大学の夏休みの時のことです。その当時籍をおいていたサークルの夏合宿に出掛けたのでした。行き先は関東地方の海に面した町にある我が校の厚生寮。まづ、その寮の玄関に入った途端、ザッーという寒気に襲われました。(私は霊的なものを感じると寒気がするのです。)何かいる! そう直感したのを覚えています。

 この寮には二泊三日の予定で入ったのですが、その間不思議(?)なことが起こりました。男子トイレの天井から吊り下げてある裸電球がきれてしまうのです。三回くらい新しいものと交換してもらったのですが、その都度きれてしまうのです。ですから男子トイレは常に真っ暗!(T_T)

 初日は無事過ぎていきました。翌日、夕飯は屋外でバーベキューにしようということになり、近くのスーパーに買い出しに行った時のことです。若者(我々)が10人くらいで買い物袋を持って歩いているので町の人が珍しがって声をかけてきます。一人のおばさんが、

「あなた達はM大の学生さん?」

「はい。」

「あの厚生寮にいるの?へぇ〜、珍しいわね。あそこ、長いこと
 学生さんが利用してなかったのにねぇ〜。」

と謎の言葉を残しておばさん退場。寮に帰ってからもその話題でモチきりになりました。うすうす、この寮は変だぞということをみんな気づき始めていたのかもしれません。そしてその夜、“事件”が起きたのです。


 若気の至りというか、よせばいいのに『百物語』をやろうと部長が言い出しました。『百物語』とは夏の夜、百本のろうそくに火をつけ怪談を語り合うという不謹慎な遊び(?)です。一つ怪談が終わるごとに一本ろうそくの火を消し、最後の一本の火が消えると魔物が現れるといういいつたえがあります。もちろん、ろうそくは使いませんでしたけど・・・。


八畳くらいの広さの空部屋に男女20人ぐらいで入り込み、始めました。もちろん泊まり客は我々だけでしたので、空部屋は使いたい放題でした。私は障子を背にして座りました。障子の向こう側は廊下になっており、その廊下はあの玄関にまで続いています。障子は穴だらけでした。


一時間程『百物語』を行っていた時でした。先程の宴会で飲んだ酒が効いてきたのか、私をいれて4〜5人以外はみんな眠ってしまいました。(私は酒が飲めないのでシラフでした。)私の対面に座っている部長がとっておきのネタを披露していました。ヤツはこういう話が大好きです。


と、その瞬間、彼の背後から私の方に向かってピンポン玉くらいの大きさの真っ黒い玉が放物線を描きながら飛んできたのです。そして目の前でパッと消えてしまったのです。驚きとものすごい恐怖を感じる私。だけどみんなをパニックに陥れるわけにはいかないので声をグッと飲み込みました。


すると、風もないのに穴だらけの障子がパタパタと音をたて始めました。障子の穴から廊下の方をのぞくと30〜40cmくらいの黒い布のようなものが玄関に向かって飛んで行くのが見えたのです。


頭の中は完全にパニック状態!すぐに『百物語』を止めさせ、みんなをおのおのの部屋に帰しました。部長と数人の部員には正直に話しましたよ。「本物」が来たよと。


我々はヤツ(霊体)を呼び寄せてしまったのです。その後、我々には大した霊障もなかったので本当にラッキーだったと思います。なぜなら(後で分かったことなのですが)黒い色で現れる霊体は邪悪な場合が多いそうだからです。

興味本位で心霊を扱うべきではないという教訓が残りました。



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