第五巻 : 正月立ち春の来らばかくしこそ

平成11年12月12日(日)更新

この歌は、大伴旅人の邸宅で詠んだ梅の歌三十二首の最初の歌です。これらの歌に先立って、序文が漢文で記載されています。


原文: 梅花歌卅二首并序 / 天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以 曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧鳥封□(穀の禾の部分が糸)而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 促膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以□(手偏+慮)情 詩紀落梅之篇古今夫何異矣 宜賦園梅聊成短詠

要旨: 天平二年正月十三日に太宰府の帥(そち)大伴旅人(おおとものたびと)さんの邸宅で宴会をしました。天気がよく、風も和らぎ、は白く色づき、蘭が香っています。嶺には雲がかかって、松には霞がかかったように見え、山には霧がたちこめ、鳥は霧に迷う。庭にはが舞い、空には雁が帰ってゆく。空を屋根にし、地を座敷にしてひざを突き合わせて酒を交わす。楽しさに言葉さえ忘れ、着物をゆるめてくつろぎ、好きなように過ごす。梅を詠んで情のありさまをしるしましょう。


ここからが歌ですよ。

原文: 武都紀多知 波流能吉多良婆 可久斯許曽 烏梅乎乎岐都々 多努之岐乎倍米

作者: 大弐紀卿(だいにきのまえつきみ)

よみ: 正月(むつき)立ち春の来らば、かくしこそを招きつつ、楽しみ終(を)へめ

意味: 正月になってがやってきたら、こうやってを見ながら楽しみましょうよ。

大弐紀卿(ただいにきのまえつきみ): これは名前ではなく、このとき太宰府の大弐(位のひとつです)だった紀氏の人、という意味です。


第五巻