原文

由布左礼婆 安之敝尓佐和伎 安氣久礼婆 於伎尓奈都佐布 可母須良母 都麻等多具比弖 和我尾尓波 之毛奈布里曽等 之路多倍乃 波祢左之可倍弖 宇知波良比 左宿等布毛能乎 由久美都能 可敝良奴其等久 布久可是能 美延奴我其登久 安刀毛奈吉 与能比登尓之弖 和可礼尓之 伊毛我伎世弖思 奈礼其呂母 蘇弖加多思吉弖 比登里可母祢牟

作者

遣新羅使(けんしらぎし)の丹比大夫(たじひのまえつきみ)

よみ

夕されば、葦辺(あしへ)に騒き、明け来れば、沖になづさふ、鴨(かも)すらも、妻とたぐひて、我が尾には、霜(しも)な降りそと、白栲(しろたへ)の 羽さし交(か)へて、うち掃(はら)ひ、さ寝とふものを、行く水の 帰らぬごとく、吹く風の、見えぬがごとく、跡(あと)もなき 世の人にして、別れにし、妹(いも)が着せてし、なれ衣 袖片(そでかた)敷きて、ひとりかも寝む

葦と鴨 撮影() by きょう

意味

夕暮れになると葦辺で騒ぎ、明け方になると沖に漂う鴨(かも)でさえも妻といっしょにそろって、尾には霜(しも)が降らないようにと、白い羽を交わして払って寝るというのに、流れ行く水が帰ってこないように、吹くが見えないように、はかないこの世の人として別れてしまった妻が着せてくれた、着慣れた衣をひとつだけ敷いてひとりぼっちで寝るのです。

補足

この歌の題詞には「古き挽歌(ばんか)一首、并(なら)びに短歌」とあります。

亡くなった奥様のことを悲しんで詠んだ歌です。

更新日: 2013年12月22日(日)