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3455: 恋しけば来ませ我が背子垣つ柳末摘み枯らし我れ立ち待たむ
3456: うつせみの八十言のへは繁くとも争ひかねて我を言なすな
3457: うちひさす宮の我が背は大和女の膝まくごとに我を忘らすな
3458: 汝背の子や等里の岡道しなかだ折れ我を音し泣くよ息づくまでに
3459: 稲つけばかかる我が手を今夜もか殿の若子が取りて嘆かむ
3460: 誰れぞこの屋の戸押そぶる新嘗に我が背を遣りて斎ふこの戸を
3461: あぜと言へかさ寝に逢はなくにま日暮れて宵なは来なに明けぬしだ来る
3462: あしひきの山沢人の人さはにまなと言ふ子があやに愛しさ
3463: ま遠くの野にも逢はなむ心なく里のみ中に逢へる背なかも
3464: 人言の繁きによりてまを薦の同じ枕は我はまかじやも
3465: 高麗錦紐解き放けて寝るが上にあどせろとかもあやに愛しき
3466: ま愛しみ寝れば言に出さ寝なへば心の緒ろに乗りて愛しも
3467: 奥山の真木の板戸をとどとして我が開かむに入り来て寝さね
3468: 山鳥の峰ろのはつをに鏡懸け唱ふべみこそ汝に寄そりけめ
3469: 夕占にも今夜と告らろ我が背なはあぜぞも今夜寄しろ来まさぬ
3470: 相見ては千年やいぬるいなをかも我れやしか思ふ君待ちがてに
3471: しまらくは寝つつもあらむを夢のみにもとな見えつつ我を音し泣くる
3472: 人妻とあぜかそを言はむしからばか隣の衣を借りて着なはも
3473: 左努山に打つや斧音の遠かども寝もとか子ろが面に見えつる
3474: 植ゑ竹の本さへ響み出でて去なばいづし向きてか妹が嘆かむ
3475: 恋ひつつも居らむとすれど遊布麻山隠れし君を思ひかねつも
3476: うべ子なは我ぬに恋ふなも立と月のぬがなへ行けば恋しかるなも
3477: 東路の手児の呼坂越えて去なば我れは恋ひむな後は逢ひぬとも
3478: 遠しとふ故奈の白嶺に逢ほしだも逢はのへしだも汝にこそ寄され
3479: 安可見山草根刈り除け逢はすがへ争ふ妹しあやに愛しも
3480: 大君の命畏み愛し妹が手枕離れ夜立ち来のかも
3481: あり衣のさゑさゑしづみ家の妹に物言はず来にて思ひ苦しも
3482: 韓衣裾のうち交へ逢はねども異しき心を我が思はなくに
3483: 昼解けば解けなへ紐の我が背なに相寄るとかも夜解けやすけ
3484: 麻苧らを麻笥にふすさに績まずとも明日着せさめやいざせ小床に
3485: 剣大刀身に添ふ妹を取り見がね音をぞ泣きつる手児にあらなくに
3486: 愛し妹を弓束並べ巻きもころ男のこととし言はばいや勝たましに
3487: 梓弓末に玉巻きかくすすぞ寝なななりにし奥をかぬかぬ
3488: 生ふしもとこの本山のましばにも告らぬ妹が名かたに出でむかも
3489: 梓弓欲良の山辺の茂かくに妹ろを立ててさ寝処払ふも
3490: 梓弓末は寄り寝むまさかこそ人目を多み汝をはしに置けれ
3491: やなぎこそ伐れば生えすれ世の人の恋に死なむをいかにせよとぞ
3492: 小山田の池の堤にさす柳成りも成らずも汝と二人はも
3493: 遅速も汝をこそ待ため向つ峰の椎の小やで枝の逢ひは違はじ
3494: 子持山若かへるでのもみつまで寝もと我は思ふ汝はあどか思ふ
3495: 巌ろの沿ひの若松限りとや君が来まさぬうらもとなくも
3496: 橘の古婆の放髪が思ふなむ心うつくしいで我れは行かな
3497: 川上の根白高萱あやにあやにさ寝さ寝てこそ言に出にしか
3498: 海原の根柔ら小菅あまたあれば君は忘らす我れ忘るれや
3499: 岡に寄せ我が刈る萱のさね萱のまことなごやは寝ろとへなかも
3500: 紫草は根をかも終ふる人の子のうら愛しけを寝を終へなくに
3501: 安波峰ろの峰ろ田に生はるたはみづら引かばぬるぬる我を言な絶え
3502: 我が目妻人は放くれど朝顔のとしさへこごと我は離るがへ
3503: 安齊可潟潮干のゆたに思へらばうけらが花の色に出めやも
3504: 春へ咲く藤の末葉のうら安にさ寝る夜ぞなき子ろをし思へば
3505: うちひさつ宮能瀬川のかほ花の恋ひてか寝らむ昨夜も今夜も
3506: 新室のこどきに至ればはだすすき穂に出し君が見えぬこのころ
3507: 谷狭み峰に延ひたる玉葛絶えむの心我が思はなくに
3508: しばつきの御宇良崎なるねつこ草相見ずあらば我れ恋ひめやも
3509: 栲衾白山風の寝なへども子ろがおそきのあろこそえしも
3510: み空行く雲にもがもな今日行きて妹に言どひ明日帰り来む
3511: 青嶺ろにたなびく雲のいさよひに物をぞ思ふ年のこのころ
3512: 一嶺ろに言はるものから青嶺ろにいさよふ雲の寄そり妻はも
3513: 夕さればみ山を去らぬ布雲のあぜか絶えむと言ひし子ろはも
3514: 高き嶺に雲のつくのす我れさへに君につきなな高嶺と思ひて
3515: 我が面の忘れむしだは国はふり嶺に立つ雲を見つつ偲はせ
3516: 対馬の嶺は下雲あらなふ可牟の嶺にたなびく雲を見つつ偲はも
3517: 白雲の絶えにし妹をあぜせろと心に乗りてここば愛しけ
3518: 岩の上にいかかる雲のかのまづく人ぞおたはふいざ寝しめとら
3519: 汝が母に嘖られ我は行く青雲の出で来我妹子相見て行かむ
3520: 面形の忘れむしだは大野ろにたなびく雲を見つつ偲はむ
3521: 烏とふ大をそ鳥のまさでにも来まさぬ君をころくとぞ鳴く
3522: 昨夜こそば子ろとさ寝しか雲の上ゆ鳴き行く鶴の間遠く思ほゆ
3523: 坂越えて安倍の田の面に居る鶴のともしき君は明日さへもがも
3524: まを薦の節の間近くて逢はなへば沖つま鴨の嘆きぞ我がする
3525: 水久君野に鴨の這ほのす子ろが上に言緒ろ延へていまだ寝なふも
3526: 沼二つ通は鳥が巣我が心二行くなもとなよ思はりそね
3527: 沖に住も小鴨のもころ八尺鳥息づく妹を置きて来のかも
3528: 水鳥の立たむ装ひに妹のらに物言はず来にて思ひかねつも
3529: 等夜の野に兎ねらはりをさをさも寝なへ子ゆゑに母に嘖はえ
3530: さを鹿の伏すや草むら見えずとも子ろが金門よ行かくしえしも
3531: 妹をこそ相見に来しか眉引きの横山辺ろの獣なす思へる
3532: 春の野に草食む駒の口やまず我を偲ふらむ家の子ろはも
3533: 人の子の愛しけしだは浜洲鳥足悩む駒の惜しけくもなし
3534: 赤駒が門出をしつつ出でかてにせしを見立てし家の子らはも
3535: 己が命をおほにな思ひそ庭に立ち笑ますがからに駒に逢ふものを
3536: 赤駒を打ちてさ緒引き心引きいかなる背なか我がり来むと言ふ
3537: 柵越しに麦食む駒のはつはつに相見し子らしあやに愛しも
3538: 広橋を馬越しがねて心のみ妹がり遣りて我はここにして
3539: あずの上に駒を繋ぎて危ほかど人妻子ろを息に我がする
3540: 左和多里の手児にい行き逢ひ赤駒が足掻きを速み言問はず来ぬ
3541: あずへから駒の行ごのす危はとも人妻子ろをまゆかせらふも
3542: さざれ石に駒を馳させて心痛み我が思ふ妹が家のあたりかも
3543: むろがやの都留の堤の成りぬがに子ろは言へどもいまだ寝なくに
3544: あすか川下濁れるを知らずして背ななと二人さ寝て悔しも
3545: あすか川堰くと知りせばあまた夜も率寝て来ましを堰くと知りせば
3546: 青柳の張らろ川門に汝を待つと清水は汲まず立ち処平すも
3547: あぢの棲む須沙の入江の隠り沼のあな息づかし見ず久にして
3548: 鳴る瀬ろにこつの寄すなすいとのきて愛しけ背ろに人さへ寄すも
3549: 多由比潟潮満ちわたるいづゆかも愛しき背ろが我がり通はむ
3550: おしていなと稲は搗かねど波の穂のいたぶらしもよ昨夜ひとり寝て
3551: 阿遅可麻の潟にさく波平瀬にも紐解くものか愛しけを置きて
3552: まつが浦にさわゑうら立ちま人言思ほすなもろ我が思ほのすも
3553: あじかまの可家の港に入る潮のこてたずくもが入りて寝まくも
3554: 妹が寝る床のあたりに岩ぐくる水にもがもよ入りて寝まくも
3555: 麻久良我の許我の渡りの韓楫の音高しもな寝なへ子ゆゑに
3556: 潮船の置かれば愛しさ寝つれば人言繁し汝をどかもしむ
3557: 悩ましけ人妻かもよ漕ぐ舟の忘れはせなないや思ひ増すに
3558: 逢はずして行かば惜しけむ麻久良我の許我漕ぐ船に君も逢はぬかも
3559: 大船を舳ゆも艫ゆも堅めてし許曽の里人あらはさめかも
3560: ま金ふく丹生のま朱の色に出て言はなくのみぞ我が恋ふらくは
3561: 金門田を荒垣ま斎み日が照れば雨を待とのす君をと待とも
3562: 荒礒やに生ふる玉藻のうち靡きひとりや寝らむ我を待ちかねて
3563: 比多潟の礒のわかめの立ち乱え我をか待つなも昨夜も今夜も
3564: 古須気ろの浦吹く風のあどすすか愛しけ子ろを思ひ過ごさむ
3565: かの子ろと寝ずやなりなむはだすすき宇良野の山に月片寄るも
3566: 我妹子に我が恋ひ死なばそわへかも神に負ほせむ心知らずて
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