都内某所のH図書館での出来事です。私はビルの清掃の仕事をしているのですが、この図書館には月一回床清掃の仕事で赴きます。図書館は4階建てで、地階も1フロアーあります。この図書館の4階がでるのですよ!(ご安心下さい。4階には一般の方は入れません。職員の施設になっていますので・・・。)この現場は通常、夕方5時から夜9時頃までの作業となっています。
 
 その日私は、初めてその現場のワックス塗りの仕事をしていました。機械(ポリッシャー)を使った床清掃をご覧になった方ならご存じかもしれませんが、通常この仕事は4人一組で行います。ポリッシャーを操る者、床にまかれた洗剤を集めて取る者、モップで床を拭く者、乾いた床にワックスを塗る者。ワックス塗りは他の3人の後に続いて行くのですが、基本的に床が乾かないと塗れないため、前の3人に遅れをとることもしばしばです。その日は湿気が多かったせいか床が乾きにくく、前の3人に随分と遅れをとってしまいました。

 日は沈み、外はもう真っ暗です。この図書館は大きな公園の中に位置し、周りには大きな木がたくさん植えられていますので本当に真っ暗なんですよ。この日は、4階を終わらせてから2階のフロアーをやるという予定でした。前の3人はとっくに2階へ行ってしまいました。独りぼっちの私・・・。4人の時は気づかなかったのですが、1人になるとこの4階は、他のフロアと違って大変霊気の強い場所であることが分かってきました。目に見えない無言のプレッシャーを感じながらワックスを塗る私・・・。

 とうとう4階最後の部屋にやって来ました。ここを塗り終われば4階は全部塗り終わります。この部屋は宿直の人が使うのか、奥の方に古いベッドが置いてあるのです。部屋に入るや否や強い霊気を感じましたが、意を決してワックスを塗り始めました。

 奥の方を塗りながらふとベッドの方に目をやった瞬間、ベッドの上に老人のように顔がしわくちゃな赤ん坊が寝ていて、私の方を見ているのです。あまりの驚きと恐怖のため、私はモップを持ったままその部屋から飛び出しました。恐怖感は止まりませんでしたが、5分ほどしてから再びワックスを塗りに戻りました。もうあの赤ん坊はいませんでした。

 仕事が終わった後、この現場にくわしい同僚に尋ねてみました。同僚は「あれ、知らなかったの?」とのこと・・・。同僚の話によると、4階ではよくその手の目撃談を耳にするのだそうです。白い影が窓からバルコニーをへて、外に出た(4階ですよ!)とか・・・。でも赤ん坊は初めてだったそうです。

 この辺は大戦中、東京大空襲で焼け野原になったそうで、たくさんの死体が野ざらし状態だったそうです。




     戻る