そして今…イーリスは私と共にいる…。
 
 
「よかったんですか、あんな別れ方で…?」
「…仕方ないでしょう、あの雰囲気では」
「どちらかが女性であれば…話も違ったでしょうけどね」
 そう、どちらかが女性であれば…夫婦としてこの地で暮らすことも出来ただろう。もっともイーリスが帰化するとの条件がつくが。
 だが、それは仮定の話だし…イーリスは帰化することを拒んだ。だから私は、ここにいる。
「私の姫君…」
 私の愛した姫君の墓。あの方を失ったときに、私は誰も愛さないと決めた。
「お返しします…私はもう、姫君には必要ありませんから」
 ずっと架けていたロケットを墓にかける。中の肖像画はディアーナさまの母…私の姫君。
「もう誰も愛さないという誓い…破ってしまいましたね」
 私の役目は終わったのだ。
 姫君には新たな騎士がいる。
 ダリスは平定された。反乱軍の勝利で。
 ダリスの若き王とディアーナさまの結婚式は新年早々に行われることになった。
 ついでに…と言っては何だけれど、殿下とメイの結婚も決まった。いや、決まりかけているというべきか。
 前代未聞だと、シオンさまが必死に止めようとしているらしい。…あの型破りな方に言われても、誰も納得しないような気がするが…。
 今、王宮では下へ上への大騒ぎだ。
「ロケットが…消える…」
 イーリスが呟く。彼には…見えているのだろうか、光にとけゆく姫君の姿が。
「…美しい女性でしたね」
「…見えていましたか。…姫君の母君です。毎年、上がられるなら今日しかないと思って来ていたのですが…ようやく、心配事がなくなられたのでしょう」
「そのようですね。王女は結婚も決まり、国内の賊も鳴りを潜めた…そして…いや、いいでしょう」
「…イーリス?」
 何か…話しているようにも見えたけれど…?
 けれどイーリスは答えをくれそうにない。しかたない。
 私は持って来た花束を墓の上においた。
「幸せでした。ずっと。…でも、もう…行きます」
 だから、これは最後の手向け…白い薔薇。両手に抱えきれないくらいの。
 私は新しい愛を見つけたから。
「船に…乗りましょうか。新しい国へ行けるように」
「そうですね」
 新しく訪れた船があった。王女自らが親善大使としてやってきたのだ。…ディアーナさまと相当気が合うことだろう。
 その船に乗ろう。
 新しい国、新しい世界へ。
 互いの手を、離さないように…。
END