川藻 撮影(2016.09) by きょう

藻(も)

海や淡水の水性植物、たとえば昆布や若布(わかめ)などの総称です。古くは藻葉などと言われたそうです。海藻類は、塩焼き、食用として使われていました。海藻類にはミネラル(鉄やカルシウムなど)・ビタミンAが豊富に含まれているので当時の健康食品としては最適だったのでしょうね。

藻(も)を詠んだ歌

万葉集には80首以上に登場します。厳藻(いつも)、藻塩(もしお)、奥つ藻、玉藻(たまも: 藻の美称)などとして登場します。

0023: 打ち麻を麻続の王海人なれや伊良虞の島の玉藻刈ります

0024: うつせみの命を惜しみ波に濡れ伊良虞の島の玉藻刈り食む

0041: 釧着く答志の崎に今日もかも大宮人の玉藻刈るらむ

0043: 我が背子はいづく行くらむ沖つ藻の名張の山を今日か越ゆらむ

0050: やすみしし我が大君高照らす日の皇子.......(長歌)

0072: 玉藻刈る沖へは漕がじ敷栲の枕のあたり忘れかねつも

0121: 夕さらば潮満ち来なむ住吉の浅香の浦に玉藻刈りてな

0131: 石見の海角の浦廻を浦なしと人こそ見らめ.......(長歌)

0135: つのさはふ石見の海の言さへく唐の崎なる.......(長歌)

0138: 石見の海津の浦をなみ浦なしと人こそ見らめ.......(長歌)

0162: 明日香の清御原の宮に天の下知らしめしし.......(長歌)

0194: 飛ぶ鳥の明日香の川の上つ瀬に生ふる玉藻は.......(長歌)

0196: 飛ぶ鳥の明日香の川の上つ瀬に石橋渡し.......(長歌)

0207: 天飛ぶや軽の道は我妹子が里にしあれば.......(長歌)

0220: 玉藻よし讃岐の国は国からか見れども飽かぬ.......(長歌)

0250: 玉藻刈る敏馬を過ぎて夏草の野島が崎に船近づきぬ

0278: 志賀の海女は藻刈り塩焼き暇なみ櫛笥の小櫛取りも見なくに

0293: 潮干の御津の海女のくぐつ持ち玉藻刈るらむいざ行きて見む

0360: 潮干なば玉藻刈りつめ家の妹が浜づと乞はば何を示さむ

0362: みさご居る磯廻に生ふるなのりその名は告らしてよ親は知るとも

0363: みさご居る荒磯に生ふるなのりそのよし名は告らせ親は知るとも

0390: 軽の池の浦廻行き廻る鴨すらに玉藻の上にひとり寝なくに

0433: 葛飾の真間の入江にうち靡く玉藻刈りけむ手児名し思ほゆ

0491: 川上のいつ藻の花のいつもいつも来ませ我が背子時じけめやも

0511: 我が背子はいづく行くらむ沖つ藻の名張の山を今日か越ゆらむ

0619: おしてる難波の菅のねもころに君が聞こして.......(長歌)

0625: 沖辺行き辺を行き今や妹がため我が漁れる藻臥束鮒

0659: あらかじめ人言繁しかくしあらばしゑや我が背子奥もいかにあらめ
  ........(藻そのものを詠んだ歌ではありません)

0782: 風高く辺には吹けども妹がため袖さへ濡れて刈れる玉藻ぞ

0917: やすみしし我ご大君の常宮と仕へ奉れる.......(長歌)

0918: 沖つ島荒礒の玉藻潮干満ちい隠りゆかば思ほえむかも

0931: 鯨魚取り浜辺を清みうち靡き生ふる玉藻に.......(長歌)

0935: 名寸隅の舟瀬ゆ見ゆる淡路島松帆の浦に.......(長歌)

0936: 玉藻刈る海人娘子ども見に行かむ舟楫もがも波高くとも

0943: 玉藻刈る唐荷の島に島廻する鵜にしもあれや家思はずあらむ

0946: 御食向ふ淡路の島に直向ふ敏馬の浦の.......(長歌)

0958: 時つ風吹くべくなりぬ香椎潟潮干の浦に玉藻刈りてな

1065: 八千桙の神の御代より百舟の泊つる泊りと.......(長歌)

1136: 宇治川に生ふる菅藻を川早み採らず来にけりつとにせましを

1152: 楫の音ぞほのかにすなる海人娘子沖つ藻刈りに舟出すらしも

1157: 時つ風吹かまく知らず吾児の海の朝明の潮に玉藻刈りてな

1167: あさりすと礒に我が見しなのりそをいづれの島の海人か刈りけむ

1168: 今日もかも沖つ玉藻は白波の八重をるが上に乱れてあるらむ

1199: 藻刈り舟沖漕ぎ来らし妹が島形見の浦に鶴翔る見ゆ

1206: 沖つ波辺つ藻巻き持ち寄せ来とも君にまされる玉寄せめやも

1227: 礒に立ち沖辺を見れば藻刈り舟海人漕ぎ出らし鴨翔る見ゆ

1248: 我妹子と見つつ偲はむ沖つ藻の花咲きたらば我れに告げこそ

1290: 海の底沖つ玉藻のなのりその花妹と我れとここにしありとなのりその花

1380: 明日香川瀬々に玉藻は生ひたれどしがらみあれば靡きあはなくに

1394: 潮満てば入りぬる礒の草なれや見らく少く恋ふらくの多き

1395: 沖つ波寄する荒礒のなのりそは心のうちに障みとなれり

1396: 紫の名高の浦のなのりその礒に靡かむ時待つ我れを

1397: 荒礒越す波は畏ししかすがに海の玉藻の憎くはあらずて

1685: 川の瀬のたぎつを見れば玉藻かも散り乱れたる川の常かも

1726: 難波潟潮干に出でて玉藻刈る海人娘子ども汝が名告らさね

1930: 梓弓引津の辺なるなのりその花咲くまでに逢はぬ君かも

1931: 川の上のいつ藻の花のいつもいつも来ませ我が背子時じけめやも

2437: 沖つ裳を隠さふ波の五百重波千重しくしくに恋ひわたるかも

2482: 水底に生ふる玉藻のうち靡き心は寄りて恋ふるこのころ

2483: 敷栲の衣手離れて玉藻なす靡きか寝らむ我を待ちかてに

2721: 玉藻刈るゐでのしがらみ薄みかも恋の淀める我が心かも

2743: なかなかに君に恋ひずは比良の浦の海人ならましを玉藻刈りつつ

2778: 水底に生ふる玉藻の生ひ出でずよしこのころはかくて通はむ

2780: 紫の名高の浦の靡き藻の心は妹に寄りにしものを

2781: 海の底奥を深めて生ふる藻のもとも今こそ恋はすべなき

2782: さ寝がには誰れとも寝めど沖つ藻の靡きし君が言待つ我れを

3076: 住吉の敷津の浦のなのりその名は告りてしを逢はなくも怪し

3077: みさご居る荒礒に生ふるなのりそのよし名は告らじ親は知るとも

3078: 波の共靡く玉藻の片思に我が思ふ人の言の繁けく

3079: わたつみの沖つ玉藻の靡き寝む早来ませ君待たば苦しも

3177: 志賀の海人の礒に刈り干すなのりその名は告りてしを何か逢ひかたき

3205: 後れ居て恋ひつつあらずは田子の浦の海人ならましを玉藻刈る刈る

3206: 筑紫道の荒礒の玉藻刈るとかも君が久しく待てど来まさぬ

3266: 春されば花咲ををり秋づけば丹のほにもみつ.......(長歌)

3267: 明日香川瀬々の玉藻のうち靡き心は妹に寄りにけるかも

3336: 鳥が音の聞こゆる海に高山を隔てになして.......(長歌)

3397: 常陸なる浪逆の海の玉藻こそ引けば絶えすれあどか絶えせむ

3562: 荒礒やに生ふる玉藻のうち靡きひとりや寝らむ我を待ちかねて

3606: 玉藻刈る処女を過ぎて夏草の野島が崎に廬りす我れは

3638: これやこの名に負ふ鳴門のうづ潮に玉藻刈るとふ海人娘子ども

3705: 竹敷の玉藻靡かし漕ぎ出なむ君がみ船をいつとか待たむ

3871: 角島の瀬戸のわかめは人の共荒かりしかど我れとは和海藻

3890: 我が背子を安我松原よ見わたせば海人娘子ども玉藻刈る見ゆ

3993: 藤波は咲きて散りにき卯の花は今ぞ盛りと.......(長歌)

3994: 白波の寄せ来る玉藻世の間も継ぎて見に来む清き浜びを

4211: 古にありけるわざのくすばしき事と言ひ継ぐ.......(長歌)

4214: 天地の初めの時ゆうつそみの八十伴の男は.......(長歌)

補足

海藻類の当時の呼び名は次のようなものがありました。
(中公新書 食の万葉集 廣野卓著1998年12月20日発行より)

  • 現在名 : 万葉時代の名
  • あまのり : 無良佐木乃利(むらさきのり)
  • あらめ : 阿良米(あらめ)
  • てんぐさ : 古留毛波(こるもは)
  • ふのり : 布乃利(ふのり)
  • ほんだわら : 莫告藻(なのりそ)
  • みる : 海松(みる)
  • わかめ : 和可米(わかめ)
更新日: 2017年04月02日(日)