[「金縛り」体験その1]
30歳を過ぎたある日、深夜ふと眠りから醒めました。
しかし、変なのです。頭の中は、はっきりと覚醒しているのに
体が動かないのです。目も開きません。声もでません。
(これが噂の「金縛り」というヤツか・・・。)と思いました。
耳を澄ますと、どこからか子供の声が聞こえてきます。それも
複数の子供の声でした。目が開かないので確かなことは言えない
のですが、どうやら寝ている私の丁度頭の上で子供達が
遊んでいるようなのです。
時刻は深夜ですよ。しかもドアには鍵がかかっていましたから
子供はおろか、誰も入れないはずなのに・・・。
その子供達は私の頭の上で輪になって回りながら遊んでいる
ようでした。なぜなら、彼らの声が回りながら私の耳に
入ってきたからなのです。
すると今度は、私の体が軽くなって、浮遊するような感覚に
襲われました。
直感的に、(や、やばい・・・。奴らに連れていかれる・・・。
あっちの世界に連れていかれる・・・。)と思ってしまいました。
もう、恐怖感しかありません。出ない声を振り絞り、動かない体を
無理に動かそうとしました。そうしなければ完全に彼らの世界の
住人になっていたことでしょう。
しかし全然体が動きません。声が出ないので心の中で叫びました。
(てめぇ〜ら、いい加減にしろ!)
次の瞬間、「金縛り」が解けました。子供達も消えました。
目も開き、声も出るようになりました。
何事もなかったように時がゆったりと流れていきました。
深夜、たった一人の部屋・・・。あれは一体何だったのだろう・・・?
あの子供たちは・・・? と思うよりも、今現在、こうしてこの世界で
生きている、存在していることへの喜びで一杯でした。