡の葛葉は色づきにけり
2209: 秋萩の下葉の黄葉花に継ぎ時過ぎゆかば後恋ひむかも
2210: 明日香川黄葉流る葛城の山の木の葉は今し散るらし
2211: 妹が紐解くと結びて龍田山今こそもみちそめてありけれ
2212: 雁がねの寒く鳴きしゆ春日なる御笠の山は色づきにけり
2213: このころの暁露に我が宿の秋の萩原色づきにけり
2214: 夕されば雁の越え行く龍田山しぐれに競ひ色づきにけり
2215: さ夜更けてしぐれな降りそ秋萩の本葉の黄葉散らまく惜しも
2216: 故郷の初黄葉を手折り持ち今日ぞ我が来し見ぬ人のため
2217: 君が家の黄葉は早く散りにけりしぐれの雨に濡れにけらしも
2218: 一年にふたたび行かぬ秋山を心に飽かず過ぐしつるかも
2237: 黄葉を散らすしぐれの降るなへに夜さへぞ寒きひとりし寝れば
2296: あしひきの山さな葛もみつまで妹に逢はずや我が恋ひ居らむ
2297: 黄葉の過ぎかてぬ子を人妻と見つつやあらむ恋しきものを
2307: 黄葉に置く白露の色端にも出でじと思へば言の繁けく
2309: 祝らが斎ふ社の黄葉も標縄越えて散るといふものを
3223: かむとけの日香空の九月のしぐれの降れば雁がねも.......(長歌)
3224: ひとりのみ見れば恋しみ神なびの山の黄葉手折り来り君
3303: 里人の我れに告ぐらく汝が恋ふるうつくし夫は.......(長歌)
3333: 大君の命畏み蜻蛉島大和を過ぎて大伴の.......(長歌)
3344: この月は君来まさむと大船の思ひ頼みて.......(長歌)
3494: 子持山若かへるでのもみつまで寝もと我は思ふ汝はあどか思ふ
3693: 黄葉の散りなむ山に宿りぬる君を待つらむ人し悲しも
3700: あしひきの山下光る黄葉の散りの乱ひは今日にもあるかも
3701: 竹敷の黄葉を見れば我妹子が待たむと言ひし時ぞ来にける
3702: 竹敷の浦廻の黄葉我れ行きて帰り来るまで散りこすなゆめ
3704: 黄葉の散らふ山辺ゆ漕ぐ船のにほひにめでて出でて来にけり
3707: 秋山の黄葉をかざし我が居れば浦潮満ち来いまだ飽かなくに
3713: 黄葉は今はうつろふ我妹子が待たむと言ひし時の経ゆけば
3716: 天雲のたゆたひ来れば九月の黄葉の山もうつろひにけり
3907: 山背の久迩の都は春されば花咲きををり秋されば.......(長歌)
3993: 藤波は咲きて散りにき卯の花は今ぞ盛りとあしひきの.......(長歌)
4160: 天地の遠き初めよ世間は常なきものと.......(長歌)
4161: 言とはぬ木すら春咲き秋づけばもみち散らくは常をなみこそ
4222: このしぐれいたくな降りそ我妹子に見せむがために黄葉取りてむ
4223: あをによし奈良人見むと我が背子が標けむ紅葉地に落ちめやも
4225: あしひきの山の紅葉にしづくあひて散らむ山道を君が越えまく
4259: 十月時雨の常か我が背子が宿の黄葉散りぬべく見ゆ
4268: この里は継ぎて霜や置く夏の野に我が見し草はもみちたりけり
4296: 天雲に雁ぞ鳴くなる高円の萩の下葉はもみちあへむかも
