第十八巻 : 大君の遠の朝廷と任きたまふ

2004年08月01日(日)更新


原文: 於保支見能 等保能美可等々 末支太末不 官乃末尓末 美由支布流 古之尓久多利来 安良多末能 等之乃五年 之吉多倍乃 手枕末可受 比毛等可須 末呂宿乎須礼波 移夫勢美等 情奈具左尓 奈泥之故乎 屋戸尓末枳於保之 夏能々 佐由利比伎宇恵天 開花乎 移弖見流其等尓 那泥之古我 曽乃波奈豆末尓 左由理花 由利母安波無等 奈具佐無流 許己呂之奈久波 安末射可流 比奈尓一日毛 安流部久母安礼也

作者: 大伴家持(おおとものやかもち)

よみ: 大君(おほきみ)の、遠(とほ)の朝廷(みかど)と、任(ま)きたまふ、官(つかさ)のまにま、み雪(ゆき)降(ふ)る、越(こし)に下(くだ)り来(き)、あらたまの、年(とし)の五年(いつとせ)、敷栲(しきたへ)の、手枕(たまくら)まかず、紐(ひも)解(と)かず 丸寝(まろね)をすれば、いぶせみと、心なぐさに、なでしこ、宿(やど)に蒔(ま)き生(お)ほし、夏の野(の)の、さ百合(ゆり)引き植(う)ゑて、 咲(さ)く花を、出(い)で見るごとに、なでしこが、その花妻(はなつま)に さ百合花(ゆりばな)、ゆりも逢はむと、慰(なぐさ)むる、心しなくは、天離(あまざか)る、鄙(ひな)に一日(ひとひ)も、あるべくもあれや

意味: 大君(おおきみ)の遠(とお)の朝廷(みかど)に遣(つか)わされた職務(しょくむ)により、雪(ゆき)の降る越(こし)の国に下って来て、5年の間、手枕(てまくら)をすることもなく、紐(ひも)を解いて着替えもせずに寝ると、気持ちが落ち着かないので、気持ちをなぐさめるために庭になでしこを植えて、夏の野の百合(ゆり)を引き植えて、咲く花を見るたびに、なでしこのような妻に後(のち)に逢えると、気をまぎらわすようなことをしないと、とても一日でも、こんな田舎に居られないものですよ。

撮影(2004.07) by きょう

天平感宝(てんぴょうかんぽう)元年(749)、5月26日に詠んだ歌です。

奈良の都に残してきた奥様は、大伴坂上大嬢(おおとものさかのうえのおおいらつめ)です。


第十八巻